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2016年6月~12月に聞いた/買ったレコード・CD










20170101

【先月買ったレコード・CD】

■Van Morrison Keep Me Singing 2016

ニューアルバムがもう出ました。前の「Duets: Re-working the Catalogue」が2015年で、すぐその翌年に発売というのはまた早いですね。もっとも前作は過去の自作曲を多数のゲストとデュエットするという企画ものでしたから、新曲による録音盤ということでは2012年の「Born to Sing: No Plan B」以来です。それでも好調であることには違いありませんから、ひとつその流れで初来日というわけにはいかないものでしょうか?

それで今回、出てすぐ買ったというのもわけがあります。LPのほうが特殊ジャケットの限定盤が出ていてプレス枚数が少ないというので、無くならないうちに手を打ちました。といっても初動が遅れてすでに品薄状態。結局モリソンのオフィシャルネットストアには在庫がありましたので、送料はかなり高くつきましたけど手に入って良かったです。オフィシャルサイトに残っていることは吉見くんに教えてもらいました。吉見くんどうもありがとう!

ジャケットのイラストと同じ絵のレンチキュラーシートが付いています。レンチキュラーというのは、めがね無しで立体写真を鑑賞することのできる方式で古くからありますね。観光地の絵葉書などで見かけるあれで、角度によって違う絵が見えるようにすることもできる技術です。
今回の3Dアートはイラストや文字、装飾柄が立体的にアレンジしてあります。ヒバリの絵は線画ですけど、わりとがんばって丸みを出してありました。ローリング・ストーンズの「サタニック・マジェスティーズ」のようにジャケットに張り付けてあるのかと思ったら違って、通常タイプのLPにレンチキュラーシートが添えてあるだけですから、シートはレコードと一緒にジャケットにしまっておいたほうがよさそうです。

■周杰倫 跨時代 2010

先月、二回目の台湾旅行にちょっと行ってきました。台北市のみ二泊三日ですが、えらく安いパックツアーが出てたんですね。三年前に初めて行って、なかなか面白かったんでまた行ってみるかと。今度も良かったです。やはり二回目のほうが楽しめますね。台湾の人たちほんと親切なんですよ。

それでまたなにか記念にCDでも買って帰ろうと、大手書店の誠品に行ってきました。前回、なにを買おうか事前にリサーチしたところ、周杰倫(ジェイ・チョウ)というのが人気実力とも備えたトップスターらしいということで、2004年作「七里香」を選びました。「ミュージックマガジン」のその年のベストテンに入ったアルバムです。
聞いてみたらとても良くてすっかり気に入ってしまいました。中国語によるブラックコンテンポラリーでサウンドプロダクションも一流です。この人俳優としても活動していて、「グリーン・ホーネット」でケイトーをやってましたし、日本の暴走族まんがを香港が映画化したときは主演でした。

パッケージはDVDケースサイズの大判でスリップケース入りという特殊仕様なんですがこれがスタンダードエディションのようです。デラックス版となるとレンチキュラー3D写真のカバーアートで、これはもう店頭にありませんでした。特典DVD付きの二枚組です。

■Rolling Stones Sticky Fingers Super Deluxe Edition 2015

2010年に出した「Exile on Main St.」のデラックスリイシューのだいぶ後になって「スティッキー・フィンガーズ」が出ました。「メインストリート」のときは、スーパーデラックスエディションは買わずにCD二枚組のデラックスエディションで済ませてましたけど、今度はスーパーデラックス版でないと聞くことのできないボーナスCDがありますからしかたありません。

前回と違ってLPは入ってないのが良かったです。でも分厚い写真集やらポスターやらどうでもいいようなおまけのオンパレードで一万円近く取られるんだからほんとトホホですよ…。しばらくすれば中古の安いのが出てくるだろうと様子見てたんですがなかなか相場が落ちないので、送料込み9850円で手を打ちました。

■Todd Rundgren & Utopia Live at the Old Waldorf 1978 2015

どういうわけかアマゾンではアダルトコンテンツ扱いになっているこのCDですが(笑)。トッド・ラングレン&ユートピア名義の78年の発掘音源で、当時出た二枚組ライヴ「Back to the Bars」と同じツアーでの録音だそうです。
チェリーレッドの「The Todd Rundgren Archive Series」のひとつでCD二枚組です。ディランの「The Bootleg Series」と違いラングレンの発掘音源CDはいろんなところから出ていてわかりにくいんですよね。

■斉藤哲夫 君は英雄なんかじゃない 1972

斉藤哲夫は「日本ロック&フォーク・アルバム大全」(音楽之友社)では「グッドタイム・ミュージック」(1974)を採りあげてあって、この一枚だけ買ってました。しかし72年のファーストもどうもいいらしいということで、今ちょうど1972年ものに取り組んでいるところなのでこの際聞いてみることにしました。
とにかく安あがりな買いかたでいいやと、SMSの再発盤で少しジャケットのコンディションの落ちるものをオークションで送料込み600円でした。

■矢沢永吉 E' 1984

矢沢永吉はそれほど好きなシンガーというわけではありませんけど、なにせビッグな人ですから少しは聞いておこうということで、ソニー時代のものは何枚か安く買ってました。ワーナー移籍後のものはどうもぱっとしない感じがしていたわけですけど、どうやらいいものもあるらしいというので「P.M. 9」とこの「E'」を聞いてみることにしました。

「P.M. 9」(1982)はついで買いで350円でしたが、「E'」のほうはオークションでもあまり出てないんですね。当時それほど売れなかったんでしょう。サウンドは打ち込み系らしくて、それでは矢沢教の信者もさすがに付いていけなかったのかもしれません。
そこでちょっと本腰を入れて探してみると、ちらほら出品があるにはあります。まあしゃあないという感じで千円で落札です。

このアルバム、アウターカバーが色違いで三種類出てるんですね。赤と紺、エメラルドグリーンです。グリーンはぜんぜん良くない色で、ほんとは紺色のが良かったんですけども出品されるのはどれも赤ばかり。まあしゃあないって感じですか。Eの文字が切り抜いてあって下のジャケット写真が見えるようにデザインしてあります。




161225

【今月聞いたレコード・CD】

■Keith Richards Crosseyed Heart 2015

聞くの忘れてました。ソロアルバムとしてはライヴも入れると四枚目で、前作「Main Offender」から数えると実に二十三年ぶりの新作です。しかしパッと聞くと過去のアルバムとまったく変わらない印象のサウンドですね。
初ソロで大好評だった「Talk Is Cheap」が1988年。「Dirty Work」を出した後です。このころのリチャーズはジャンキー時代を引きずったアブナい男という雰囲気をまだ少し持っていたように思いますけども、初ソロアルバムの上出来ぶりからか、リチャーズ=いい奴、というイメージに輿論は次第に転換していったように感じます(笑)。対して完全売れ筋サウンドのソロを出したミック・ジャガー=抜け目のない商売人、という対立軸が出来あがっていったような。

今回の新作もやはりスティーヴ・ジョーダンとワディ・ワクテルが参加していて、エクスペンシヴ・ワイノーズで作ったといっていいでしょう。同じサウンドで当然ってとこです。そこもまたこちらが期待した通りであって、今さら新境地を開拓などしなくてもいいわけですからこれで充分です。
軽快なロックンロールありレゲエあり、ミドルテンポの佳曲もあればもちろんしっとり聞かせるバラードもありで、内容は文句の付けようがありません。一曲ノラー・ジョーンズとのデュエットも。

全十五曲は昔なら二枚組ですね。十三曲目のトラディショナルの「Goodnight Irene」でいったんアルバムは終わり、少しの間をおいてあと二曲がボーナストラックというような感じでとって付けたように入ってます。日本盤と、アメリカではベストバイチェーンのみの限定盤でもう一曲「Love Overdue」のリー・ペリーとの共演ヴァージョンが聞けます。ダブになっているかとちょっと期待しましたけどわりと普通でした(笑)。

■Lou Reed's Metal Machine Trio The Creation of the Universe 2008

タイトルを見ただけで恐れをなして通り過ぎたファンも多いんじゃないでしょうか(笑)。一体これはかの「Metal Machine Music」(1975)のライヴ版なのか? そうだとすれば、よほどのノイズミュージックマニアにしか聞けないもののはずです。おりしも2008年には、名作「Berlin」(1973)のライヴ再演版を出したばかりです。

そうはいってもリードの新録音とあれば聞かないわけにはいきません。この後メタリカと共演したラストアルバム「Lulu」(2011)のほうを先に聞いたので、私にとっては最後のルー・リードがこれです。
しかしそれにしても、タイトルをよく見ると「Metal Machine Music Live」というわけではありません。メタル・マシーン・トリオとは? ほかの二人の名前を見ても聞いたことのない人たちで、どうも前衛音楽家のようです。

恐る恐る聞いてみると、75年のアルバムを再現したものではありませんでした。静かに始まる演奏はノイズには違いないんですが耳障りというほどではなく、あるいは人によっては朝のBGMに流してもいいんじゃないかと思えるほどです(笑)。ホールに響き渡るサックスと正体不明のキーボード音の彼方で、リードのフィードバックギターが不気味にうなり続けるというような感じです。
CD二枚組で、CD1・CD2ではなくNight 1・Night 2と表示してありますから二日間行われたイベントのようです。

なんというか忌み嫌うほどの不愉快な音では決してなく、かといって心地よいわけでもありませんから積極的に聞きたくなることは無いと思います。通しで二回聞きましたけど、たぶんもう棚から出すことはないでしょう(笑)。
誰かあまり付き合いたくないような感じの人が自宅に訪ねてきたときに、「これがいいんだよねー」とかいってかけたりするといいかもしれません。

■Neil Young Storytone 2014

どんどん新作を出してくるんで、このあとにもう二枚も新録音が出てしまいました(アーカイヴシリーズもまだぜんぜん聞いてないのに!)。また聞く順番間違えないようにとようやく棚から引っぱり出してきました。
このアルバム、スタンダードエディションは十曲入りの一枚ものですが、デラックスエディションは二枚組です。しかしよくあるおまけ曲を集めたようなものではなくて、同じ曲目が違うヴァージョンで入っており聞き比べることができるようになっているんですね。

標準仕様のアルバムはオーケストラやビッグバンドが付いたリッチなサウンドです。ストリングスの一曲目などは「Harvest」を思い出させるし、ビッグバンドのは「This Note's for You」の感じですね。
いっぽうボーナスディスクのほうはソロの弾き語りスタイルになっていてシンプルです。しかしアルバムのためのデモ録音というようなわけではなく、ちゃんとしたソロレコーディングです。

ちょっとよくわからないのは、デラックスエディションではこの「Solo Storytone」と題されたほうがCD1で、正編であるはずの「Storytone」のほうがCD2となっている点です。
まるで、商業的な判断でポップな伴奏付きバージョンのほうをスタンダードエディションにしたけど、ほんとはソロのほうを出したかったんだよ~んと言っているかのようです。

