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2016年6月~12月に見たブルーレイ3D


最近ようやく3D表示のできるテレビを買ったので、夜な夜なブルーレイ3Dを楽しんでいます。
そこで、見たソフトについてその良し悪しを書いていこうと思います。



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まず見てみたのが「肉の蝋人形」。日本盤3DBDが出ています。
これは素晴らしい立体効果ですねーすべての立体映画ファンに強力にお薦めできます。アトリエ内の様子もいいですが、夜の街の通りの閑散とした空間が広がり、奥行きもあります。きっちりとパンフォーカスで撮ってあるからで、カメラマンはちゃんと立体効果がわかっている人ですね。
内容はまあB級ホラーなんですけども(笑)。そんなにチープでもなく、わりとがんばってやってるなという感じがして退屈するというほどではありませんし、あれこれ突っ込み入れたくなるというわけでもありません。
最初にこういうのを見るとブルーレイ3D、はまりますね。



「アイス・エイジ3~ティラノのおとしもの」
これは2009年のCGアニメで、ロードショウで見ました。そのときも立体効果が良かったんで印象に残っていて、再びブルーレイ3Dで見直してみましたがやはり上等です。舞台は氷河期で一面の雪景色。直観的には3Dには向かないんじゃないかという感じがしますけども、実際には大きく広がる空間がヴァーチャルリアリティです。一見の価値ありです。
話はファミリー向けですがわりと面白いですね。主人公のマンモスよりも道化のナマケモノや変人のイタチがケッサクです。ナマケモノのシドは声をジョン・レグイザモがやってますが、この人芸達者なんですねー。


..
「三銃士~王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」
これは劇場に見に行かなかったので3DBD買ってみました。この監督は「バイオハザード」の人で、話はもう荒唐無稽もいいとこなんですけど3Dは本物です。「バイオハザード」シリーズもそうですがコンバーテッド3Dではなく、ちゃんとステレオカメラで撮ってます。立派です。
それでこの映画、立体効果が良くて感心しました。宮殿のセットでのシーンがきちんと奥行きを計算してあって素晴らしいです。
俳優は、四銃士が知らない人たちですけど枢機卿にスペクターの首領をやったクリストフ・ヴァルツ、あくどい公爵にレゴラスのオーランドー・ブルーム、ほかにマッツ・ミケルセンやティル・シュヴァイガーも出ていて、脇役がなかなかいいです。ルパン三世の峰不二子みたいなキャラクターの女泥棒はバイオハザードシリーズのミラ・ジョヴォビッチでしかたないとはいえ、この人ガリガリでいやなんですよね(笑)。



161218
Comin' at Ya! 1981

タイトルやパッケージデザインからするといったいなんの映画なのかいなって感じですが、西部劇です。いわゆるマカロニウェスタンなんですね。イタリア・アメリカ・スペイン合作となっていてこれが1981年です。1981年にマカロニウェスタンまだ作られてたんですねー。
しかし私ときたら西部劇もともと苦手で、アメリカ映画もマカロニウェスタンもほとんど見たことありません。なにしろクリント・イーストウッドのを一本も見たことありませんから(笑)。

それが立体映画として制作されていて、今年三十五周年記念ということでディジタルリストアでブルーレイ3D化されました。つまり根強いファンがいるってことです。パケの絵柄は封切り当時のものなのか、今回の記念エディションに際してのファンによるファンのための礼賛ポスターなのか判然としませんけども、なにかB級映画おたくが内輪でバンザイしているような高揚感は感じ取れます。
もとのフィルム自体が日本未公開です。でもテレビではかかったようで「荒野の復讐」という邦題は付いています。当然ながらブルーレイ3Dも日本盤は出ませんので輸入盤を買いました。

それで見てみたところ、これがマカロニウェスタンの世界なのかと、初めて足を踏み入れた秘境に戸惑うばかりです。とにかく徹頭徹尾、完全にB級映画もB級映画、これこそエド・ウッド以来脈々と受け継がれている映画業界の最底辺を形作っているゴミフィルムです(笑)。
超低予算で中身の薄い脚本、個性のかけらもない主役脇役、ベタな演技とやる気に欠けるスタント、意味の無い演出、派手さを狙いつつもただショボいだけの爆破シーンなどなど。もう初めから終わりまで突っ込みどころだけで構成されているかのようです。

3Dに関していうと、「飛び出さなきゃ立体映画じゃないだろ?」とばかり、これでもかというほどにものを突き出してくるんですよ(笑)。手や銃やナイフやなんでもかんでも、とにかくカメラに向かってありとあらゆるものをグイーンと伸ばしてくるんで目が疲れることこの上ありません。またカメラを床に置いて垂直に真上を向け、上からものを落としてくる撮りかたがいたく気に入ったようで、これも執拗に繰り返されます。
この時代ですからステレオカメラを使った本物の3Dには違いありませんけど、その立体演出はあまりに作為的で手加減というものがありません。かえって、何気なく撮っただけの荒野のシーンなどのほうが立体感があって良かったです(笑)。

3Dだけでなくパートカラーやスローモーションといった特殊効果も採り入れてあるんですけども、これがまた意図不明で混乱してきます。
これは私の推測ですが、時すでに80年代に入って衰退していたマカロニウェスタンのジャンルを、夢よもう一度とばかりいろいろと頑張ってみました…というのがこの映画なのかもしれません。

しかし私としても、こういったゴミ映画を全否定するわけではありません。やはりちゃんと需要のあるジャンルであることはわかりますし、好きな人は好きだろうなということも理解できます。これらの下層カーストがあっての映画業界であり、B級映画があるからこそA級の映画が成り立つわけです。
ただ、好きか嫌いかと聞かれれば、「あまり見る気はせんね」と答えますが(笑)。

この映画でも、もちろんいいところもあります。一番気に入ったのはせりふがほとんどないことです。当然字幕なしですけど、ぜんぜん問題なく見ることができました。英語をしゃべることのできる俳優がいなかったからかもしれませんが、やはり映像を見れば理解できる映画というのはいいですね。
それから略奪される花嫁役が、なんとヴィクトリア・アブリルなんですねーペドロ・アルモドヴァルの映画に出始めるずっと前です。まあ芝居はまだ上手いとは言えないので単に話のタネになるだけですが。主演のガンマンは見たことない人で、クロード・チアリ似のまるでダサいおやじです。

ちなみに「マカロニウェスタン」をウィキペディアで調べてみたら、本場アメリカでは描けないようなタブーに踏み入った西部劇がヨーロッパ産のマカロニウェスタンなんだそうで。なるほど出てくるのは悪漢ばかりで話も救いようの無い泥沼ですから、そういうところが見どころだったんですね。きっとイーストウッドの無頼ものなんかも、アメリカでは作れないような暴力描写満載なのかもしれません。そんなことを知ると、このジャンルもちょっと見てみたい気もしますね。




161211

Wolf Totem 狼圖騰 2015
「神なるオオカミ」

ジャン・ジャック・アノーが中国で撮った立体映画です。舞台は文化大革命時代のモンゴルの大草原で、下放されてきた青年が主人公です。都市の若者には遊牧民の生活を体験させ、代わりに読み書きを教えるということで族長は二人の下放青年を受け入れる…というところから話は始まります。
草原の風景はさすがに壮大で美しく、ホビット庄のロケがもしニュージーランドでできなかったらあとはここしかないだろうなどと思えるほどです。

これはロードショウには行かなかったため、ブルーレイディスクで初めて見ました。福岡では3D上映されたんでしょうか。BD日本盤はまたこれが2Dのみでしか発売されていないので、ドイツ盤のブルーレイ3Dで見ました。やはり日本語字幕は付いてませんから、せりふの確認はレンタルDVDです。
それで3Dの出来はというと、まあーいちおう及第点というところでしょうかね。ちゃんとステレオカメラで撮影してありますし、変換の部分は少ないと思います。ただ正直なところあまり記憶には残りません。草原の広がりはなかなかいいんですけども。

オオカミの生態に肉薄したところがなくて、そういうあたりがわりと中途半端な印象のある映画です。タイトルからすると遊牧民たちが畏怖する侵すべからざる野生オオカミとのスピリチュアルな交信といった感じですね。
たしかに部族は、危険で狡猾な狼の集団を警戒しまた一種の神の使いとしてもあがめているわけですが、一方で巣穴から生まれたばかりのオオカミの子を取り出して生贄にしたりします。それも特に祭祀をするでもなく気軽にホイホイ殺すんですね(笑)。

ストーリーは、下放青年の一人が野生オオカミの神秘さに魅かれて密かに子オオカミを育てようとするというのが柱です。ただこれが見ていてもうひとつ物足りないのが、この若者がそこまでオオカミに入れ込む心情がぜんぜん伝わってこないため、なにかちくはぐな感じが最後まですることです。
実話だそうなんですけども、実際のところは単にもの好きからペットにしてみただけ、といったようなことだったんじゃないかとさえ勘ぐってしまいます。