それで、やはりソロ版のほうが味わい深い…と言いたいところなんですけども、だんぜんオーケストラ/ビッグバンド版のほうがいいです。アレンジはしっかりしていてそれほどラウドな伴奏じゃないですから、あくまでヤングの歌を引き立てる効果が出ていていいですね。
ソロ版のほうは良くないというわけではないんですけども、二枚を比べてみるとなぜか見劣りするんですよ。ひとつにはヤングの場合、弾き語りで録音したレコードがこれまでたくさんありますから、少々ありがたみに欠けるというところはありますね。

■Graham Nash Songs for Beginners 1971

グラハム・ナッシュのファーストソロアルバムですね。「4 Way Street」のすぐ後に出ています。おそらくホリーズのときからこの人の持ち味だったんでしょうけど、曲調は明るくポップです。バックには多くの友だちが参加してますが基本的に非常にシンプルなサウンドプロダクションで爽やかな印象のアルバムです。
クロズビー・スティルズ・ナッシュ&ヤングのときは「Marrakesh Express」「Teach Your Children」「Our House」の作者ですね。優しく温かく朗らか部門担当という感じです。

それでもやはりヒッピーですから、「Military Madness」や「Chicago」といった反戦歌を最初と最後に配置して主張を明らかにしています。後者は危機感のあるコーラスが印象的で、ラストでアルバムが引き締まっていいですね。曲が粒ぞろいでとても好感の持てる佳作でした。


【今月聞いたレコード・CD】

■The Kinks Live in London 1973/1977 2010

なにかバッタもの的な雰囲気のCDですけど、73年のライヴが十曲、77年のが十一曲、一枚のCDに入ってます。テレビ用に収録されたものかもしれません。
しかし意外とこれが聞きごたえ充分のライヴで掘り出しものでした。

もともとキンクスはコンサート活動にはあまり熱心ではなかったようで、公式のライヴ盤もあまり出ていません。有名なのは1980年の二枚組「One for the Road」で、アメリカでひと稼ぎしてやろうという気になってけっこう本気度の高い演奏です。ただ、出来はいいんですが、本来のというか、それまでのキンクスの持ち味をいったんおいてリブートしたかのようなテンションの高さですから、その点では当時ちょっとした違和感があったのも確かです。

それでこの最近出た発掘音源ですけど、これがいい演奏で曲目も幅広く採りあげてあり、グループの代表曲をたくさん聞くことができます。この時期のキンクスは単なるビートバンドから脱皮して独自の音楽性を確立していたわけですけど、その感じがうまく再現されていてキンクスらしいキンクスを聞いたという気にさせるライヴ音源になってるところがいいですね。

前半が73年で「Everybody's in Show-Biz」を出した後です。なぜかこのアルバムからの曲は無くて、71年の名作「Muswell Hillbillies」から二曲やってます。ほかは「You Really Got Me」はじめとしたヒット曲です。
嬉しいことに「The Village Green Preservation Society」を演奏するんですね。この曲のライヴが聞けるというだけでもなんだか得した気分です。バックには本数の多そうなホーンズが付いていてサウンドもゴージャスです。

後半の77年というと「Schoolboys in Disgrace」のときで、これは一曲だけですが「The Hard Way」を「最新アルバムから」と紹介して演奏します。他の曲目はやはりヒット曲ばかりです。前半と後半でだぶるのは「All Day and All of the Night」と「Lola」の二曲で聞き比べができますけども、ほとんど一緒だというのがわかります(笑)。

■The Old Grey Whistle Test 40th Anniversary Album 2011

BBCの音楽番組「オールド・グレイ・ウィッスル・テスト」のオムニバス盤で三枚組CDです。英米の人気アーティストの曲がたっぷり収録されているんですが、ただしCD1とCD2は普通のスタジオバージョンを集めただけなんで期待しているとガクッときます。
以前、同名番組の名を冠したオムニバスCDがあったんで、当然ライヴ音源だろうと買ってみたら全部違ったんでガクガクッときた苦い経験があって、この番組名にはちょっと警戒してました。

で、この四十周年記念CDはライノから出ていて今度はちゃんとライヴかどうか明記してあります。CD3が「Live Disc」と称してあり、これはほんとに放送で使ったライヴ音源で十八曲収録されています。
目玉がレノンの「Stand by Me」で、ファンなら音を聞いてすぐわかりますけどあのヘッドフォン付けた顔のアップのかっこいいスタジオライヴですね。あれがこの番組だったんですね。

ほかはビッグネームよりも中堅どころが多くて、初めて聞いた曲ばかりでした。スニッフン・ザ・ティアーズとかシンプル・マインズ、ジョーン・アーマトレイディング、サッド・キャフェなど、名前は知っていても曲は聞いたこと無いってこと多いですからね。
意外だったのはクリス・リーアの「Guitar Street」で、この人てっきりAORシンガーだと思ってたんですが、最初聞いたときはバッド・カンパニーかと思ったくらいハードロックだったんで驚きました。
リトル・フィートの「Rock & Roll Doctor」は聞きごたえがあるし、トム・ウェイツの不気味な「Small Change」、イギー・ポップの短い「I Wanna Be Your Dog」、ラモーンズ「Rock & Roll High School / Rock & Roll Radio」も入ってます。

■Respect! The 30th Anniversary of Kiyoshiro Imawano 2000

忌野清志郎のデビュー三十周年を記念して武道館で行われたトリビュートコンサートのライブCDで二枚組です。さまざまなゲストがRCサクセション時代からの曲を歌い、後半は本人も出てくるという、ディランの三十周年コンサートと同じスタイルですね。
ゲストはわりと新しい世代の人たちが多くて、これがまたどいつもこいつも下手くそばかりでもううんざりです。坂崎幸之助や三宅伸治あたりはさすがにいいんですけども。あとスティーヴ・クロッパーが来ていて「The Dock of the Bay」を歌ったりするんですねーこのひと律儀なんですね。

結局ゲストの部分(CD1とCD2の二曲目まで)はほとんど聞きどころがなくて、半分以上はスキップして聞いてました。ロリータ18号なんていうのとかとんでもないですよほんと。
しかし仲井戸麗市やラフィータフィーとの共演になる後半は忌野清志郎のライヴ盤として聞くことができますから良しとしましょうかね。何曲かではスティーヴ・クロッパーがギターを弾きます。私の最も好きなギタープレイヤーです。

やはり圧倒的なんですよね。こうして他の人が歌うのと比べてみると、忌野清志郎がいかに上手いシンガーであったかがわかります。また、音楽に対して常に誠実であったことも大切です。まったくもって惜しいとしか言いようがありません。我々は、かけがえのない人を失ってしまったんですね。
中でも一番の聞きどころというと、井上陽水とデュエットする「帰れない二人」でしょう。この曲は「氷の世界」に入っていて、詞と曲が両名の共作です。レコードには忌野清志郎は加わってなくて、二人によるデュエットは初めて聞きましたけどなかなかいいんですねこれが。また、ラストの「ドカドカうるさいR&Rバンド」は本人のアコースティックギター一本の弾き語りでこれも聞きごたえあります。

■加川良 親愛なるQに捧ぐ 1972

加川良はファーストの「教訓」(1971)を聞いていやになったので、これきりにするつもりしてました。でもまあもう少し聞いてみようかということで、この72年のセカンドと続くライヴ「やぁ。」(ここまでURC)、さらにベルウッドから出した四枚目「アウト・オブ・マインド」まで入手しました。

それでまずセカンドいってみましたけど、やはり歌詞のうさん臭さが鼻についてどうもちょっと。いかにもいい人・できた人を演じているかのようで、僕なんてぜんぜんダメですよと言っておきながらぜったいこいつ本心ではそう思ってないよなというところが見え見えなんですよね(笑)。そういう、謙虚さを装いながら実は不遜というか説教くさい感じが聞いていてどうしても、若いくせになにを偉そうに…と思えてしかたないんですよ。そのへん好き好きなんでしょうけど、私は好きではないほうです。








161204

【先月買ったレコード・CD】

■Bruce Springsteen Live 1975-85 1986

LPのボックスセットを買ったのなんて何年ぶりでしょうか。「Born in the USA」(1984)の大ヒットをうけての初のライヴ盤は十年間をまとめたアンソロジーになっています。LP五枚組というヴォリュームは、当時いかにスプリングスティーンの人気が高かったかを示しています。

LPは日本盤もオリジナル通りのボックス仕様でソニーから発売されています。ここまでの一枚ものLPはいずれも五百円くらいで買えましたけども、これはさすがに中古盤の相場は二千円以上します。US盤のちょっと箱に擦れがある程度のものを千円で落札しました。

■高野寛ソングブック 2014

デビュー二十五周年記念のトリビュート盤だそうです。高野寛はまったく聞いたことがないんですが、参加アーテストの一人にトッド・ラングレンがいるので買ってみました。ラングレンは高野のアルバムをプロデュースしたことがあるんですね。ここでは「虹の都へ」という曲を歌っています。他に知っている名前は高橋幸弘くらいです。

■Michel Polnareff 1974

ミシェル・ポルナレフはその初期にシングル曲をフランス以外のヨーロッパ各国語版で吹き込んでいます。60年代は人気アーティストはみんなやっていたというかやらされていたというか。フランスに限らずビートルズも「抱きしめたい」「シー・ラヴズ・ユー」のドイツ語ヴァージョンを作ってますし、ローリング・ストーンズだって「アズ・ティアーズ・ゴー・バイ」をイタリア語で歌ってます。

これらの各国語版はそれぞれの国のみでシングルとしてリリースされ、本国のLPに収録されることはまずありませんからコレクターズアイテムなんですね。ポルナレフは意外といろいろやっていて、イタリア語・ドイツ語・スペイン語・英語もあります。中でもイタリア語版には力を入れていて全部で十曲も録音しています。
私としてもこれらのシングルはのどから耳が出るくらい聞きたいわけですけども、とにかくウルトラレア盤でイーベイに出ていてもとても買えるような値段じゃありません。

イタリアでは1974年にこれらのシングルを集めたLPが出ていて八曲が収録されています。このLP、十二曲入りであとの四曲はふつうのフランス語版です。なんでイタリア語版を十曲とも入れないのか、その中途半端さが不明ながらとにかく徳用盤であることは確かです。
それでこのLPすらも当時の盤はまず手に入らないレアアイテムなんですが、最近再発売されたということを先月知りました。しかも嬉しいことにCDだけでなくLPもプレスされてるんですねーいいですね。その上さらに喜ばしいのはこれがアマゾンでごく普通の値段で簡単に買えるということです。

ジャケットはオリジナル盤の複写で色が良くないですけど贅沢いいません。ちょろっと聞いてみたら、音は思っていたほどには悪くなくて上等です。てっきり盤起こしかと思ったんですがちゃんとマスターテープから作ってあるようですね。海賊コピーではなさそうです。

■生田敬太郎 風の架け橋 1974

この前聞いたファーストは今ひとつでしたけど、もう一枚だけ聞いてみることにします。これはサードアルバムですね。
LPは再発されてないようで、オークションに出てもけっこう高いんですね。今回は四千円くらいで買うことができました。

■五つの赤い風船ライヴ~レッドバルーン・メモリアル'70 1979

SMSの「幻のフォークライブ傑作集」のシリーズは手ごろな値段で出ていればいただきです。二枚組ですが千円で落札しました。
このLPの音源は1970年3月の新宿厚生年金会館のコンサートです。

■麗蘭 磔磔2014盤 Good Times Roll 2015

麗蘭の通販ライヴCDもアマゾンとヤフーオークションでチェックしています。今回のはオークションに出ました。送料込みで1800円。まあいいかって感じです。






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【今月聞いたレコード・CD】

■Willy DeVille Crow Jane Alley 2004

ラストアルバム「Pistola」(2008)のひとつ前のものです。すでに新作を出してもあまり話題に上らなくなっていた頃ですけども、90年代以降のアルバムもなかなか充実した内容のものばかりです。アメリカではレコード会社との契約も無くなっていたみたいですがヨーロッパでは依然として人気が高く、わりと意欲的にCDは出していたんですね。
この2004年作のスタジオアルバムは、まさしくウィリー・デヴィル節そのままのスパニッシュストロールが繰り広げられており期待どおりでした。CDケースには「First Studio Album in 5 Years!」というスティッカーが貼ってあります。この前のアルバムは「アコースティック・トリオ・ライヴ」と称したシンプルな編成のライヴ盤で、これも聞きごたえがありました。

デヴィルはミンク・デヴィルでデビューしたときはいわゆるニューヨークパンクにカテゴライズされていたわけですが、やっていたのはロックンロールやリズム&ブルーズをちょっとラテンぽいというかヒスパニックなタッチを感じさせるアレンジにした音楽でした。ちょうどアーサー・アレクサンダーを手本にしたような感じと言えばわかる人はわかりますか?(笑) デヴィル本人もキザなやくざ者のイタ公という感じのいでたちでしたから、印象としてはニューヨークの中でも移民コミュニティにアピールしていたんじゃないかと思います。
その後はニューオーリンズに接近するなどの取り組みもありましたが、一貫しているのはラテン系移民の音楽を採り入れたリズム&ブルーズ系のロックンロールというところです。いかしてます。

今回の「クロウ・ジェイン・アレイ」、ジャケットはなにやらインディアンみたいな装束で、どんなコンセプトなのかはよくわかりません。バックにはロボスのメンバーやチカーノロックのバンドも入っているようで、メキシカンとの接点をなにか掘り下げたような内容なんでしょうか。ラテン音楽には詳しくないのでそれぞれの違いが今ひとつよくわからず、どれも「ラテンぽい」感じにしか聞こえません(笑)。しかしラテン文化圏は広いですからそれだけ需要も大きいわけだし、音楽も奥が深いんですよね。
純然たるリズム&ブルーズ曲もあるし、ニューウェイヴ的な感覚も残るクールなナンバーもありで、80年代ころのデヴィルが戻ったような手応えです。この次のアルバムを最後に癌で亡くなってしまったというのはまったく惜しいことです。

■Ry Cooder Chavez Ravine 2005

これもヒスパニックなアルバムですがこちらのほうはもろにチカーノ音楽です。ウィリー・デヴィルのは全曲英語で歌われますがこちらは半分くらいがスペイン語ですね。
チャベズ・ラヴィーンとはロスアンジェルスにある地名で、メキシコ系移民の町だったそうです。おそらく1940年代にはスラムの様相だったことと思いますが、ここに野球場が建てられることになり住民たちが追っ払われたという事件があり、そのことを綴った叙事詩のような内容のようです。
十五のエピソードが歌われていて、野球帽をかぶった死神が運転するブルドーザーで住宅が破壊されるジャケットのイラストには、なぜかUFOまで描かれています。宇宙人が空から見た様子を歌にしてあるらしく(笑)、話の内容にはユーモアもありそうですね。

ライ・クーダーは70年代から80年代にかけてはコンスタントにアルバムを出してましたし、ヴィム・ヴェンダーズの「Paris, Texas」などサウンドトラック盤もたくさん手がけてました。しかし87年の「Get Rhythm」を最後にソロアルバムの形でのリリースはなくなり、どういう方針転換なのか他のミュージシャンとの共演アルバムばかり出すようになります。
それもインドのギター奏者やアフリカのユニークなミュージシャンなど、欧米では知られていない特異なタイプとの共作ですから、あまり話題になることなく過ぎていました。それまでも自己名義のアルバムではいろいろなアーティストをゲストとして招いて意欲的に取り組んでいたわけですけど、90年代の共演盤はメインストリームからはかけ離れています。

ただしこれらの共演盤も、聞いてみるとなかなか興味深いんですよ。たしかにソロ名義の佳作などと同列にとらえることはできませんが、珍しいサウンドでもあるし、面白さがあります。後にはアイルランドのチーフタンズとの共演盤も出してます。
それらの実験を経ていよいよ97年に「Buena Vista Social Club」の大ヒット作につながっていくんですね。2003年にはブエナ・ヴィスタ・ソーシャル・クラブのギタープレイヤーとの共作盤も出しました。これもいいアルバムです。

今回聞いた「Chavez Ravine」は久々のクーダー名義のソロアルバムです。しかし80年代までのようなシンガーソングライターとしてのヴォーカルアルバムとは違って、トータルなサウンドクリエイターであるクーダーのリーダーアルバムという体裁です。ヴォーカルは複数のシンガーがそれぞれの曲で歌っています。
クーダーほど豊かな才能を持った人でも、ヴォーカルがダメというところは惜しいですね。以前のヴォーカルアルバムではその点が私としては不満だったわけですけど、90年代以降の様々な活動から「じゃあ他のシンガーに歌ってもらえばいいじゃないか」というシンプルな解決法を見出したところが功を奏しています。

■Hawkwind Hall of the Mountain Grill 1974

ホークウインドはわりと最近聞きだしました。60年代から活動する超ヴェテランバンドながら、昔はまったく聞くことがありませんでした。イメージとしては、難解というよりはきっとわけのわからないサイケデリックジャムバンドかなんかなんだろう、という感じでした。レコードはたくさん出してますが、誰もが知る有名アルバムというのもありません。
聞き始めたきっかけは、あるプログレファンから勧められたことです。こちらがプログレ苦手なことを知ったうえでの推薦ですから、まあそれなりに聞きどころがあるんだろうとトライしてみました。

なるほどそのサウンドはプログレというよりはハードロックとサイケデリックの折衷というもので悪くありません。しかしそれでももうひとつピンとくるものも無く、ふーんという程度で終わるところでした。ところがサードの「Doremi Fasol Latido」(1972)を車で聞いたところ、きたんですねこれが。このアルバムの疾走感あふれる演奏が、車を走らせながら聞いたらドンピシャきたんですよ不思議なものです。それ以来私にとってのホークウインドはドライヴィングミュージックなんですねー(笑)。

「Hall of the Mountain Grill」は四枚目のライヴ「Space Ritual」(1973)を経てのスタジオ盤で、これも不思議な高揚感と疾走感のあるハードロックです。スペースロックなる呼びかたもあるようで、なるほど歌の内容はSFぽい感じもありそうです。
この時期ベースを弾いているのは、後にバンドをクビになってからモーターヘッドを結成するレミーです。「Lost Johnny」ではヴォーカルもとっています。このことからも、サウンド面ではかなりハードな線をいっていたことがわかります。
他にはヴァイオリンや管楽器奏者もいますし、キーボードも多用されていてシンセサイザーやメロトロンが使われています。ただキーボード類は主にバックグラウンドの音として効果を出しており、あまりプログレぽい感じはしないんですね。

メンバーチェンジを繰り返しながら今なお活動しているグループで、そのアルバム数は膨大です。どこまでついていけるかわかりませんけども、いけるところまで行ってみようと思います(笑)。

■Deep Purple Fireball 1971

ディープ・パープルで以前持っていたアルバムは「In Rock」「Machine Head」「Live in Japan」と「24 Carat Purple」の四枚だけです。もうこれでパーフェクトだと思ってましたから他のはまったく聞いたことなかったんですが、最近ファーストからちゃんと聞いてみると初期のものが意外と良かったりしたんで驚きました。

そこで他のものも順に聞いてみることにして、今月は「In Rock」の次のアルバムです。ハードロック化第二弾となりますね。「In Rock」のサウンドは勢いはありますけどまだこなれてなくて、60年代の音です。このアルバムからのヒット曲をベストものの「24 Carat」に入れるときにライヴヴァージョンにしたのも当然といえます。

しかしその翌年の「Fireball」では俄然新しい感覚のサウンドになっていて一皮むけた感じです。イアン・ペイスのドラムズがいいですね。
ヒット曲はタイトル曲と「Strange Kind of Woman」ですね。ほかにはディランふうの曲もあったりするところがちょっと面白いですし、どれもまずまずの出来で悪くないです。いよいよこの次に出すのが「Machine Head」でグループは人気を決定づけることになります。


【今月聞いたレコード・CD】

■The Who View from a Backstage Pass 2007

これは一般発売されたCDではなく、2007年にフーのファンクラブの加入者に特典として配布されたものです。当時は二十年ぶりの新作「Endless Wire」を発売してワールドツアーも敢行するなどプロモーションに力を入れていたんですね。私は好きなアーティストであってもファンクラブまではちょっと入ろうとは思いませんが、非売品CDのためなら労をいとわないというものです(笑)。
CDは二枚組のライヴコンピレーションで1969年から76年までの音源を収録してあります。曲目を見てもさほど目新しいものでもなかったのでこれまでつい放置していました。

ようやく棚から取り出して聞いてみたら、これがすごい演奏ばかりでもう最高です。76年までということはすべてキース・ムーン存命中の録音ばかりということで、下手にその後のキャリアのものを入れてバランスとったりせずに割り切った編集にしてあるところがなんといってもいいところです。ファンが聞きたいと望むとおりの内容にしてあるというわけですね。
しかもそれぞれの曲はパーフェクトな演奏ばかりをセレクトしてあって、これが非売品の限定盤とはちょっともったいないと思えるほどです。

フーのライヴといえば、とにかく「Live at Leeds」です。1970年の、バンドの絶頂の様子の完璧なドキュメントになっていて、ロックンロールのライヴレコーディングの鑑といっていいアルバムです。ただこれは単一のコンサートですから、グループが長期間にわたってどんなライヴを繰り広げていたかということを知るには、やはりライヴコンピレーションが必要になってきますけども、フーにはそういうアルバムは「BBC Sessions」を除けばこれまでありませんでした。