オオカミの出てくるシーンはけっこう頑張って撮ってあります。アクションもありますから、そこらへんはパペットのクローズアップだったりCGだったり。ライヴ撮影のオオカミも犬にしか見えないんですが、メイキングを見るとどうも全部本物のオオカミだったようです。生まれてすぐから飼育してなつかせてるんですね。映画に出てくるオオカミはハスキー系の犬を使うことが多いという話を聞いていたので、てっきりそのつもりで見てしまい損しました(笑)。






161120

「華麗なるギャツビー」
The Great Gatsby 2013

なんじゃこりゃって感じですが、バズ・ラーマンなんだからしかたありません(笑)。有名なアメリカの小説で、映画も1974年のロバート・レッドフォードとミア・ファーロウのが広く親しまれていますね。
原作を読んでいないので確かなことは言えませんけど、映像化は難しかったんじゃないでしょうか。話自体は単なるメロドラマでとりたててどうというようなストーリーじゃありません。それを第三者的な立場の者がモノローグの形で綴っていく形式の小説で、読めばきっと耽美的でアメリカンドリームとその無常観を感じさせるものなんだろうと想像します。

ただそれが映画になると、もうひとつなんですね。一人称の話はなかなかうまく映画にできないと思いますから、よほど大胆なアレンジが必要じゃないでしょうか。74年版のほうも、昔懐かしいソフトフォーカスの映像は美しいんですが、なにか物足りない感じが残ります。

では今度のラーマン版はというと、とにかくやたらと過剰な装飾を画面いっぱいに展開し、興ざめするほど誇張された1920年代が描かれています。豪華な衣装やアクセサリー・調度類は本物を使っているようで、それはまったく見事なものです。ところがパーティ場面の音楽はハウスやヒップホップだったりしてもうむちゃくちゃです。まあバズ・ラーマンなんだからしょうがないですけども。

しかし映画としてダメなのは、おそらく原作そのままだろうと思われる、語り手の青年のモノローグを多用しすぎている点です。映像の説明をモノローグでさせるのは、そりゃ映画じゃないですよ? さらには文字を画面に映し出すことまでしていて、「映像にはできませんでした」と白状しているようなもんです。
いよいよ謎の人物ギャツビーの登場シーンで、レナード・ディカプリオの笑顔のアップに「生涯そうは見られない極上の笑顔だった」なんてせりふがかぶってくるんだから、ロードショウで見たときはこれは冗談かと思ったほどです。その後の離れでの再会シーンの演出を見ると、冗談というよりはただの悪ふざけだということがわかりました。

さらに困ったことに、ギャツビーの運命の人であるデイジーがまるでつまらないところ。キャリー・マリガンという女優なんですが、ギャツビーがあそこまでして手に入れたかった女性がこの人なん? という感じです。ファニーフェイスはいいとして、上流の気品と浮世離れした白痴的な魅力を併せ持つ感じができるキャスティングはそうとう悩んだことと思われます。ま、結果として失敗だったってことです。
トビー・マグワイアはいいですね。デイジーの夫役のジョエル・エジャートンがマッチョで高慢な人物を演じて迫力があります。この人「エクソーダス・神と王」でラムセス二世をやっていて、これも良かったですね。

さて前置きが長くなりましたが3Dです。変換ではなくステレオ撮影で、これはちゃんと撮ってあります。屋敷の中や裏庭のシーンなどは立体効果があっていいんですけども、残念なことに編集で細かくカット割リされていてテンポが速いために3Dをじっくり楽しめないんですね。あーこの絵いいね…と思ってもパッパッパと切り替わっていくので落ち着かないところは惜しいです。
結局この映画では、3Dも映像のお遊びの一環として採り入れられたということなんだと思います。映像が美しいことには間違いないので、まあほんと、惜しいなあとしか…(笑)。




161113

Dredd 2012
「ジャッジ・ドレッド」

アメリカンコミックスものかというとイギリスのコミック本が原作だそうです。つまりマーヴェルのアヴェンジャーズやDCコミックスのジャスティスリーグとは無関係ってことですね。多くの人が思い出すのが「そういえば昔スタローンがやってたなあ」ということですけども、みなさんそうでしょうし私もですが内容はまったく覚えてません(笑)。

といってわざわざ95年のスタローン版を見直そうとまでは思いませんのでウィキペディアのページであらすじだけ調べてみると、今回の新版とは違うストーリーです。95年のは未来社会の驚愕の司法システムを説明し、主人公がその陰謀に巻き込まれるという筋立てですが、今回のものは観客がすでにコミックスの世界観を知って見に来ているという前提で、ある悪者を退治するヒーロー・ドレッドの活躍を描くわりと単純なアクションものになっています。ただし続編ということではなく、いわゆるリブートものということですね。

私はこれロードショウには行ってないんですよね。どうせ変換3Dだろうと思っていたからですけど、あとで調べてみたらちゃんとステレオカメラで撮影された3D映画でした。そこでブルーレイ3Dを買おうと思ったら日本盤はこれまた2Dのみ。しかたなくアメリカ盤を取り寄せました。
それで今回初めて見たわけですが、3Dのほうはというとぜんぜんダメダメです。監督はわりとヴィジュアルには凝るタイプのようで、スローモーションを多用して超現実的な見せかたをしたり、映像のテクスチュアをディジタル処理によってきらびやかでカラフルな感触にフィニッシュしています。

うまくやれば面白い立体映像になるはずなんですけども、うまくやってないのでダメなんですね(笑)。だいいちカメラマンが立体効果のことをよく理解していません。被写界深度を普通の映画の時と同じように狭くとっているため3D空間が作られてないです。それでもステレオカメラを使っていることは確かなんで、ビル内部の廊下のシーンなどは奥行きがあっていいんですけどね、まあそれだけって感じです。

話もとりたてて面白くできているわけでもないんでいいとこ無しかというと、案外ドレッドのキャラクターは気に入りました。役者はカール・アーバンという人がやっていて、なにか聞いたことある名前だと思ったら「ボーン・スプレマシー」でジェイソン・ボーンを執拗に追ってくるあの手ごわい敵スナイパーです。
見たことある顔、ではないというのも、実はこの「ドレッド」では最後までヘルメットを脱がないんですね。完全に口元だけの芝居に終始しているわけで、イギリス映画だとはいえこれはちょっと意外でした。たしかスタローンは顔出ししていたはずです。

この手のマスクトヒーローものでは、アメリカ映画においてはかならず素顔を明らかにするものなんですね。多くの場合それは変身前の素の状態でまず出てくるわけですし、またコスチュームを着てからもたいていの場合一回はマスクを脱ぐんですよ。ティム・バートンのバットマンもそうでしたしスパイダーマンもそうでした。ロボコップでさえ脱ぎましたからね。
これはおそらく宗教上の理由で、「はい人間です」というところを見せないと観客も落ち着かないということなんだろうと思います。バットマンのマスクの目の部分はほんとは白くないといけないんですが、映画会社からの要請で目が見えるようにくり抜きになってしまったらしいです。

かつて円谷プロがウルトラマンを売り込みに行ったときに、向こうの映画会社から出た質問に「ウルトラマンはこれは服を着ているのか?」というのがあったそうです。つまりあれは人間の姿をした者が銀色の宇宙服を着ているという設定なのかどうか、という意味です。これには当然ながら円谷も「それははっきりしない」としか答えようがなく、その結果商談は上手くいかなかったという、まあ理由はそれだけじゃないでしょうけども。

それはさておきカール・アーバンのドレッドですけど、徹底してハードボイルドで非人間的なまでに冷徹な判事という役柄。口を大きくへの字に曲げて、新米判事を教育するため現場に同伴させるという、リブート作にしてすでにパート2的な展開です(笑)。またこの新米がエスパーのような特殊能力を持っているため助けたり助けられたりというバディムービー的な要素もあったりと、いろいろ工夫はしてあります。
ドレッドを象徴するべきいかついヘルメットがあまりかっこ良くないとか、オートバイがそれに輪をかけてダサいとかいうところは初めは気になるんですがだんだん慣れてくるといい感じになってきます。アーバンは体格はいいとはいえスタローンみたいな絵に描いたようなマッチョなフォルムではなく、ちょっとガニ股なところなどなんとなく好感が持てるのが不思議です(笑)。

ただ致命的なのは3Dだけではなく、悪役の女ボスがまるで迫力が無いためサスペンスが足りないという点なんですね。結局この監督、時間が遅く感じるドラッグを吸ってビルの高層階から落ちていくビジュアルを撮りたかっただけなんじゃないかとさえ思えてくるほどです。