今回この「View from a ~」を聞いてみてわかるのは、やはりこのバンド上手かったんだなあということです。四人編成でもシンガーのロジャー・ダルトリーはタンバリンとハーモニカくらいしか楽器は使いませんから演奏は三人だけ。当時はサポートミュージシャンなど使いませんのでそのほとんどがギター・ベース・ドラムズだけという最小限の楽器です。
おそらくオーヴァーダビングもほとんどしていない、生のままの演奏が聞けます。すごいんですよ。やはりキース・ムーンはまったくとび抜けたドラマーだったということが再確認できます。

■The Jam All Mod Cons 1978

ジャムも最近聞き直ししてます。以前は四枚目までを聞いてましたが、印象としてはどれもほぼ同じサウンドです。その点は久しぶりに聞き直しても同様でした。
ただしこのサードは曲の出来が断然いいですね。どれもキャッチーなメロディを持っており、ハード&ポップの様相です。ハードなサウンドも、セカンドまではただただ押しまくり突っ走る感じだったところが、さすがに三枚目ともなるとちょっと引きの要素も加わっています。アコースティックギターによるバラード小品が入っていて、これがいいアクセントになってますね。

バンドのコンセプトも演奏ぶりも、ほぼコピーと言ってもいいくらいそのまんまフーなわけですが、ハードかつポップというのを完全に両立させたという点で、このサードでフーのモッズサウンドの80年代版が完成したということですね。ただ残念なことにジャケットがなんの変哲もなさ過ぎ(笑)。
でも続けて聞いていくのが楽しみになってきました。次の「Setting Sons」(1979)は内容覚えてませんけど、たしか当時評判は良かったはずです。

■Fleetwood Mac Then Play On 1969

フリートウッド・マックはあまり熱心に聞いてないのでグループのことはよく知りません。時期によってまったく音楽が違うのでつかみどころが無いというのももちろんありますし、アメリカ人を入れて大ヒットを飛ばした後期を除けば代表作が少ないのも要因です。
ロック好きに評価されているのはもちろん初期のピーター・グリーン時代で完全にブルーズです。しかしこの時期のアルバムも英米それぞれで曲目の違うものが日本で発売され、どれがオリジナルなのか判然としないところも困ったことでした。
英オリジナルのファースト「Fleetwood Mac」(1968)とセカンド「Mr. Wonderful」(1968)は当時は日本盤が出てなくてアメリカ編集盤の「英吉利の薔薇」と「聖なる鳥」が発売されていました。「ミスター・ワンダフル」は曲目違いの米編集盤が出ていてわかりにくかったんですね。

今月聞いた「Then Play On」はサードアルバムです。ピーター・グリーンがいる最後のアルバムで、ジェレミー・スペンサーに加えてダニー・カーワンも加わったギター三人体制での唯一のアルバムということになります。
やはりブルーズなんですがアレンジには幅が出てきて、ガチガチの頭でっかちなブルーズのコピーからは脱皮しつつあります。フォークやトラッドの雰囲気が加わった感じがしていいですね。ただ全体には地味すぎて、記憶に残る曲が無いところが物足りないです。

■チューリップ 魔法の黄色い靴 1972

チューリップはレコードは持ってなかったんですが、なにか一枚聞いてみようということで調べてみたらこのファーストが評判がいいようです。これまでは、ヒット曲を何曲か「青春歌年鑑」で聞いたことがあるだけでした。ちなみに「青春歌年鑑」には1973年から79年にかけて「心の旅」「銀の指環」「サボテンの花」「ブルー・スカイ」「青春の影」「虹とスニーカーの頃」が収録されています。

で、聞いてみたところまあ…悪くはないですけども、もうひとつぐっとくる手応えは感じられませんでした。財津和夫をしてよくマッカートニーになりたかった人という形容がありますが、もろにビートルズをコピーしたような感じは意外にもありませんでした。むしろ「Time Is On My Side」そのままの曲が出てきたときには笑ってしまいました。

売りもののハーモニーヴォーカルは独特でいいですね。それからどうも全員がリードヴォーカルとっているようで、中には無理して歌わされた感じもあって、そのへんはビートルズにならったところでしょうね。
歌は財津のほうが上手いんですが、もうひとりのシンガーの姫野達也のほうが魅力的に感じます。「千鳥橋渋滞」がいいですね。セカンドシンガーにも味があるというバンドは強みです。

そういえば高校生のときにチューリップファンの同級生と天神を歩いていた時、福ビルの前で突然そいつが向こうから歩いてきた大人に歩み寄って「財津さんですか?」と尋ねるとその人、「どうもー」と笑って手を振りました。同級生がしばらくの間興奮していたことといったら!








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【先月買ったレコード・CD】

■Bad Company Live 1977 & 1979 2016

今年の春に発売された発掘音源ものです。バッド・カンパニーの発掘ライヴというと2006年に出た1976年のアルバカーキのCDがありますが、ポール・ロジャーズからクレームがついてすぐに回収となり、かなりのレア盤になってしまってます。録音の状態があまり良くなかったからでしょう。でも演奏はいいノリで、バンドの好調ぶりがわかります。

今回発売されたのはこれに続く77年と79年のライヴで全トラック未発表です。CD1が77年、CD2が79年ですね。曲目を見るとその年のアルバムからの曲を多くやっていてわかりやすいです。CD1の半数の曲は77年に出した四枚目「Burnin' Sky」からのものですし、CD2もやはり半数がその年の五枚目「Desolation Angels」からです。
アルバカーキは76年のサード「Run with the Pack」から多く演奏していますから、続けて聞くとこの四年間のバンドの状態がわかるヒストリーになりますね。こうなると、どうしても「Live 1974」が聞きたいですよね(笑)。

■Aida Night of the Proms 2011

つい最近までその存在を知らなかったライヴコンピレーションです。BBCが毎年ロンドンで開催しているプロムズというクラシックのコンサートイベントは、大衆向けに間口を広くした気軽に楽しめるクラシック音楽祭というもののようです。その中にはポップスのアーティストもゲストとして招かれてライヴを行っており、そのCDが2000年代になって毎年出てるんですね。

別のことを検索していて偶然そのことを知り、出演者を調べてみると2011年のCDにアリソン・モイエが出て二曲歌ってます。これはぜひ聞きたいものです。しかしアマゾンで見るとけっこう高いんですよ。しばらくチェックするうち二千円くらいの中古が出たのでゲットしました。このCDには他にシールやナイル・ロジャーズも入っているので聞きがいがあります。

あと欲しいのは二枚あって、2005年のはロジャー・ダルトリーが一曲だけ入ってるんですけども、18000円くらいというなにかの間違いじゃないかと思えるような価格で話になりません。2010年のはそこまでなくて今2500円くらいです。ボーイ・ジョージが出てます。もうちょっと安いのが出たら買いましょうかね。

■ニューエスト・モデル Senseless Chatter Senseless Fists 1988

ファーストは自主製作盤で六曲入りのミニアルバムです。セカンドでフルアルバムの「Pretty Radiation」(1988)から持っていたんですが、このファーストはいかにもちんけなジャケットで(パンクかガレージ名盤のオマージュでしょう、たぶん。)、写真を見ても高校生くらいの感じですから今ひとつ触手が動きませんでした。しかし最近になってソウル・フラワー・ユニオンを見直すきっかけがあったので、初めはどんなふうだったんだろうと聞いてみることにしました。

でもLPはきっと高いんだろうなあとオークションを見てみると、意外とたいしたことなくて簡単に入手できました。当時だいぶ売ったんですね。むしろメジャーのキングから出した「ソウル・サヴァイヴァー」のLPのほうが入手困難です。すでにCD時代に入ってましたからプレス枚数が少なかったんだと思います。なんとかLPで手に入れたいんですけどね。

■泉谷しげるVS古井戸 唄の市ライヴ・地上最大のショウ 1979

オークションで買ったもので、競合入札者が一人いて結局1300円で落札できました。SMSが1978年から発売した「幻のフォークライブ傑作集」のシリーズの一枚でCD化されていません。内容は1972年のジョイントコンサート「地上最大のショウ」を収録した二枚組です。一枚目が古井戸、二枚目が泉谷と分けてあり、当日のプログラムどおりのようです。

このSMSの復刻ライヴシリーズは全部で二十五枚も出てるんですが、私の聞きたいのは五つの赤い風船・古井戸・三上寛あたりなんで十枚くらいあります。
ヤフーのオークションアラートに登録して、新しく出品されたものをチェックしてますけど、やはりCD化されていない音源なので人気盤は高いんですね。五千円六千円じゃとても。

しかし高いといってもそれは出品者が勝手につけた価格にすぎませんから、需要に見合った相場だとは限りません。事実、今回私の買ったのは泉谷と古井戸ですから、人気が低いわけではないはずです。高石友也が五百円くらいで出ているのは納得ですが(笑)。
欲張って高く出品してもいつまで経ったって売れないんだから、千円くらいでスタートすればそこそこのところまで上がると思うんですけどねーどうですか出品者のみなさん。

■唄の市・沖縄フォーク村 1972

これもついで買いで470円です。エレックがわりと早い段階で出したオムニバスでスタジオ録音です。「ウチナアフォーク村」と読みます。これは72年の7月発売です。つまり本土復帰直後に現地で録音されたものなんですね。
広島フォーク村の「古い船をいま動かせるのは古い水夫じゃないだろう」の第二弾というような企画でしょうね。あの中でまともだったのは吉田拓郎だけだったわけですけど、こちらはどうでしょうか。
私の知っている名前は一曲目の佐渡山豊だけです。佐渡山豊のレコードで持っているのは74年にエレックから出した「仁義」というアルバムで、これはまだ聞いてませんから未知数です(来年には聞ける予定!)。

それでこの沖縄フォーク村、また素人の集団だったら目も当てられんがなとジャケットのクレジットを見ると、なんとバッキングに高中正義・小原礼・つのだひろが付いています。エレックとしても前回を反省したんでしょう、すご腕のプロを雇って万全を期したんですね。ここはちょっと聞きどころです。
そういえばこのアルバムはたしか玉城くんのレコードコレクションの中にもあったような…。


【先月買ったレコード・CD】

■Mark Bolan A Soldier's Song 2015

イージー・アクションが出した7インチシングルです。マーク・ボランの最も初期の音源で1965年録音のアセテート盤から起こしてあります。元は「Song for a Soldier」という曲名だったようです。
両面とも二分足らずのデモ曲で、アコースティックギターの弾き語りです。A面はタイトルからしてヴェトナム反戦歌でしょうね。ディランふうに歌っていてタイラノソーラス・レックスのスタイルにはまだなってません。B面は「Reality」という曲でロックンロールです。

スリーヴがTレックスワックスカンパニーのものを思い起こさせるデザインになっているところがなかなかいいですね。限定盤のカラーレコードは早々に売り切れてしまったようですけど私はカラーレコードあまり好きじゃないのでブラックヴァイナルのほうがいいです。カラーレコードは傷や埃が見えにくいからいやなんですよね。アマゾンで買えるようになってました。

■Bruce Springsteen Darkness on the Edge of Town 1978
■Bruce Springsteen Born in the USA 1984
■Bruce Springsteen Tunnel of Love 1987

これまでスプリングスティーンは、三枚目の「Born to Run」までと五枚目の「The River」だけしか持ってませんでした。しかし最近聞き直したら以前はわからなかった良さに気づき、やはりこれはちゃんと聞いてみないとだめだろうと歯抜けの補充をすることにしました。
狙い目はオークションのセットセールで、一枚当たり五百円以下でないと買いません(笑)。しかしおいしい内容のセット売りはすぐ買い手がついてしまうので、結局 “ついで買い” のバラで集めていくことに方針転換です。

今回URCの発掘ライヴで古井戸のを落札しました。この出品者はありふれたレコードCDばかりをなんでも一枚350円で多数出品しており、送料を宅配便料金に固定してまとめ買いを誘発するという手法の商売をしている人です。この手合いはわりといるんですね。
こういうときに、わざわざ探すほどではないけど安かったら買っとこうというようなレコードをついで買いします。出品リストを見ると意外とありました。スプリングスティーンの四枚目「闇に吠える街」と大ヒットアルバム「ボーン・イン・ザ・USA」、その次のちょっと地味らしい「トンネル・オブ・ラヴ」が買えて順調です。

他にもエルヴィスやクロズビー・スティルズ&ナッシュなどもあって全部で九枚。古井戸のライヴ以外はすべて競りは無く350円で落札です。送料は1080円でしたから一枚当たり120円、合計470円ずつで当初目標達成です(笑)。

■Elvis Presley Blue Hawaii 1961
■Elvis Presley Promised Land 1975

まとめ買いで入手しました。エルヴィスのレコードはたくさん出ているうえ60年代のものは安易に作られたアルバムが多いんですね。そのため、50年代のオリジナルアルバム以外のものは1992年に出たCDボックスセット「コンプリート・'50ズ・マスターズ」とそれに続く60年代篇・70年代篇を持っていれば上等だろうと考えてました。実際その通りと言っていいくらい、このボックスは優れた内容であることは確かです。

しかしそれでも、ライヴアルバム(これもたくさんある!)や定評のあるオリジナルアルバムを一枚また一枚とコレクションに加えていくと、ええもうここまできたら全部だとばかりの勢いになってくるから不思議なものです(笑)。もっともセット買いなどであくまでも予算をかけずに、ですけどね。
さすがに泡沫サウンドトラックものやキャムデン盤などまで買い揃えようとまでは思いませんがけっこうな枚数に上り、目標まであと三枚と迫りました。意外と「GIブルーズ」と「エルヴィス・イズ・バック」はオークションにあまり出てこないんですよね。

■Crosby, Stills & Nash CSN 1977

これも470円でした。以前はクロズビー・スティルズ&ナッシュの三人にはあまり興味が無く、もっぱらニール・ヤングばかり聞いていました。四人で作った「Deja Vu」と二枚組ライヴと、のちの再結成ものもフォローしてましたが、ヤングが入ってないものとなると1969年のファースト「Crosby, Stills & Nash」くらいしか持ってませんでした。
ファーストは有名なアルバムですけども、聞いてみてもちっと面白くなくて、若かった私はこれのどこがスーパーグループなんだろうとぜんぜんピンとこないままでした。白人のハーモニーヴォーカルにはあまり興味がわかなかったんですね。

だいぶ後になって聞き返したら、こんどは気に入りました。やはり、メインの旋律がどこなのかよくわからないような複雑なハーモニーは好きになったというほどではないですが、演奏はけっこうヘヴィなロックであることに気づきました。曲もいいです。
私はギター弾かないんで演奏技法についてよくわからないんですけど、スティーブン・スティルズは変則チューニングを多用するテクニシャンだそうで、そんなところがわかるともっと楽しめるんでしょうけども。

それでごく最近になって、ヤングのからんでいないソロやデュエットアルバムなども、時間がかかってもいいからひととおり聞いてみようという気になって発売順に取り組み始めました。
今回買ったアルバム「CSN」は三人での再結成ということになり、八年後のセカンドにあたります。この後もそれぞれソロを出しながら何度か三人で集まって新作を出し、ときにはヤングも加わったりと、ディスコグラフィはかなり煩雑です。いいものばかりとは限らないと思いますけどね。

■Toto IV 1982

はいこれも470円です。今回格安で買ったLPはいずれもコンディションの良いものでしたが、これだけ少々ジャケットが傷んでいて盤面もそれほどいい状態ではありません。でもまあいいかトトだし、て感じです(笑)。これはほんとについで買いで、ちょっと聞いてみるかという程度でした。
なんでちょっと聞いてみる気になったかというと、先週見に行ったリンゴ・スターのバンドにスティーヴ・ルカサーがいたからです。オール・スター・バンドはヒット曲を持っているメンバーが代わる代わる歌うというスタイルでやっていて、ルカサーも三曲歌うことになってたわけですね。

しかし私はトトはまったく聞いたことがないんで、せめて演奏予定の三曲くらいは聞いておこうとユーチューブで予習しました。そうしたら意外といい曲だったんですね。「Rosanna」「Africa」「Hold the Line」で、いずれもゆったりとしたリズムの曲ですが、私が意外に思ったのがヴォーカルパートで、コーラスを重視したアレンジになってるんですね。それまでバンドに抱いていたイメージはインストゥルメンタル主体のプログレハード路線という感じでした。

この三曲のうち二曲が入っているのが「IV」で、大ヒット作だそうです。当時は完全にばかにしていて興味なかったんで、そんなに売れたんだとは知りませんでした。まあ確かに聞いてみると全員スタジオミュージシャンあがりで演奏はプロフェッショナル、アレンジも練られていて曲調は文字通り「売れ筋」ですから、当時の私がもっとも忌避していたサウンドであることに違いありません。三十数年経ってようやく今、聞く時がやってきました(笑)。



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【今月聞いたレコード・CD】

■Bob Dylan Fallen Angels 2016

「Shadows in the Night」に続くスタンダード集です。前作がすべてシナトラで今回はいろんなシンガーの曲だそうですけど、どうせ私はシナトラもぜんぜん知りませんから、誰の曲であろうと一緒です。
まあー正直言ってあんまり面白くないんですね。ディラン先生ジャズシンガーになりきって気持ちよく歌ってるんでしょうけども。実際、今年春にもあった日本公演と同じサウンドであることは確かです。なにしろ十年以上ツアーで回っているバンドでそのままレコーディングしてます。でもやっぱり自作の新曲が聞きたいですし、だいたいスタンダード集だというだけでなんだか気が引けてしまいます。

そうはいっても、近年のディランの取り組んでいる音楽の姿勢が、いわばアメリカンミュージックの体現なんですね。カントリー、ジャズ、リズム&ブルーズ、そしてロックンロール。これを実現する最高のバンドを得て、今日も世界のどこかで演奏して回ってます。予定表を見ると本日のライヴはケンタッキー州のパデューカという町です。11月はライヴ十六本。すごいです。

そうやってバンドを連れて小さい劇場をツアーして回る、それこそがこれからのミュージシャンのあるべき姿だと思います。レコードCDが売れなくなった、違法ダウンロードで著作権が侵されているなどとせこいことばかり言ってないで、それならライヴで稼げばいいんですよミュージシャンなんだから。
ディランの発言に、記者からなぜそこまでツアーに明け暮れるのか聞かれて「それは木こりになぜ木を切るのかと聞くようなものだ」というのがあって、まさしく今もディランは黙々と木を切っているところなんですね。

著作権侵害問題に関しても、「レコーディングされた曲にもともと価値など無いんだからダウンロードされたところで別に構わない」とも。いいですね、その通り! 大衆音楽なんだから、それはアーティストのものであって同時に大衆のものなんですよ。欧米の音楽業界が著作権著作権と目くじら立てるたびに音楽のダイナミズムが失われていっていることに、そろそろ気づいたほうがいいと思います。

そんなことが、来日公演も思い出しながら聞いた本作でふと頭に浮かびました。レコーディングアルバムとしての重要性はかつてのディランの全盛期のものにはとうてい及びませんけども、それらとはまた違った大事な要素を含んでいるのかもしれません。

演奏は非常に手練れで、おそらく一発録りです。ディランのツアーバンドの特色として、キーボードがいないというところが特筆できます。代わりにスティールギターがサウンドの要で、これが素晴らしい効果を出してるんですよ。スティールギターはカントリーの重要な楽器ですけど、もともとはハワイ音楽のものですし、使いかたで非常にカラフルなサウンドを演出できるんですね。
これでギターがメインのバンドでありながら、ストリングスのような流麗な音も奏でられるし、オルガンと同様の効果も出せるうえリズミックな展開もできるなど自由自在です。

今後もこの方式でレコードを作っていくとすれば、次回はブルーズ集をぜひお願いしたいですね。カントリーブルーズやジャンプブルーズをこのバンドで料理したらどんな感じになるでしょうか。

■Theme Time Radio Hour with Your Host Bob Dylan 2008

十年くらい前にアメリカで放送されたラジオ番組「Theme Time Radio Hour」はディランがDJを務めるというので話題になり、わりと長期にわたるシリーズになったようです。ラジオとなると、日本語訳で再放送したりCD化したりといった方法は難しいでしょうから、結局我々には番組がどんなものだったのかはよくわからないままでした。
内容としては、毎回「Weather」「Mother」「Drinking」「Baseball」などのありふれた言葉をテーマに定め、このキーワードで思い出すさまざまな曲をかけていくというものらしいです。ジャンル特集ではない分、雑多なカテゴリーの音楽があたかも無秩序に並んでいるような印象さえあります。選曲にどの程度本人が関与しているかは不明ですが、自分の曲はぜんぜんかけてないようです。

さてこのCDなんですが番組そのものの記録というわけではなく、放送された膨大な曲の中から抜粋して編集されたオムニバスです。ナレーションはまったく入ってませんので、これらの曲紹介でどんな話があったのかはわかりませんけども、聞いてみるとなかなか面白い編集盤になってました。
多くはジャズとカントリーで、音質からしてSP起こしの音源はほとんど無さそうですから戦後のものが中心でしょう。ブルーズやリズム&ブルーズ、ロカビリーなどももちろん入ってますし、モダン・ラヴァーズやホワイト・ストライプスといった新しいロックも混じってます。面白いのがクラッシュやレゲエが選曲されていることで、アメリカのアーティストだけに限っているわけでもないということです。もっともこれらはアメリカ音楽の系譜としてとらえているんだろうと思います。