■161023

「ガフールの伝説」
Legend of the Guardians: The Owls of Ga'Hoole 2010

フクロウのCGアニメで、神話の世界での冒険を描いています。話は子ども向けなんですが、ビジュアルは徹底して写実的に作ってあって見ごたえがあります。特に3Dは私好みのクローズアップが多用されてますから、CGであってもかなり楽しめました。ロードショウでも見に行ったんですけども、ブルーレイ3Dで改めて見直しました。

フクロウにはいろんな種類があるんですが、その中でも顔が平らで人っぽいメンフクロウという種類のを主人公にしてあります。二つの目が正面を向いていて顔の真ん中に鼻のように見える隆起があり、顔全体は源氏パイみたいな形をしています。
このフクロウの顔のアップがリアルなんですね。細かい羽毛まで描き込んでありますから、なんだか柔らかくてあったかそうな感じで思わず触りたくなるほどです。野生動物特有の、遠くを見るときに首をパントマイムみたいに少しずらすように動かすしぐさなど、本物ぽく演出してあります。兜もかっこいいです。

3Dにおけるクローズアップは、そのものの質感が文字通り手に取るようにわかるところが面白いんですね。私としては、手の届く範囲くらいである数十センチ程度の距離のクローズアップ3Dならいくらでも見たいという気がします。実際「ガフールの伝説」ではフクロウたちの顔のアップ場面が多いんですね。擬人化した表情もうまくできています。

でもひょっとすると制作コスト削減のための手法なのかも…とも思えますがどうなんでしょうか。漫画を描いていた人から、漫画での顔のアップの多用は手抜きだという話を聞いたことがあります。人がただ話をしているだけの場面だとして、体全体を描くか顔だけ描くかで労力が全然違うらしいんですね。顔のアップにしても、できるだけ接近して目鼻口だけ画面に出し顔の輪郭を省略するのとそうでないのとでは描く時間が違うそうで、そうと知って漫画を読むとたしかにそんなコマ割りだらけですね(笑)。
ただこれはCGですからどの程度それと関係あるかはわかりません。でも顔のアップのときは体全体の動きまで描かなくていいわけだから、手間のカットになっているのは間違いないですね。私としてはそっちのほうがいいです。

さて話のほうは「指輪物語」などとは比べるべくもないスケールです。海のかなたにあるという伝説のフクロウ王国に向けて旅立つ若者(実際は巣立ちしたばかりのヒナ)がヒーローとして認められるまでを描いてあります。筋立てはナチスに見立てた世界征服をたくらむ集団と伝説のガフール王国との戦いで、敵は全滅せずに撤退して終わりますから続編も作れるようにしてありますがそれは無いでしょう(笑)。

監督はザック・スナイダーだったんですね。この人「マン・オブ・スティール」を撮ってます。2007年のギリシア史ものの「300」もこの人で、面白いらしいんで見ようと思っていたところです。続編の「帝国の進撃」は変換3Dなのでこれまで見ることはないでしょうけど。


■161016

「ホビット~竜に奪われた王国」エクステンデッド・エディション
The Hobbit: The Desolation of Smaug 2013
「ホビット~決戦のゆくえ」エクステンデッド・エディション
The Hobbit: The Battle of the Five Armies 2014

三部作の第二話と三話です。特典のメイキングを見て知ったんですが、やはりこの映画はもともとは前後編で製作される予定だったものが、撮影の途中でピーター・ジャクソンの発案から三本に尺を延ばすことになったんだそうです。そのため脚本の手直しから追加撮影のスケジュール調整だの現場はばたばたとあわただしかった様子がうかがえます。

まあしかし結果は良し悪しといいますか、急な変更とはいえそれでもさすがにちゃんと形にしてあり見ごたえはあります。ただ、やっぱり長すぎるんですよね、「ロード・オブ・ザ・リングズ」三部作と比較すると。つまり「ホビット」が水増しで冗長ということではなく、これだったら「ロード~」が短すぎることになる、そのことに対する不満がわいてくるという奇妙な感じです。やっぱり、「ホビット」のほうは前後編にまとめといたほうが落ち着きが良かったんじゃないでしょうか。

そうなるといま一度「ロード・オブ・ザ・リングズ」が「スター・ウォーズ」並みに九部作に構成し直して作られたらいいのになあなどと夢想してしまいますが、それはとても無理でしょうね。今後もよほどのことがないかぎリメイクされることは無いでしょう。著者のトールキンが「指輪物語」出版後に語ったという「この本の欠点は、短すぎること」という言葉に、このストーリーの壮大さが表れています。

さて、良好な立体効果が堪能できた第一部に対し「2」「3」はどうかというと、ちょっと残念な感じがあります。というのも一作目と比べると格段にCGの占める割合が多くなっていて、映像のテクスチュアに作りものぽい印象が強くなってるんですよ。「シン・シティ」みたいに俳優以外は何からなにまでCGというわけではなく、基本的にはセットでの撮影です。しかし背景・遠景などにかなりCGをはめ込んであって、合成の違和感を無くすために全体のトーンをコンピューターで調整してありますから、せっかくの実写の部分もCGみたいに見えてしまってます。

逆に言うとどこからがCGかわからないくらい映像になじんでいて、そういうところもディジタルカメラで撮影した利点のひとつでしょう。いや実際よく作り込まれていて労作と言えます。
でもラストでビルボが故郷に帰還する場面になると、あーやっぱりこれはCGでは出せない立体感だわと再認識できます。一作目に多く見られた、ニュージーランドの広大なロケーションのシーンです。変換3Dの薄っぺらさとは話が違います。

そういうわけで、3Dとしては第一部が圧倒的に素晴らしい出来、二部三部は悪くはないんだけとちょっと不満あり、という感じです。話の展開として第二部からは闇の森に入っていき、続いてエレボール宮殿に潜入という筋立てですから、グリーンバック撮影中心になるのはしかたありません。セットで撮影されたものは当然ながら立体効果はよく出てます。ただちょっと惜しいね、というところ。

映画版ならではの面白さというと、やはり「ロード・オブ・ザ・リングズ」の続編という位置付けから、設定に関連性を持たせてあるところです。最大の売りものはレゴラスの登場で、ちょっと顔見せ程度ではなく中心人物の一人です。原作「ホビットの冒険」には登場しません。この六十年後にレゴラスまた旅に出るんだなあとか、こんなことがあったんでビルボは裂け谷も顔パスなんだなとか。いろいろ思いをはせることができます。
指輪戦争の伏線も随所に描かれているし、ラストシーンのフラッシュバックである冒頭部分は「ロード~」とつながるように仕立ててありますから、「ホビット」三作を見たあとで続けて「ロード~」を見ることができて、それが終わったらまた「ホビット」に戻れるようになっているというのがうまいですね。いや続けては見ませんが(笑)。

私は通常は映画の原作本までは読みませんが、「指輪物語」は読んでみたんですね。映画を見てもさっぱりストーリーがわからなかったのが悔しかったというのが一因です。ところが読んでみたらこれがもうハマってしまって抜け出せなくなりました。続けて「ホビットの冒険」を読み、これが終わったらすぐまた「指輪物語」をもう一度読み始めてましたから、どれほど面白い本であることか。
もし映画は見たけど原作はまだというかたがおられたら、読んでみることを強くお勧めします。単に映画のストーリーをなぞることができるなどというものではなく、物語の世界観をつかむことで映画の面白さが倍増すること請け合います。

ところで今回私が購入したブルーレイディスクはエクステンデッドエディションのそれぞれ五枚組というヴォリュームのセットです。三部作をひとつに箱詰めしたトリロジーボックスもあるんですけど高いんで、できるだけ安上がりにと思ってオークションも見てみたら、輸入盤が出てました。第一部は日本盤を買いましたが第二部と三部はバラバラで、たぶんアメリカ仕様とヨーロッパ仕様のものです。
これがパッケージ表示は日本語付きにはなってないんですが実は入ってるんですね。オークションの説明にそう書いてあるんで届くまで半信半疑でしたけども。なぜか第二部のディスク3(2D本編)のみ日本語字幕なしでした。



■161008

「ホビット~思いがけない冒険」エクステンデッド・エディション
The Hobbit: An Unexpected Journey 2012

「指輪物語」の前日譚にあたる話で、原作本は「ホビットの冒険」のほうが先に出版されています。もともと続きものとして書かれたものではなく…などというような概要はすでに広く知られているところですね。
しかし大作映画「ロード・オブ・ザ・リングズ」が三部作として作られ、いくらその大ヒットをうけて続編の制作規模が大きくなったとはいえ「ホビット」が三部作になったのはちとおおげさです。原作は子ども向けのわりとコンパクトな童話ですからね。
もっとも、あとから制作されたことで「ロード・オブ・ザ・リングズ」との関連付けの演出を随所に挿入するなど、それなりの楽しみもあります。映画会社のほうも監督がわがまま放題やりたいようにやらせるしかなかったって感じなんでしょうね。