全部で五十曲がごった煮的に進んでいくんですが、全体ではアメリカ大衆音楽の根の部分が俯瞰できるような感じになってるんですよ。それも、「中村とうよう監修・○○○の歴史」みたいなアカデミックなものではなく、肩の力を抜いて気軽に聞いて楽しむうちにアメリカ音楽の奥深さを自然と知ることができるようなコンピレーションになっているところがいいですね。ディランがこの二十年くらい取り組んでいる音楽の目指すところがわかりかけてきました。CDはこれがヴォリューム1で続きがあるんで楽しみです。

ただちょっとわかりにくいんですが、同じタイトルで複数のレーベルから同趣向の編集盤がいろいろ出てるんですよ。今回採りあげたのは英エイスが出した二枚組で、番組のファーストシーズンからのものです。エイスはシーズン3まで出してます。このほかに英クローム・ドリームズからは「The Best of Bob Dylan's Theme Time Radio Hour」のタイトルで二枚組三セット、さらに英ミスチーフ・ミュージックは「Radio Radio」のシリーズ名で四枚組を五セット出しています。
古い曲が多いのでロイヤリティが発生しないものもあるでしょうからいろいろな形で発売することができるんでしょうけども、権利関係はよくわかりません。ただこれだけたくさん出ていても重複する曲はほとんど無いみたいなんで、えい面倒だとすべて買い揃えてしまいました(笑)。全部で相当のヴォリュームになるんで、今後五~六年かけてじっくり聞いていきます。

■Prince & 3rdeyegirl Plectrumelectrum 2014
■Prince Art Official Age 2014

おととし二枚同時に発売されたもので、このあと「HitnRun」の1と2を出しておしまいになってしまいました。
この2014年の二作は、パート1・パート2という性質ではなくまったく違ったサウンドのそれぞれ独立したアルバムです。三人組のガールズバンド・サードアイガールとの共演名義のほうはロックで、もう一枚はヒップホップぽいR&Bですね。黒人と白人それぞれの購買層に向けて分けてみたのかどうか、意図はよくわかりません。しかし別々のアルバムになっているほうがたしかに聞きやすいです。
どちらもまさしくプリンスの音楽で、こんなのいくらでもできるよという感じで楽々と作った感じがします。まあいつものことですけどね。

いずれも紙ジャケットになってます。サードアイガールのほうは写真のモンタージュがちょっと気味悪いながらもなかなかいかすビジュアルですが、いっぽうの「Art Official Age」のほうはこの人なに考えてんだろうと思えるような変てこな格好して意味不明な写真です(笑)。しかしこれもどちらもプリンスなんですよ。思えば、「Lovesexy」で素っ裸で出てきたときには唖然とさせられたし、だいたいデビューのころから黒のスーパービキニショーツですからね(笑)。

ロックアルバムのほうは、ジミ・ヘンドリクスがバンド・オブ・ジプシーズで切り開いたロックとファンクの融合を推し進めた先の最新型のロックンロールです。ラストの曲名がズバリ「ファンクンロール」です。
バンドのメンバーにはヴォーカルもとらせてますが、ウェンディ&リサみたいなかっこいいタイプというよりは、思いきりビッチなイメージですね。このユニットでこのまま活動を続けるつもりだったかどうかは今となってはわかりませんけども、直感としてはこれ一枚だけだったんじゃないかと思います。出来はいいですよ。

「Art Official Age」のほうは打ち込みリズム主体で多くのゲストをフィーチュアしていてヒップホップ的な要素も盛り込んであります。曲間にはいつもの電話のオペレーターのせりふみたいなのが挿入されていて、「あれ、また?」とちょっとワンパターンな感じも。ただ実際にはかなりプログレッシヴな感覚が全体を支配しています。そういえばアース・ウィンド&ファイアもディスコで大人気のころはとんでもない衣装で派手にやってましたが、音楽の嗜好自体は実は非常にプログレッシヴなんですよね。

■クニ河内 僕の声が聞こえるかい~クニ・河内の世界 1972

ハプニングス・フォー解散後に出したソロアルバムです。ハプニングス・フォーはいちおうグループサウンズとされてますがかなり毛色が変わっていて、中心人物であるクニ河内の飄々たるユーモアはコミックバンドなどとは違った面白さがあります。どちらかというとプログレの人なんでしょうね。

シンガーとしてはぜんぜんダメで、このソロアルバムでも全編で自閉症がつぶやいているような憂鬱な印象があります(笑)。それで曲調もひたすらダウナーな雰囲気で占められているもんですから、なんだかとっつきにくいアルバムです。
しかし何度か聞くうちどの曲にもきらりと光るメロディがあることに気づきました。やわらかい音色のエレキピアノなどのキーボードも心地よく、演奏・アレンジとも非常によく練られています。魅力的な小品ぞろいのアルバム、いいですね。愛聴盤とまではならないかもしれませんけども、私の脳内ディスコグラフィの「お気に入り」にブックマークされました。

LPで欲しかったんですが、オークションに出たとしてもものすごい値段なんでCDで買いました。紙ジャケットですけどあの分厚いボール紙はもっと薄くできないもんですかねー。



【今月聞いたレコード・CD】

■Todd Rundgren State 2013

先日のリンゴ・スターのバンドメンバーとして福岡でも公演がありました。おなじみのヒット曲を三曲歌って受けてましたし本人も元気いっぱいです。ただ、ここ二十年くらいのラングレンはもうひとつぱっとしない印象がどうしてもあるんですね。まあオール・スター・バンド(もう五年も続けてやっている)やいつかのビートルズ・トリビュート・バンドといった仕事もドサ回りという感じがしないでもないですし(笑)、作るアルバムもちょっと疑問符付きのものが少なくありません。
最近ではロバート・ジョンソン集を出してるんですが、ラングレンがブルーズをやるというのは釈然としません。もっともこれは放送局かなにかからの依頼として来た企画らしいんですけど、実際それを受けたわけだしもう一枚同企画のライヴ盤まで作ってます。

思えば1997年にボサノヴァ集を出した時に「なに?」と思ったのが始まりで、明らかに本人スランプ状態でした。その後もわりとコンスタントにアルバムを出していて、どれも決して悪い出来ではないものの、やはりひとことで言ってなにか物足りないという感じです。カーズの再結成に加わったり、過去に自分がプロデュースしたアーティストの曲をセルフカヴァーする企画ものもやったりして、なにかそういったリハビリのようなレコードづくりを通じてきっかけを模索しているところなんでしょう。

さてこの「State」は去年出した「Global」の前作にあたるもので、エレクトロポップです。ディジタル楽器を駆使してすべて一人で作ってます。だいたいアナログ時代から全部の楽器を操って一人でレコーディングするのがこの人のトレードマークみたいになってますけど、キーボードがコンピューター化されて以降はこのエレクトロポップのスタイルがはまってますね。
実際聞けばそのサウンドはメロウでありリズミックであり、情緒的でもありとんがってもいて、グッドミュージックでさすがだわいと思わせるものがあります。

デラックスエディションは二枚組で、CD2はオーケストラと共演したライヴ録音です。メトロポール・オーケストラという楽団ですがドラムスやギターがいて、ロックも演奏できるオーケストラのようです。
曲目は「Hello, It's Me」「Can We Still Be Friends?」といったヒット曲もありますが比較的知られていない自作曲ばかり採りあげてあるところがいいですね。単なるボーナスディスク以上の価値のあるライヴ盤です。

■U2 War 1983

これまで持っていたのは「The Josha Tree」(1987)一枚だけです。当時傑作として評価が高かったので聞いてみたわけですがぜんぜん興が乗らず、まあこんなもんだろう程度の印象しか残りませんでした。しかしバンドはその後も意外と息が長く、いつの間にかスーパービッグになってますね。考えてみるとデビューから三十年以上も経つベテランでその間メンバーチェンジが一度も無いというのはたいしたものです。

最近聞いた「ロックンロール・ホール・オブ・フェイム」の二十五周年記念イベントのライヴにトリで出ているのがU2で、この演奏がなかなか良かったのでもう一度ちゃんと聞いてみることにしました。この際ですから全部聞いてやれと、まずは1980年の「Boy」から。
そうすると、当時はごく一部から注目されていただけのこのファースト、意外と聞きごたえのあるものだったのでちょっと面白くなってきました。続く81年の「October」は若干散漫な出来になってましたけども、83年のサード「War」は再びガッツのある力作になっていました。

サウンドはもろに80年代風で、売れっ子のスティーヴ・リリーホワイトというプロデューサーが作っています。独特のエコーが特徴のこの時代の音は、私は当時どうもなじめずにいたんですね。「流行りの音」というのはやはり気に入らないです。「ヨシュア・トゥリー」を聞いたときも、またこれか…という印象があったんだと思います。それは今聞いても、あまり感心できるものには思えません。80年代の記憶はまだ強く残ってますから、ノスタルジーにまでは昇華していないと言えます。どちらかというとネガティヴな記憶です(笑)。

ギターの音はかなり作り込まれた感じがしますね。ジ・エッジはリズムギターを主体にしてトータルなサウンドイメージを演出するような、70年代のギターヒーローズとは違ったタイプの技巧派のようです。
ただボノのヴォーカルは、あまり魅力があるとは思えません。下手ではないんですが、声の質はどちらかというとポピュラーシンガー向きです。

一曲目の「Sunday Bloody Sunday」がヒット曲ですね。レノンに同じ曲名のがありますが、どちらも北アイルランド問題をテーマとしたものです。継続する内戦は、やはりアイルランド出身のバンドにとって切実であることは当然で、その精神性に深い影を落としているんでしょう。

■Randy Newman Harps and Angels 2008

ランディ・ニューマンは今ではすっかり映画音楽の巨匠みたいになってますね。もとは皮肉で自虐的な歌が受けて知られるようになったシンガーソングライターですから、ニューマンの書く歌詞はドラマ映画の挿入歌には相性が良かったんでしょう。
実際、歌手としての才能はほとんど無いと言っていいこの人、逆にそれが歌のイメージと合って人気があるんだと思います。だから英語がわからずに聞いていても、その面白さは半分も理解できてないだろうということはわかってるんですけどね、でもなかなかいいんですよ。

ニューマンのピアノと歌に、ジャズ風のバンドがバックに付いています。傾向としてはラウンジ音楽ですね。しかしニューマンの近年手がける映画音楽がこういったスタイルですっかり定着してますから、聞いていると非常に映画的なイマジネーションを喚起するという面白い効果があります。
ムード音楽としてのアメリカン・スタンダード・ソングには今もなじめない私ですが、このタイプのジャズはなかなか興味深く聞くことができます。いわゆるルーツミュージックのひとつですね。これもまた洒落た、味わい深いアルバムでした。

■The Clash Live at Shea Stadium 2008

1982年の発掘ライヴです。クラッシュは本国イギリス以上にアメリカで人気が高まり、その絶頂のころのライヴです。ただしトッパー・ヒードンが抜けてしまった直後で新ドラマーが叩いてます。
かのシェイスタジアムでのコンサートです。そこまで人気があったのかというと実はワンマンではなくフーの前座です(笑)。ブックレットに載っているバックステージの写真を見ると、デイヴィッド・ヨハンセンの次にクラッシュ、最後にフーというプログラムだったようです。