さて「ロード~」は三作とも通常の映画でしたが、「ホビット」三作は初めから3Dの企画です。ディジタル3Dカメラシステムの性能も向上して、3D撮影もそれほど大変ではなくなってきていることから採用されたんだと思います。
メイキング映像を見るとピーター・ジャクソンは3Dにはそれほど関心があるわけではなさそうで、おそらく3D演出に関してはスペシャリストに全部任せていただろうと推察します。だから3Dのほうはおまけみたいな感じで今ひとつ…かというとこれが素晴らしい立体映像になってるんですよ。

なんといってもロケ地のニュージーランドの広大な、まさしく大自然と呼ぶにふさわしい風景の中で繰り広げられる冒険の数々。ただステレオカメラで写しただけで、おおっとうなってしまうくらいスペクタクルな映像になってるんですから、この地でのロケーションが決まった段階で3D映画の傑作になるのは決まったも同然だったでしょう。
またビルボ邸の袋小路屋敷のセットも見事で、物語のはじまりのエピソードでは屋敷内の様子がパンフォーカスできっちりと描いてあって臨場感があります。

全体の印象では実写のリアル3D映像が大半を占めています。もちろんCGIもふんだんに使われていますが、それは主に種族によって体のサイズが大きく違うのを表現するための視覚効果で、3D撮影された部分部分をひとつに合成するディジタル加工がされているわけですね。ゴラムとゴブリン、オーク、トロールなどのクリーチャーがCGで描かれたキャラクターで、モーションキャプチュアが使われています。
このモーションキャプチュアもずいぶん進歩したもんですね。ひと昔前のはひどいもので、これで実際の人の動きを取り入れたと言われてもなあ…という感じでしたけど、この映画を見ると違和感はあまり感じられなくなってきてます。

またこの映画では、HFRと略されることが多いようですがハイ・フレーム・レート規格で撮影されているんですね。これは一秒間にこれまでの倍のコマ数の48コマを使うもので、ものすごく滑らかな動画です。ハイスピード撮影とは違って普通の速度で48コマで撮って48コマで映写します。
実はロードショウのときにこの話を知らなくて、実際には私は見てないんですよ。まったく残念至極です。福岡でもキャナルシティのアイマックスシアターでHFRの3Dで上映されてたらしいんですよね。あまりにもリアルな映像で、逆に映画らしさが感じられないほどだそうです。
ブルーレイディスクではHFRを再現することはできませんから、ほんとはもっとすごい画質なんだろうなと想像しながらブルーレイ3Dでがまんするよりありません。

ところでこの映画を見て少々難点だと思えるのは、中心であるドゥワーフたちの扱いかたです。なにかこう、もうひとつ魅力に乏しいんですよね。
キャラクター設定としては、小さい種族だけど勇猛な戦士で流浪の民、彼らがホビットを伴って長い旅をする行きて帰りし物語なわけですが、基本的には愉快な仲間たちで、コメディ要素をふんだんに盛り込んであってほとんど道化の集団です。ひとりその長であるトーリン・オーケンシールドだけは王者の風格を備えた立派な人物として終始描かれています。

分析的な見かたをしてみると、悲運の民族が約束の地を取り戻そうとするシリアスなドラマ仕立てになっているところを、おかしな小人たちが巻き込まれる冒険また冒険のアクションとコメディでうまくバランスをとった料理のしかたになっているのは確かです。
ただ、見終わって気に入ったドゥワーフが誰かいるかというと、いないんですよね。十三人もゾロゾロと出てくるもんだから個々の印象が薄まったのかもしれないし、実際目立った活躍をするのはトーリンだけです。そのトーリンでさえ、演ずるリチャード・アーミテイジはなかなかいい役者だとはいえ、もうひとつヒーローとしての魅力に欠ける。残念ながらヴィーゴ・モーテンセンのアラゴルンには遠く及びません。

ホビットのマーティン・フリーマンはいいですね。原作のイメージからいくと、むしろフロドー役にピッタリのイメージです。ただ「ロード~」の映画の場合は、重荷を背負ったあの恐れおののく表情がキャスティングの決め手になったんでしょう。いっぽう「ホビット」でのビルボーはやはりコメディ要素が強いですから、それぞれの配役で納得はいきます。



160918

「ジョーズ3-D」

日本盤です。「大アマゾンの半魚人」と同時発売で、しかも廉価盤なのは嬉しいですね。パッケージなんて普通のでいいんですからこういう発売のしかたをどしどしやってほしいものです。

さあそれで、発売のしかたはいいんですが肝心の映画のほうはというと、これはもうアハハのハです(笑)。まあでもそれは初めからわかっていることですからねー「ジョーズ」シリーズの三作目になにかを期待するほうが無理ってもので、だから「十三日の金曜日」もそうですが三本目ともなればどんなドジョウ企画にするべえとなって、じゃあ立体映画にでもするかってことで作られるようなわけですね。

今回まったく久しぶりで見た「3」ですが、こんなんだったんですねーデニス・クウェイド出てますよ。ものすごく若いです。スピルバーグの一作目もどんな話だったかよく覚えてませんけど、とにかく衝撃作であったことは確かで、パニックアクション映画のひとつのアイコンとして(あの大口開けたサメのビジュアルは最高ですね)おそらく永久に人々の記憶に残るはずです。しかしそれの続編が出て再生産されだした時点で、もう感覚的には半分コメディです。

でも私としては、ゴミ映画であってもブルーレイ3Dで発売されるのはやはり歓迎すべきところです。とにもかくにもステレオカメラで撮影された本物の立体映画ですから、昨今の変換3Dなどよりもはるかに興をそそるってものです。
初めのタイトルロールのところ、キャスト名などの文字が、こうグイーンとこっちに向かって伸びてくるロゴデザインなんですね。2000年代になってからの3D映画ではまったく見られない昔ふうのロゴタイプですよね。いかにも「飛び出す映画」って感じですけど、実はこの部分が全編を通じて最も立体感の感じられるところだというのがちょっと悲しいです(笑)。

見ていて思わず「うおっ」とうなってしまった、ものすごいオプティカル合成のシーンがいくつかありますし、巨大ザメが水中を泳ぐところでは背びれから気泡が漏れていたりして笑えるポイントは豊富です。しかしラストの母ザメをやっつけるところは、いやいくらなんでもそれは…と自失してしまうほどにあり得ない演出で、おそらく誰も突っ込むことすらできないでしょう(笑)。言われるままに演ずるしかない俳優も大変だなあと思いました。




160911

Le Magasin des Suicides 2012
「スーサイド・ショップ」

アニメーションなんですがセルアニメのような平面の絵です。フルCGアニメと違ってセルアニメ式のものを3D映像化すると、どうしても平らなついたてが何枚も重なっているような、芝居の書き割り的な見えかたになってしまいます。人物のアップの構図などになると、その平面的な感じは顕著になりますね。

私が立体映像好きになるきっかけのひとつとなったのが、ビューマスターという立体写真が楽しめるおもちゃです。欧米では非常に歴史のある商品なんですが、わが国ではトミーが1982年に発売しました。
その時の日本語版はディズニーのソフトが中心で、ディズニーランドなどの実写もあればアニメーションをビューマスター用に立体的にアレンジしたもの、また特別に人形とジオラマで物語を構成したもの等がありました。このジオラマのソフトが最高で、二十歳の私はすっかり夢中になったものです。
いっぽうセルアニメを3D化したソフトはやはり面白くないんですね。キャラクターはどうやったところで平面のままだし、背景もベタが多くて不自然な感じが多いわけです。

私としてはその意識が根に強くあるもんですから、「セルアニメの3D化=ダメダメ」ということに必然的になってきますね。そうなるとこの「スーサイド・ショップ」もやはり見どころに乏しいものに違いありません。
ただしこれ、なんとパトリス・ルコントが監督してるんですよ。ルコントファンの私としては、初のアニメ演出という点もさることながら、やはり初めて手がける3Dということで、どうしても3Dで見ないわけにはいきません。

しかし私はこれロードショウで劇場に見に行ってないんですね。福岡でもかかったとは思うんですが、3Dで上映されたかどうかわかりません。ま、どっちにしても今となってはビデオで見るしかないんですけども、例によって日本盤のブルーレイ3D出てません(笑)。
アマゾンJPでは扱いが無かったので、今回もAmazon.comから取り寄せました。フランス盤ですからリージョンBですが、見ることができるようになるある方法を用いました(笑)。
そもそも日本盤はDVDしか出てません。でも話の内容はやはり字幕で見ないとわかりませんから、レンタルDVDでまず初めに字幕版の鑑賞です。

原作は絵本なのかと思ったら、小説ですね。絵柄は映画のオリジナルのようです。タイトルの通り自殺用品専門店が舞台となっているというだけですでに完全なブラックジョークです。フランスもやはり殺伐とした雰囲気が世相にあるようで、こんな小説が出版されヒットするんですね。
おおぜいいる自殺志願者のために、確実に死ねる道具とその方法を提供して百年続く老舗だとか(笑)。店は夫婦とその子らがやっていて、家族ドラマのスタイルです。一見して「アダムズ・ファミリー」のような一家ですが奥さんは恰幅のいいマダムです。主人はどうしてもあのラウル・ジュリアみたいにきざなイタリア野郎みたいな風貌になっちゃうもんなんですねー。

それで3Dはどうかというと、思っていた以上のものにはなっていました。考えてみたらセルアニメのスタイルではあってももうセルを使ったアニメなどあるはずがありません。すべてタッチパネルで描かれたディジタルグラフィックです。まあそれでも、手描きは手描きですけどね。
つまり、絵は平面に描かれたもののようでいて実際は完全にCGなわけですね。ということは背景などは3DCGのように作り込むこともできるはずです。

実際見てみると、自殺用品店の店内は空間がしっかりと作られていて上出来です。いわゆる「引きの画面」では、街頭にいるおおぜいの人が重なり合って奥行きが出ています。ただこれは、前述のように書き割りのように見えてしまいますね。
しかし実のところ、ステレオカメラで撮影されたリアル3D映像であっても、同じようなシーンを撮ると書き割り状態に見えてるんですよね。立体感ではなく遠近感が出ているだけで、これは5メートル以上くらい離れるとなんでもそのように見えるのが理屈なんですよ。

ただ、やはり絵柄自体が平面キャラクターですから、書き割り感が強調されてしまうのはいたしかたありません。結局、3DCGのような立体感までは感じられず、といってどうしようもないほどチープなものでもない。わりとビミョーな位置にあると言えますが、珍しい例であることは確かです。
こういう平面アニメふうの絵で3D映画になっているものは、劇場映画では欧米ではあまり作られていないというか、私は知りません。2000年代以降の3Dアニメは全てフルCGアニメだと思います。でも日本ではわりと盛んに作られていて、ドラゴンボールやらワンピースやら「あたしン家」やら。私はいずれも見てないんで出来はどうだかわかりません。

この「スーサイド・ショップ」、ブラックユーモアでミュージカル仕立てというところは「ナイトメア・ビフォー・クリスマス」を思い出します。ところが話の結末はなんだか「クリスマスキャロル」みたいな感じでチャンチャンと終わるんで、なーんだというがっかり感が残念です。途中主人が息子にタバコを勧めるところなど、なかなか反社会的で私好みの部分もあるし、最後の最後ではものすごいブラックジョークを一発カマします(笑)。
まあー正直言ってこれを傑作と思う人は少ないでしょうね。ルコントとしては特殊効果としてのCGを使うことはめったに無いでしょうから、ここでちょっとディジタルで遊んでみようというような気になったのかもしれません。







160821


「トランスフォーマーズ~ダーク・オブ・ザ・ムーン」
「トランスフォーマーズ~ロストエイジ」
Transformers: Revenge of the Fallen Big Screen Edition

マイケル・ベイは私の映画の好みとするところの対極にある作家です。国家予算並みの製作費を投入して阿呆なせりふの合間にひたすら破壊の限りを尽くすアクション超大作。まあ需要はあるわけですから、せいぜい儲けてってくださいね…てな感じで、私とは縁の無いものと思ってました。ただしこれがアイマックスカメラで撮影されたとなれば話はちょっと別です。
シリーズ二作目の「リヴェンジ・オブ・ザ・フォールン」からアイマックスカメラが導入されていて、ブルーレイディスクで見るとさすがに高画質で迫力のある映像です。続く「ダークサイドムーン」からは3Dで制作されるようになり、ブルーレイ3Dはやはり見ごたえがあって、不本意ながらおーこりゃいいなどと言いながら見てました(笑)。

実際には通常の35ミリカメラも使われており高画質シーンと混在しています。ただその判別は容易で、映画が進行しながらいわゆる画面サイズがころころ変わるんですよ。ビデオで見た場合、上下に黒い部分のある横長のレターボックスサイズのシーンは35ミリのシネマスコープですが、それがアイマックスカメラで撮影した場面になるとフルサイズに拡張します。これは劇場での上映でも同様です。最近のものでは「ダークナイト」や「バットマンVSスーパーマン」もそうでした。こうなると画面サイズは大きくなるわ画質は高精細度だわでイッキに迫力が上がります(『リヴェンジ』に関しては、BDはアメリカ盤のそれもウォルマート限定の『ビッグスクリーンエディション』じゃないとフル画面では見られないんですけども)。

もっとも、このシリーズの中心となるべきものは本来ロボットであり、これは100%CGですから、私からすると「ロボット邪魔だなー」という感じです(笑)。実際この変形ロボのメカニックが売りものではあるんでしょうけども、デザインは不必要に複雑でグロテスクだし、変形のしかたも早すぎて何がなんだかわけがわかりません。それになにより主人公ロボたちがちっともかっこ良くなくて、キャラクターとしての魅力も乏しいためぜんぜん感情移入できないところが難ありなんですよねー。

話はアヴェンジャーズといっしょで、宇宙ロボット同士のドンパチと人間の利権が絡んだような感じの今様です。基本的にコメディ演出になっていて荒唐無稽なお祭り騒ぎに終始するんですが、ジョン・マルコヴィッチやジョン・タトゥーロ、四作目ではスタンリー・トゥッチにケルシー・グラマーなど、意外な名優が主要キャストとして出てるんですね。これがなかなか見どころのひとつになっているというのはさすがにベイも商売上手です。

さて3Dのほうはどうなっているかというと、三作目「ダークサイド」ではアイマックスカメラは使われていないようで、ジェイムズ・キャメロンのフュージョンディジタルステレオシステムで撮ってあり全編レターボックスサイズです。2D変換の部分も当然ありますが基本的にステレオ撮影で、非常に良好な3D映像を見ることができます。ロボット邪魔ですけども。

最近作の「ロストエイジ」ではいよいよ4Kディジタルのアイマックス3Dカメラが導入されています。これが小型で使い勝手がいいとみえてほぼ全編にわたって使用されてるんですね。ちなみに二作目での2Dアイマックスカメラのシーンは二時間半の上映時間中わずか7分間くらいでした(笑)。
この新型のカメラはすごいですね。ディジタルカメラですけど4K解像度ともなると、見た印象では70ミリフィルムカメラに匹敵するんじゃないかという感じです。これで撮影された3Dは、家庭用の劇映画ソフトとしては現時点における最高水準の立体映像ですね。テキサスの田舎の風景や香港の街頭など、まったく素晴らしいです。

もちろんCGIも多用されているとはいえ、メイキングを見てもこの監督は派手な破壊シーンでもけっこう実際に物を壊しているようで、極力グリーンスクリーンを使わない方針とのことです。そのため車が回転しながら頭上を越えていったり船がこっちに向かって飛んできたりというようなところも、本当にそうやっているのを高精細度のステレオカメラで撮影しているわけですから、抜群の立体効果を発揮しています。香港好きの私としてはその街並みが高画質3Dで映しだされるところがなにより嬉しいですねー。

それぞれの仕様をまとめると次のようになります。
・二作目「リヴェンジ」(2009)
2D映画で、一部にアイマックスフィルムカメラを使用。劇場では画面が上下に拡張して上映されたがブルーレイディスクではレターボックスサイズのまま。ただし北米版に「ビッグスクリーンエディション」あり
・三作目「ダークサイドムーン」(2011)
3D。フュージョンカメラシステム撮影のシネマスコープ
・四作目「ロストエイジ」(2014)
3D。4Kディジタルアイマックスステレオカメラで撮影したシーンが165分中94分あり、画面はBDでも上下に拡張する

時代はやがて8Kのカメラと再生装置に移行していくことになりますが、私の生きている間には実現するでしょうから今から楽しみです。でもトランスフォーマーじゃないほうがいいです(笑)。





160814

龍門飛甲
Flying Swords of Dragon Gate
「ドラゴンゲート~空飛ぶ剣と幻の秘宝」

もう邦題からしてSFなんだかバトルアクションものなんだか、はたまたトレジャーハンティングものなのかとも思えるようで、安物ホンコン映画ぽさが充満してますね。しかも監督が徐克(ツイ・ハーク)で主演がリー・リンチェイとくれば、もうB級路線まっしぐらの活劇なのは決定です。