クラッシュはグループ存続時にはライヴ盤は出してませんが、1999年に「From Here to Eternity」というライヴコンピレーションが出てます。ひとつのコンサートをダイジェストしたライヴ盤はこのシェイスタジアムが初めてですね。ほんとは77~78年くらいのパンク真っ只中のころのクラブでのライヴを聞きたいものですが、下手すぎて一枚にまとめるのは無理だったのかもしれません(笑)。

その代わり82年なら「Sandinista」の後ですから、レゲエやダブなど音楽性が爆発的に拡張した姿を聞くことができます。曲目はグレイテストヒッツ集で、「Career Opportunities」から「London Calling」、「Armagideon Time」など彼らのエッセンスはすべて入っています。
演奏は勢いがあっていいですね。ライヴ盤を出すことを前提とした録音じゃないでしょうから、オーヴァーダビングがないとすれば彼らもけっこう上手いバンドだったってことですね。ただサウンドの処理のしかたが、スタジアムの雰囲気を出すためにかなり深めのエコーをかけてありますから、なんだかバンドのイメージと合ってない感じがするところが残念です。ラストは「I Fought the Law」でシメます。

■Eddie and the Hot Rods Life on the Line 1977

パブロックのバンドのこれはセカンドですが、当時はパンクバンドとして売りだしていて、サウンドもちょっとパンクぽくしてありました。ファーストはそれこそパンクの名盤として有名ですから、私も当時はそのつもりで聞きました。たしかになかなかかっこいいレコードで好きでしたけど、結局聞いたのはそれ一枚きりでした。

その後気に入りのバンドにカーサル・フライヤーズが加わり、これは三枚とも聞きました。そうすると解散後にメンバーはそれぞれ別のバンドに入ったりするんですが、ひとりはこのエディー・アンド・ザ・ホット・ロッズに加入するんですね。それがこのセカンドからで、そのことを知ってちょっと気になったので数年前にようやくセカンドを入手したという次第です。

ジャケットからして完全にパンクオリエンテッドながら、サウンドは今にして聞くともろにパブロックです。パワーポップという呼び名は私はあまり好きじゃないんですが、たしかにそんな感じです。労働者階級の週末のばか騒ぎを盛り上げてきたパブロック勢の性急なロックンロールは、まったく理屈抜きで楽しめるってものです。

一曲目の「Do Anything You Wanna Do」がヒット曲で、これがカーサル・フライヤーズから来たグレイム・ダグラスの曲です。カーサル・フライヤーズそのままのダイナミックな佳曲で、やはりこれが気に入りました。演奏もいいですし、どの曲も速いです。全体にサウンドが整理されていて、ファーストよりもこっちのほうが私好みですね。










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【先月買ったレコード・CD】

■Bob Dylan Fallen Angels 2016

シナトラのカヴァー集に続くスタンダード集です。そろそろ聞こうかなと思って棚を探すんですがどうしても見つかりません。だいぶ考えてから記録を調べたら、まだ買ってませんでした(笑)。
やはりLPも欲しいんで両方当たってみたら、今回はどちらも手ごろな値段に落ち着いていてすんなり注文できました。前々作の「Tempest」はLPがなかなか安くならなくて手こずりましたけどね。

最近のディランはデラックスエディションを出さないのが続いていて嬉しいです。ボーナストラックなど無いほうがいいんですよほんとは。もっともデラックス版を出さない代わりに「Bootleg Series」のものすごいヴォリュームのを連発してますから、結局そうとう金使わされるんですが(笑)。

■Rolling Stones Totally Stripped 2016

1995年の少し変わったライヴ盤「Stripped」の完全版のような内容のようです。実はまだよく知らないんですけども、どうせ買うんだし(笑)。メインはビデオのほうで、CDも同梱されています。インタビューなどもあるようなのでできれば日本盤がいいけどね…と思っていたら、わりと手ごろな価格で中古が出ていたので入手できました。

「Stripped」はアンプラグドが流行っていた時期のもので、実際にはアコースティックライヴじゃないんですけど、なんとなくイメージ的にアンプラグドライヴ盤という感じなんですよ。それまでの、ヒット曲満載で幕の内弁当的なライヴとは選曲が違っていて、あまり知られていない曲を多く採りあげてあるし、そもそもスタジオ録音のトラックも混ぜてあるという、いまひとつ狙いがよくわからないアルバムではあります。似たような内容のライヴ盤をすでに何枚も出していたので、飽きられないように変化球にしてみたというのが実情でしょう。

それで、トータリーというくらいだからこのときのツアーの全貌を明らかにしつつ、なぜこのようなライヴ盤になったのか、今だから話せる真実…みたいなテレビドキュメンタリーふうになっていたらいやですが(笑)。また来日しますかねー。

■Elton John Wonderful Crazy Night 2016

実はまだ聞いてないんですけどね。これに先立ってLPのほうをすでに入手済みで、これはスーパーデラックスエディションになってます。LPとCD二枚、豪華写真集がかなり大型のボックスに入ってました。写真集やらカートンボックスなんか要らないんでLPだけ買えばいいかというと、CD2はボーナストラック集になっていて、ここにしか入っていないのが二曲あります。だからやはりこれも欲しい(笑)。まあしかたありません。

ところがそのCD2は本アルバム関連のレア音源をすべて収録…かというとそうではなく、日本盤CDには独自のボーナストラックとしてライヴ二曲が入っておりこれでしか聞くことができません。結局、スーパーデラックスエディションと日本盤CDがセットになって初めてコンプリートできるんですねー大変ですよ?
日本盤は高いんで、発売後しばらくして手ごろな値段で中古盤が出るまで様子見てたら送料込み1750円が出ました。

■Count Bishops Speedball plus 11 1995

パブロックのバンド、カウント・ビショップスの初期音源集ですね。デビュー盤が1975年の「Speedball」というEPで、これに入っていた四曲に加えてレアトラック十一曲、いずれもカヴァー曲です。

1977年のファーストアルバムの前にEPが出ていたことを知り、これが四曲ともアルバムに入ってないんでイーベイで以前買いました。この手の7インチはコレクションアイテムとしてもなかなかいい感じです。
さらにこの未発表音源入りのCDが出ていたことも最近知って、見てみたらもう叩き売りみたいになっていて(笑)、送料込み1020円でした。

■Johnny Winter Step Back 2014
■Johnny Winter Live Bootleg Series Vol. 11 2014

このところジョニー・ウィンターづいてるんですけど。「Step Back」は最後のオリジナルアルバムで、生前レコーディングを完了していたものだとか。全編クラシックブルーズ名曲のカヴァーのようです。
「Live Bootleg Series」は依然Vol. 8と9が抜けたままですが、Vol. 11が五百円くらいで出たのでいただきです。

ただこれアマゾンのマーケットプレイスの海外出品者なんですが、新品なら問題無いですけど中古盤なんですね。欧米の中古盤のコンディションというのは要注意で、状態の説明では「良い」となっているのが、届いてみると「これが “良い”!?」となることがたまにあるわけですね(笑)。まあー日本における中古盤グレーディングとはワンランク落として見当つけたほうがいいみたいです。
それで届いてみるとケースを新品と取り換えてあるようで「たいへん良い」レベルでした。やはり向こうも日本のレコードCDファンは手ごわいということを最近ではよく知ってますから、下手なものは送ってこないようにしてるのかもしれません。


【先月買ったレコード・CD】

■Frank Zappa Carnegie Hall 2011

ザパの死後オフィシャルリリースもののうち、のんびりしているうちに売り切れになってしまったものが何枚かありました。その後アマゾンのマーケットプレイスで入手できたものもありましたが、このカーネギーホールのライヴだけなかなか買えませんでした。マーケットプレイスにも出てはいるんですがなにしろ高いんですよ。四枚組のボリュームとはいえ通常売価が一万円以上、海外出品者の最安値でも八千円台がずっと維持されていてとても手が出ません。

それでも虎視眈々と価格チェックを続けていたところ、先日新規で中古盤の入荷品が四千円で出ましたので速攻ワンクリックです。これでようやく歯抜けがなくなりました。面白いことに出品者はローチケHMV。紀伊國屋の催事で丸善が出店するようなものでしょうか。でもどこでもいいです。ありがとうHMV!

■Marc Bolan Twopennie Prince 2010

Tレックス/マーク・ボランはレアトラックものが山ほど発売されてるんですが、前に出ていた音源を編集し直しただけというものも少なくなくて注意を要します。
その中ではイージー・アクションというイギリスのリイシューレーベルは、詐欺まがいの売りかたとは一線を画した、本当のファンのためのCDを出しています。だいたい会社名からしてTレックス好きが高じてレーベルを作ったというのが明らかです。

2009年にイージー・アクションのメールオーダーで各種まとめて買ったんですが、その直後にこれが出て、あちゃーと思いましたが後の祭り。その後しばらくしたらアマゾンでも扱い始めたのでウォントリストに入れてました。安く出たときに買おうと思いながらもう何年も経ちましたけど、ようやく先日千円くらいの中古盤が出ました。

■Ronnie Lane Band Live at Rockpalast 1980 2013

ここ数年でロックパラスト名義のライヴ音源が多数出ていることについ最近気づきました。シリーズで発売されてますが大物はあまりいなくて中堅どころばかりです。これは聞きたいというアーティストをリストアップすると、ミンク・デヴィル、プリティ・シングズ、ロックパイル、デイヴ・エドマンズ、そしてロニー・レインが私の守備範囲です。
千円くらいになったら買おうと思ってチェックしてますが意外と相場は二千円近くしていて、長期戦になりそうです。このうちロニー・レイン・バンドの1980年のライヴがちょっと安くなったんで手始めに購入してみました。

そもそもロックパラストというのがなにかよく知らなくて、コンサートホールの名前かと思っていたら、ドイツの音楽テレビ番組でした。スタジオライヴもあるのかもしれませんが、コンサート会場での録画が多いようです。
ドイツの音楽番組のビデオといえば、分断ドイツ時代に制作されていた「ビートクラブ」を思い出しますね。VHSで十何本発売されていて、時代を感じさせる映像イフェクト処理が微笑ましいんですが出演者はそうそうたる顔ぶれでロックファン必見でした。

それでロックパラストのライヴは昔から出ていたものもあるのかもしれませんが、とにかくオフィシャルぽい仕様でシリーズ構成され始めたのはこの五~六年くらいのはずです。ビデオとCDが別々に発売されており、私としては音が聞ければいいかなという感じなのでいずれもCDで買うつもりしてます。

■コッキー・フレッシュ 1975

ヤマハのポピュラーソングコンテスト関連盤です。スポンサードラジオ番組の「
コッキーポップ」で採りあげられた人気曲を集めたという編集盤で、中島みゆきや小坂恭子、八神純子にNSPあたりが後に有名になる人たちですね。