これ2011年のロードショウでも見たんですが、実はほとんど覚えてません(笑)。CGがかなり稚拙なレベルだったことと蛮族の女の子の三白眼くらいしか印象に残ってなくて、話の筋や3Dの出来は今回のブルーレイディスクで初見と言ってもいいような有様です。それで、このブルーレイディスクもまた日本盤では3D版が出てませんので、しかたなく英語字幕しかない輸入盤をアマゾンで買いました。
特別、徐克のファンというわけではないんですけど、徐が3Dで撮ったというのなら、どれどれどんなふう? とちょっと見てみたくなったわけですね。

ところがブルーレイ3Dで見てみたら、全体にきちんと撮ってあって立体効果は見事と言っていいくらいです。あれーこんなだったかなー? とも思いましたが、劇場に見に行ったときはよっぽど上の空だったんでしょうかねー我ながら(笑)。
おそらく2Dからの変換というのはほとんど無くて基本的にステレオカメラ撮影だと思います。これにさまざまCGを合成してあるんですが、CGに関してはハリウッドのスタジオのものに比べるとがたっと水準が落ちて、もうもろにCGという感じです。でもアクション自体はすべて役者がスタントしており、CGはあくまで視覚効果の範疇ですからいいとしましょう。

映画の宣伝の中でさかんに「中国初のアイマックス映画」とうたわれているんですが、これはアイマックスカメラで撮影されたということではなく、アイマックスシアターでも上映されたということだと思います。メイキングを見てもアイマックスカメラほど巨大なイクイップメントではなさそうですし、実際の映像もそこまでの高画質ではありません。フルスクリーンではなく普通のレターボックスサイズになってます。

私としては今回、字幕なしの中国語のみでブルーレイ3Dを見たわけですけども、実はこの見かたが結果的に意外と良かったんですよ。つまり、話の内容はよくわからないながらも良好な3D映像を楽しみながらばかばかしいアクションを突っ込み入れながら見るという感じで、ポップコーンを手元に置いておくべきでした。
それがなんで良かったのかということですが、やはり話のほうも押さえておこうと思い、後から日本語版をレンタルしてきてざっと見てみたんですね。するとあーあそこはこういうことだったのかとか、なるほどそれであんなリアクションになるわけね…みたいにまあ納得はできるんですけど、ストーリーがわかってみるとこれが面白くないわけですよ(笑)。

字幕なしで見たときは、なんだか悪徳役人とその敵対勢力の軍部かなにかがいて、そこに義賊が正義の鉄槌を加えるという基本的な構図はなんとなくわかるわけですが、これにまたいろんな人物がからんできて同盟したり裏切りがあったりなど、せりふを追っていくことによって余計な雑念が生じてしまうわけですね。
えーそりゃないだろ、というような無理のある筋立てと設定が次々と起こり、後半にもなるともう話はなにがなにやらわけがわからなくなってきますから、それらのことがらを気にしないで3D映像とアクションだけを眺めていたほうがかえって楽しめることもあるもんだなという新たな発見でした。ロードショウで見たときの記憶がなにも残っていないというのも、この辺に原因がありそうです。時代としては「グリーン・デスティニー」の後ですから、よほどのものでないとこれはすごいということにはなりませんからね。

いや実際、ストーリーを抜きにしてみると役者たちはみんな熱演してますし、アクションもけっこう頑張ってるんですよ。演出はやはり京劇の伝統を感じさせるもので、いやもうかぶくかぶく(笑)。武侠アクションものてのはそもそもこんな感じであるべきものでしょう。
また私が気に入ったことのひとつに、おおぜいいる登場人物たちがどれもなかなかいいんですね。幸いにもリー・リンチェイのひとりスーパーヒーローものではなく、むしろ影が薄いくらいだったのが良かったです(笑)。謎の女剣士と流れ者の女手裏剣使いがえらくかっこいいし、悪役のほうも妖術使いの代官やその参謀たちが手ごわくていいですね。他の端役にもいい味出してる人がいます。

とまあなんだかビミョーな感じですが、固いこと言わずに見るぶんには楽しめる映画でした。


160724

「ヒューゴの不思議な発明」

マーティン・スコシージが3Dを手がけたということで、これはもう見る前からハイレベルな3D映像になっていることは決まったも同然でした。あとはそれがどこまで素晴らしいものであるかどうかの問題だったわけですけども、ロードショウで見に行ったときは冒頭からぐぐいと見る者を引き込む映像マジックにいきなり期待が膨らみました。3DはけっこうCGIも多用してあるんですが、1930年代のパリの駅舎という舞台設定からしかたないところでしょう。

しかし、映画が進むうちにだんだん「これスコシージ?」という疑問がわいてくるわけですね。これまでのタッチとまるで違っていて、知らずに見たらおそらくジョゼッペ・トルナトーレの新作だと思ったことでしょう。つまり、あまりにベタなおとぎ話的演出に違和感を覚えるため、ちょっと物語には入っていきにくい感じがしていました。また色彩も少々鮮やか過ぎるほどで、CGIとの同一性をとるために全体の質感をディジタルでフィニッシュしてあるのかなあなどといらぬ雑念がいろいろ脳裏をよぎりつつの鑑賞でした。

今回ブルーレイ3Dで改めて見てみて今さらながらに気がついたんですが、この映画スコシージとして初めて取り組んだ子ども向け映画だったんですね。企画自体がそもそもファミリーユースなんだから、暴力も汚職も出てくるわけがありません。また撮影もこの映画で初めてデジタルカメラを導入したんだとか。これまで監督と同時に編集もしていたスコシージ、あれほど映像にこだわる人がよくこれらの企画を引き受けたものだと思いました。

それは置いておいても、3Dはさすがに素晴らしいです。セントラルステーション構内の大空間、その大時計の裏側の巨大で複雑な歯車機構、そして機械人形(オートマトンと言ってますね)。3Dでの見どころをこれでもかというくらいに盛り込んであります。生真面目な映画史研究家でもあるスコシージですから、3Dに関してもそうとうリサーチしたものと思われます。ディジタル3Dカメラの採用は予算の都合でしょうけども、これがもしアイマックスフィルム3Dカメラだったらいったいどんなスペクタクルになっていたでしょうか。



160717

L'extravagant voyage du jeune et prodigieux T.S. Spivet
The Young and Prodigious T.S. Spivet
天才少年的奇妙旅程
「天才スピヴェット」

これは素晴らしいです。まったくもって文句の付けようの無い3Dで、ゆったりとしたテンポでクローズアップも多用されているところなど、私の望む通りの立体映像が全編で展開されます。
監督は「アメリー」のというか「デリカテッセン」のというか、ジャン・ピエール・ジュネですね。細部までこだわりまくる映像センスが今回もいかんなく発揮されています。まあ話はそれほど面白いわけではないんで(笑)、これはもう3Dを堪能するためだけにあるような映画と言い切ってしまっていいでしょうか?

ジュネの新作が3Dと聞いたときは、これはゼッタイすごいことになっているはずだと確信にも似たような予感がありました。勇んで劇場に見に行ったわけですが(福岡では3D上映無かったんでちょっと遠征しました)、予想は見事的中。物語の舞台がアメリカ西部の牧場から始まる北米横断ロードムーヴィだという点は意表を突かれましたけども。
子役は初めて見ましたが、「マイ・ガール」のときのマコーレイ・カルキンみたいにぼーっとした子どもの感じがよく出てます。

ただ3Dは文句の付けようが無いんですけど、文句言いたいのは日本盤がブルーレイ3D出てないことです。私はいっぺん劇場で見たんでいいですが、そうでなかったら話がわかりませんからねー困ったもんです。調べたらこれも香港盤が出ていて、日本語字幕は入ってないんですけど香港で買ってきました。「コラライン」と違ってパッケージに中文タイトルが付いてます。「天才少年的奇妙旅程」となるんですねーそのまんまです(笑)。

やはりちゃんとステレオ撮影してある映画のブルーレイ3D、素晴らしいですね。少し前までは夢想もしなかったような事態で、これほどの高画質かつ良好な立体映画を自宅で居ながらに見ることができるというのは、驚くべきことです。


これ福岡では2Dしかかかってないんですよ、ひどい話ですよね。それでいちばん近いとこがどこか調べたら、たしか山口でしたかねー。でも九州だと長崎のユナイテッドシネマズで3Dやってて、そういえばカミさんと長崎に遊びに行こうとして用事でお流れになったままだったので、この機会にと長崎旅行も兼ねて行ってきました(笑)。中華街よかったですよ。
でも、たしかに3Dは素晴らしいんですが、3Dで見ないと意味が無いというわけではないと思います。あの永久機関は3Dでなければどうなってるのかわからないとか、あれがドミニク・ピノンだということが3Dではじめて分かるとかそういったことはなくて、2Dでも充分楽しめますよ。でも映画自体がお好きだということならば、3Dで見たら満足度倍増でしょう。
そういう意味では3Dである必然性のある映画なんてほとんど無いですよね。私の見た範囲では、3Dでないとその真価がわからない映画は「ザ・ウォーク」だけです。



「バイオハザードIV・アフターライフ」
「バイオハザードV・リトリビューション」

ビデオゲームの人気作を映画化したシリーズの四本目五本目です。ゲームに関心ないんで三作目までは見ませんでしたけど、「IV」が3Dだったんでロードショウで見ました。2010年のことで、すでに変換3Dが全盛でしたから全編変換の3D映画は見てませんでしたが、これはステレオカメラ撮影だというんで行ったんですね。もう完全にB級SFアクションでしかも主演がミラ・ジョヴォヴィッチですから気は進みませんでしたけども(笑)。
それで案の定あまりの話のでたらめさについていけず、肝心の3Dのほうにはあまり集中してなかったんですね。まあ、見ていてどうでもよくなってきたってやつです。二年後の「V」のときも同様でした。

時は流れこれらを自宅で見ることができるようになった今、ブルーレイ3Dで再確認してみました。見た順で行くと「IV」「三銃士」「V」で、「IV」はやはり3D今ひとつかなあという印象で変換のシーンが多かったように思いました。ところがその次に見た同じ監督の「三銃士」が見事な3Dになっていたんで、アレッおかしいなー? と。そう思いますよねやっぱ。
で、次の「V」ですが、これは良かったです。相変わらず話はムチャクチャですけど、3Dは非常にこなれていて立体映像を見るためだけにこの「V」見ても存分に楽しめます。

そうくるとやはり「IV」の不充分さが納得いきません。そこでもういっぺんザッと見返してみると、やはり監督としても初めて取り組む3D撮影で、慣れないところがいろいろ結果として映像に出てしまってるようだという感じです。2010年ころのハリウッドで3D撮影の実際についてよく知っている人となるとジェイムズ・キャメロンくらいしかいなかったでしょう。
しかしポール・W・S・アンダーソンって監督はB級映画専門ながら真面目な人のようで、「IV」での経験を次作・次々作でちゃんと生かしてるんですね。それできちんと成果を出しているところ、見習いたいものです。




160710

Creature from the Black Lagoon
「大アマゾンの半魚人」
1954年の怪物アクションホラーで、当時は赤青式で上映されたそうです。六十周年記念でディジタルリストアされ、めでたくブルーレイ3Dとして出ました。クラシック3D映画のブルーレイディスク化はアメリカでもそれほど進んでおらず、多分二十枚も無いんじゃないでしょうか。それだけに、BD化されるのは比較的出来のいい映画が多いと思われるので、可能な限り入手してみたいものです。
それでこの半魚人ものですけど、日本盤は出てることは出てるんですがモンスター映画の八枚組ボックスやらスチールブック仕様やらで、どちらもとんでもない高額です。さすがにそこまでして手に入れようとまでは思いませんので、字幕なしでいいからとアメリカ盤を買いました。1700円くらいでわりと安かったんですよ。ところがこれが8月に日本盤の通常ケース入りが出ることになってガッカリ(笑)。もうちょっと待っとけばよかったとはいえ後の祭りです。廉価盤とはいえ買い直そうとまではちょっと。まあ、せりふの意味はほとんどわかりませんでしたが3Dはわりとよくできてましたから満足してます。
撮影がなかなかすごいです。この時代、3Dの水中カメラなどあったのかとも思えるんですが、あったんですねー。メイキングが特典で付いていて、撮影風景を見ると洗濯機くらいもある巨大な水中ステレオカメラをダイバーが二人がかりで保持しています。つまり役者もほんとに潜水で泳いでいて、しかもかなり激しいアクションが繰り広げられるんですねーすごいです。実際に水中カメラで3Dを撮ろうなんて今ではジャイムズ・キャメロンくらいしかやらないでしょうから、その点だけでも値打ちのある見どころです。モノクロ映像が美しいですね。
半魚人のスーツとマスクも半端じゃなくすごい造形で、金魚みたいに口をパクパクさせると喉が膨らんでエラが広がるんですよ。アメリカ映画のクリーチャーが生物学的なリアルさを追求する感覚はすでにこのころからあったんですね。でも私としては明らかにこれをパクったに違いないラゴンのほうが好きですけども(笑)。


Kiss Me Kate
「キス・ミー・ケイト」
やはりクラシック映画で1953年のミュージカルものです。このころが最初の立体映画ブームで、おそらくテレビの普及によって劇場映画の興行に陰りが出てきたんでしょう、大手スタジオは新機軸として3D映画を売りだすわけです。ということは当時たくさん作られた立体映画はなにもB級ホラーやアクションものばかりではなく、かなり幅広いジャンルの映画で3Dが作られています。今の3D映画製作状況と同じような感じです。
それでこのミュージカル、コール・ポーターの作でそれの映画化なんですね。シェイクスピアの「じゃじゃ馬ならし」が上演されている劇場を舞台として、その裏側で出演者たちがなんやかやとやらかすドタバタコメディです。私はミュージカルぜんぜん興味ないんで主演のハワード・キールやキャスリン・グレイソン、アン・ミラーらの名は知りませんでした。しかし映画を見ると歌とダンスは一流で、特にアン・ミラーは素人目にもかなり踊れる人だとわかりますし、他の出演者たちのダンスもすごいです。劇団のバックアップダンサーのひとりとしてボブ・フォッシーも出てます。
当然ながらこの3Dブルーレイディスクも日本盤は発売されておらず、アメリカ盤を買いました。これはよもや日本盤は出んでしょう(笑)。でも字幕付きで見たかったですね。コメディですからせりふがわからないと魅力半減です。通常版ならレンタルDVDでも見ることはできますけど、さすがに見直そうというまではありません。
それでも話を見当つけると、オペラの主演の二人は元恋人で、男はこのチャンスによりを戻せるかもと期待しますが女のほうはいやいや出演受託。そこに魅惑的な助演女優が出てきて男は二股かけようと舞台裏で画策…といった感じですかね。
なんといっても本物のテクニカラーですから、ディジタルリストアされたフィルムは色彩が素晴らしいです。立体効果のほどはというと、多少不満もあり70点くらいでしょうか。上演中の劇場内、ステージなど3Dの被写体としては興味ぶかいものですけども、惜しいかな奥行きが今一歩出し切れてなくて残念賞ですね。3Dはカメラのオペレーションだけでなく、被写界深度を得るために強い照明が必要ですから、今のような高感度機材が無い時代は大変だったんですよ。




「ダイアルMを廻せ」
実は真っ先に買った3DBDがこれです。映画好きで知らぬ者とて無いヒッチコックの名作ですね。子どものころ日曜洋画劇場で見ましたし、ホームビデオ時代になってからもソフトが出ましたが、やはり3Dで見る機会はありませんでした。それで今回ようやく見ることができた…かというと実はそうではなく、三十年くらい前にビデオで初めて見てその立体効果の素晴らしさに感嘆した経験があります。とこう書くと「…? ビデオで見た? 3Dを?」と疑問に思うかたもおられるかもしれません。はい、あったんですよ3Dビデオが。
ビクターがパイオニアのレイザーディスクに対抗して開発したVHDというビデオディスク規格がありました。この光ディスクはLDのように裸の状態ではなくB4くらいの大きさのカートリッジに入っていて、これをプレイヤーにガシャンと挿入するとローディングします。ミニディスクやMOみたいな感じですね。結局普及することなく消滅してしまいましたけど、特長のひとつに3D再生機能があったんですね。
幸運なことに当時仕事でVHDのプロモーションに関わったことがあります。そのとき仕事の話が終わった後でビクターの人に無理やり頼んで、サンプルの3Dディスクとプレイヤー、3Dアダプター、メガネ一式を個人的に貸し出してもらうことに成功しました(笑)。ビクターがハードの普及のためにいろいろ発売したVHDソフトのうち3Dものは十枚くらいあったと思います。私が借りることができたのは「ジョーズ3D」「十三日の金曜日パート3D」「エマニエル4」、日中合作映画の「侠女十三妹」、アニメの「Starchaser」、西部劇「Comin' at Ya」、SFアクション「Metalstorm」、そしてこの「ダイアルMを廻せ」があったんですよ。これは記憶を頼りに書いているわけではなく、そのときVHSテープにダビングしておいたものを保存してたんですね。今棚の奥にあるのを確認しました。なんと「肉の蝋人形」もありました(笑)。「ダイアルM」以外のものはほとんど記憶に留めていなかったんですね。ちなみにVHDの画質ですが、当時の印象は「レイザーディスクより劣るがVHSよりはずっと良い」というものでした。
さて前置きが長くなりましたが、ようやく三十余年の時を経て改める「ダイアルM」3D版です。ところがこれが皮肉なことに、思っていたほどのものではなくてちょっと拍子抜けしているところなんですね。ここまで話を盛り上げといてそうくるかよ、という玉城くんのつぶやきが聞こえてきそうですけども、世の中そういうものですよ?(笑)
どういうことか考えてみました。今回久しぶりで見てみると、背景の部屋の壁や手前に置かれた花瓶などのオブジェが意外とピンボケなんですね。つまりシャープなパンフォーカスになってない。そのため映画のほとんどを占めるアパート内のできごと、その室内空間が、ブルーレイディスクの高画質で見るとちょっとぼんやりしてるんですよ。VHDと20インチくらいのモニターで見たときはそこまでわからず、充分な3D空間が演出されているように感じ取ったんでしょう。私が最初にこのVHD3Dを見たとき、室内シーンばかりというおよそ3Dには向かないと思われるような題材で取り組んだヒッチコックの意図がわかった気がしました。そのころの立体映画というと「飛び出す映像」という認識が普通でしたから、その逆に奥行きを感じさせるシチュエーションとしてアパートの室内というのは、コロンブスの卵的な発想だなと感心したものです。
それと逆の現象が「肉の蝋人形」で起きたようです。当時VHDで見た(はずの)この映画、ほとんど記憶に残っていないというのは、小さいモニターではきちんと3D撮影してあることがよくわからず、単なるB級ホラーとしか思えなかったんじゃないでしょうか。6月30日のレビューで私は、それほどチープでもないし突っ込みどころも無いというように書いてますけど、まあそれは長い間にいろいろ見てきたわけで、経験値からものの尺度も変わってきますので。当時は私も二十ちょっとのペーペーですから、細かいことにも我慢できなかったわけです(笑)。




160703

Coraline
「コララインとボタンの魔女」
CGアニメだと思われているかたもいるかもしれませんが、ストップモーションの人形アニメです。他ならぬ「ナイトメア・ビフォー・クリスマス」のヘンリー・セリック監督作ですね。「ナイトメア~」の3D版は後から変換したニセ3Dですけど、こちらは3D撮影してあります。ステレオカメラではなく二回撮りだそうです(これはわかる人にしかわからないでしょうけど、説明省略します)。
なにしろ実写ですし、ジオラマのセットの中で人形を動かしていくわけですからさぞかし立体効果も出ているだろうと、クローズアップの3Dを最も好む私としては期待してロードショウに行きました。でも思ったほどの立体感ではなく、人形アニメ自体も今ひとつ乗れなかったんですね。どうしてだろうと考えてみると、撮影がパンフォーカスになってなくて3D空間が作りだせていないということ、それからアニメーションのほうも「ナイトメア~」からさらに進化したものすごい緻密さで、これが逆にすごすぎて面白みに欠けるという現象があったように思います。多少ぎこちなさも残るような手作り感が無いと、ストップモーションアニメなんだかCGアニメなんだかわからなくなってなんだかつまらない、という奇妙な感覚になることがこれを見てわかりました。結局「ナイトメア~」くらいのすごさがいちばん良かったんですね。
さて、六年ぶりでブルーレイディスクで見直してみようかいと調べてみたら、日本盤の3DBD出てました。ところがこれがなんと、赤青式のアナグリフィック3Dなんですよ信じられますか? DVDじゃなくてブルーレイですよ? パッケージに赤青メガネが何個か封入されているというもので、冗談じゃないと今度は海外版を見てみたら、こちらはちゃんと「ブルーレイ3D」で出てました。このときちょうど香港旅行を計画していて、香港盤を買うことにしました。香港はDVDだとヨーロッパのリージョンなんですが、なぜかブルーレイディスクは日米香のリージョンAなんですねーいいですね。というわけで無事HMVで買ってきました。PAL/NTSCの別はブルーレイでは無くなりました。残念なことに日本語字幕は入ってません。
それで見直してみて、今回も前述のとおりの感想でした。やはり2Dでの上映もあるわけですから、3Dに特化した映像にまとめるわけにもいかないんでしょう。立体効果を考えるより、ストップモーション自体が大変な作業ですから3Dは二の次になっていたように思えます。


160702

A Woman, a Gun and a Noodleshop
「女と銃と荒野の麺屋」
ダメなのも書いておきましょう。買ってはいけないってやつです。
これは張芸謀(チャン・イーモウ)の2009年の映画で、コーエン兄弟の「ブラッド・シンプル」を二、三百年前くらいの中国を舞台に翻案したものです。張芸謀は「紅いコーリャン」以来のファンなのでずっと見に行っていて、2006年の「王妃の紋章」まではロードショウで見てました。しかしその次作からはとうとう劇場行きは途絶えてしまって、そのうちDVDで見ようと思ってたんですね。
その後このフィルムが3D版も作られていたことを知り、それならと3Dブルーレイを探したところ案の定日本盤は2Dのみ。じゃ海外版はどうかと調べてみたら、ドイツ盤で3DBD出てました。アマゾンJPには無くて久しぶりにAmazon.comで購入。マーケットプレイスでヨーロッパの業者が出品していて、値段は手ごろなんですがなにしろ送料が高くついて合計五千円くらいになってしまいました。問題は商品説明のところにリージョンBだと書いてあることです。ドイツ盤ですから当然ヨーロッパエリアのリージョンになっているわけで、自宅のプレイヤーにかけても再生できないはずです。まあーそれでもなんとかなるだろ…と取り寄せてみました。果たして届いた3Dブルーレイ。2D/3D同時収録ではなくまったく3Dヴァージョンのみの一層ディスクですから、再生できなかったらただのゴミです(笑)。ところがこれが、かけてみたら普通に再生できました。どうなってるんでしょうかリージョンB。
とまあここまでは幸運だったわけですけど、そこからがアハハのハでした。あらかじめ日本語版のレンタルDVDで一回見ましたからせりふはもうわかりました。だいたい全体にせりふは少なくしてあってそれは結構なことです。ところが肝心の3Dがもうこれ以上ひどい変換は今となってはやろうと思ってもできんだろうというくらいのレベルで、冗談抜きで学生アルバイトかなにかに一晩徹夜で変換作業させただけなんじゃないのかと思えるほどです。いやもう逆にレアアイテムとして保存しときたいくらいです(笑)。
全編デジタルカメラ撮影で、だいたいかなりの低予算映画ですね。大胆な構図と鮮やかな色彩の張芸謀の持ち味は、この規模でも充分発揮されています。殺しを請け負った役人が怖い芝居をしていて、この人なにか見たことあるかなー? と思って調べてみたら「初恋のきた道」で父の死を知って都会から帰郷する息子役の人でした。


Argento's Dracula 3-D
「ダリオ・アルジェントのドラキュラ」
また怪奇ものですいません。しかしだいたい立体映画ってのはこの手のB級映画が多いものだったんですけどね。
さてこの映画ですが、イタリアンホラーの巨匠として名高いダリオ・アルジェントーです。私はてっきり70年代ころのフィルムだとばかり思って、それだったら出来はともかくステレオカメラで撮影されているのには違いなかろうとあまり調べずに購入しました。そしたらこれ2012年の最新作で、うわーそれじゃデジタル撮影の変換3Dかよーとちょっといやな予感がしました。
ところがなんとなんと、実際に見てみたらこれが徹底して立体効果に主眼を据えた映像で、部分的にCGは使われてますがほぼ全編パンフォーカスの3Dカメラ撮影でした。果てしなく広がる夜の林やドラキュラ城内の部屋の奥行きなど、素晴らしい立体映像を堪能しました。
映画の内容のほうはというと、まあ普通ですけどね…(笑)。ドラキュラ役の俳優はドラキュラ映画史上最も地味な配役かと思われるほどですし、ヴァン・ヘルシングはルトガー・ハウアーですけどもうだいぶ歳で。脚本演出はいたって順当なドラキュラ物語になってますし、ちょっと目を引くのは吸血鬼が変身するのがコウモリやオオカミだけじゃないところくらいでしょうか。でも充分楽しめますよ。
この映画は3Dで見ないとだめだと言いたいところですが、実は日本盤BDは3D版が出てません。私が買ったのはアメリカ盤で(でもアマゾンJPで買えます)、日本語字幕なしです。そりゃできれば字幕があったほうが良かったんですけども、目的が3Dですからしかたありません。幸いストーリーはよく知っているわけですから、まあなんとか。それにしても字幕無しの洋画を見るなんて三十何年ぶりでしょうか。たしか「ピンク・フラミンゴー」の日本語版が出る前に輸入ビデオで見たとき以来のはずです。

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