これに渡辺真知子のデビュー前の音源が入ってます。当初はPIAというグループでコンテストに出て、このアルバムに入っている「オルゴールの恋唄」が特別賞(グランプリではない)を受賞してます。
まだ聞いてないんですが「オルゴールの恋唄」がスタジオ録音なので、たぶん他のもライヴではないだろうと思います。

関連盤としてはこれとあと一枚、第十一回大会のライヴ盤にも渡辺真知子の歌が一曲入ってるんですね。ただしこれはオリジナル曲ではなく、アマチュアの応募曲をステージで演奏するときのシンガーとして起用されたものです。
いずれもCDボックス「Machiko Premium」のレア音源集に入ってますけど、やはりオリジナル盤も押さえておこうと。500円なら文句ありません。

■Deep Purple Shades of Deep Purple 1968
■Deep Purple The Book of Taliesyn 1968

ディープ・パープルのファーストとセカンドです。もともと持ってなかったんですが、最近mp3で音だけ聞いてみたらなかなか良かったんで、レコードで持っておきたいなということになりまして。
セカンドの「詩人タリエシン」のほうはヤフーオークションで日本盤を安く買えました。しかしファーストのほうは、結局アマゾンでEU盤の最近のリイシューものにしました。というのも、ファーストは日本ではアメリカ盤のジャケットで出てたんですよ。デザイン違うんですね。少々いただけないアレンジがしてあるんでこれはイヤです。

そこでオリジナルのイギリス盤はどうだろうかとオークションを見たらやっぱりかなり高い。こちらもディープ・パープルにそこまで投資する気はありません(笑)。そこで次の手はというとリイシューLPで、調べてみると最近のアナログ盤人気でちゃんと出てるんですね。値段も普通ですからけっこうです。アマゾンで送料込み2600円でした。届いてみたらさすがに新品なんできれい過ぎるほどです。フロント面はコーティング仕様になってたんで感心しました。これパーロフォンだったんですね。

最初期のディープ・パープルは「ハッシュ」というヒット曲があるとはいえ、あまり聞いたことの無い人が多いんじゃないでしょうか。いわゆる黄金期とはシンガーが違っていて、音を聞いてもほとんど別のグループです。でも、ちゃんと聞いてみるとこれはこれでいいというか、むしろこっちのほうが好きだという人も多いだろうなという感じです。つまりハードロックじゃないんですよ初期は。
わりと抒情的な、サイケデリッククラシカルエレガンスみたいな感じと言ったらいいでしょうか(笑)。おそらくオルガンのジョン・ロードが主導権を持っており、リッチー・ブラックモアははりきって弾けば弾くほど浮いてしまっているという、なかなか面白いところも話のタネになります。ちょっとお薦めですよ。



160925

【今月聞いたレコード・CD】

■Cream Royal Albert Hall London May 2-3-5-6 2005

2005年の再結成ライヴで二枚組です。三人とも揃ってます。ロンドンとニューヨークだけでやったそうで、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールの録音がCD化されました。しかし当時からジャック・ブルースとジンジャー・ベイカーはものすごく仲が悪かったらしいですから、それがまた一緒にやったというのはちょっと驚きました。ひょっとするとブルースがあまり先が無いことがわかって、もう一度だけやってみようという気になったのかもしれません。

演奏はやはり当時と比べるべくもありませんが、もとより最盛期の緊張感を再現しようという試みではないでしょうから、それぞれのキャリアを経た円熟味をこの三人で合わせてみようという「同窓会」でいいんじゃないかと思います。
それで一曲目からすでに、ユル~い感じで始まる「I'm So Glad」です。「Goodbye Cream」のこの曲のライヴはすごかったですけどね。始めは少々肩透かしですが、全体にはなかなか力のこもったプレイで聞きどころも多くあります。

なんといっても当時と違うのは、クラプトンがクリーム以後にシンガーとして大きく成長し実績を積んできている点です。本来クリームはブルースがシンガーで、クラプトンはコーラスを付けてときどきリードヴォーカルもとるという編成でしたから、そこが言うなればニュー・クリームです。
ギターは当然ながら現在も超一流のままですから、歌とギターの両方でアピールして三人の中でひときわ存在感を増した演奏ぶりになってますね。ヴォーカルの実力はやはりブルーズ曲のカヴァーで発揮されます。「Crossroads」やってますね。「Stormy Monday」が珍しいですけど、当時もライヴでは演奏してたんでしょうか。

ブルースもベース・ヴォーカル・ハーモニカで当時のように大活躍です。ベース
の音がわりと普通の低音に録ってあるので、よく聞かないと超絶技巧フレーズがわかりにくいところは残念です。当時はブルースはかなりトレブルをきかせた固い音にしてギターと互角のサウンドで張り合っていたものです。六弦ベースも使っていましたが、今の五弦六弦ベースとは違ってフェンダーVIはギターに近いもので、そういうところもクラプトンに対してライヴァル意識丸出しだったんですね。

ベイカーはわりと地味なプレイぶりです。でもやはり「Toad」をやるんですね。ドラムソロ曲ですけど、昔のハードロックはお決まりのように長いドラムソロをコンサートのセットリストに加えてましたが、今から思うともう冗長としか言いようのないものですね。しかしそうはいってもベイカーくらいの達人ともなるとドラムソロをやらないと観客も黙っていないでしょう。
それでこの2005年の「Toad」ですが、タム類を中心に組み立てたゆったりとした余裕あるソロになっており、クリーム以降にアフリカンリズムに傾倒するベイカーの嗜好が表れたプリミティヴなプレイがいいんですね。これが本作の大きな聞きどころのひとつになっているというのは意外でした。

ビデオで見るとまた違った印象になるかもしれません。DVD付きのデラックスエディションが発売されていればそれを買ったんですけど、別商品として出てるんですね。そのうちユーチューブででも(笑)。

■John Cale The Academy in Peril 1972

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのオリジナルメンバーですがセカンドまでで脱退しています。私はルー・リードのほうはずっと追っかけてましたけどもジョン・ケイルにはさして興味が無かったんですね。きっとヴェルヴェット・アンダーグラウンドにおけるアヴァンギャルド部門担当の人だろうと思っていたし、ソロ作もそれほど傑作と言われるものがありませんでしたから。
しかし中では有名な「Paris 1919」(1973)を聞くとポップなロックで、おーこれはいいと思いましたがそれっきりで。その後1990年にリードとの共作「Songs for Drella」でウォーホルを追悼するわけですが、これが素晴らしいアルバムになっていて、ケイルもちゃんと聞いてみないといかんなあと思ってました。

で最近1970年のファーストソロから聞き始めてこれでまだ三枚目です。ファースト「Vintage Violence」はロックでこれは良かったです。でも続く「Church of Anthrax」(1971)はテリー・ライリーという現代音楽家との共作で、完全に現代音楽でした。だから次のこのアルバムはもっとましなものなんじゃないかと期待したいところで、実際一曲目なんかはドブロのスライドでちょっといかす出だしです。しかしまあ、これが今度も現代音楽中心で、管弦楽とピアノによる演奏は三回聞いたらもういいやと早期終了しました(笑)。

実はこのLPはだいぶ前に買っていたもので、理由はジャケットデザインをウォーホルが手がけているからです。スライドフィルムのマウントが25枚並んでいて写真の部分をくり抜いてある特殊ジャケットです。当時もたしか一~二回聞いて棚にしまったと思います(笑)。

■Hound Dog Taylor and the Houserockers 1971

六本指のブルーズシンガー、ハウンド・ドッグ・テイラーです。ちゃんと聞くのはこれが初めてです。71年の時点で56歳ですからまだまだ現役バリバリのころのレコーディングですね。いわゆる再発見ブルーズメンたちよりは若い世代ですから、戦前ブルーズなどに比べると良好な録音のものが多いと思います。私もブルーズはあまりよく知らないので、この辺の概要はわりと当てずっぽうですけども。

ハウスロッカーズという自分のバンドを持っていて、そのデビューアルバムというわけですね。テイラーのギター・ヴォーカルと、あとはギターとドラムズの三人編成でベースレスです。そういうところ、けっこう荒っぽいというかテキトーというか。でもそれでいいんですよ大衆音楽ですから。こんなふうにパワーがありさえすれば上等です。

実際、その演奏ぶりはまったく粗削りといえるもので、おそらく一発録りでしょう。テイラーのエルモア・ジェイムズ・スタイルのスライドと、相当な黒人訛りの歌。ギターは日本製らしいです。
私はギターの上手い下手が今いちよくわからないんですけども、その私から見てもテイラーはとても上手いプレイヤーとは言えないだろうと思います。しかしテクニックじゃないよフィーリングだよとでも言っているようなジャケット写真、音はチープでもホットなプレイだろう? と語りかけてくるような、親しみのあるアルバムです。

ベースレスのトリオでも、セカンドギターは低音弦でベースラインを弾いていてアンサンブルはちゃんとできています。ギターでもウォーキングベースできるんですね。それで必要なときはさっとコード弾きにチェンジするなど、臨機応変にバッキングしていけるところはギター二本プラスドラムスという編成もなかなかいいなあなどと思いながら聞いてました。ホワイト・ストライプスがそんな感じを狙ったんでしょうね。

■Creedence Clearwater Revival Mardi Gras 1972

実はクリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルはぜんぜん好きじゃないんですよ。なぜかはよくわからないんですが、ひとつにはジョン・フォガティの暑苦しい歌ですね。(笑)。
これまで持っていたLPは「Green River」と「Cosmo's Factory」、あとはベストもの「Creedence Gold」の第一集と二集の四枚です。これだけあれば完璧だろ? と思ってましたけど、やっぱりひととおり聞いておくか…とオークションのセット買いで揃えました。

それで今回、スタジオアルバムとしては最終作となる「マルディ・グラ」です。やはりここまでは、どのアルバムも今ひとつ乗れなかったわけですけど、今回のは意外と気に入りました。というのも、私としてはネックになっていたジョン・フォガティのヴォーカルが少ないんですよ(笑)。初めて他のメンバーにも歌わせてみたという企画で、他の二人が三曲ずつ、フォガティが四曲というバランスです。それでも他の二人の歌がぜんぜんダメというのでは困りますが、意外とイケるんで嬉しいですね。でも出たときは売り上げ不振だったんだそうです。

残るは解散直後に出た「Live in Europe」と、だいぶ経って1980年に唐突に発売された一枚ものの「The Concert」でいずれもライヴ盤ですね。彼らのコンサートは大人気のころでも一時間で終わっていたそうですから、今のようにダラダラ何時間もやるのよりはずっといいです。

■Jeff Lynne Long Wave 2012

エレクトリック・ライト・オーケストラの、と今でも念を押したほうがいいんですかね。ソロ作はほとんど出してなくてこれで二枚目。だいたい2001年になって久方ぶりで出したELOのアルバムが実質的にリンのソロプロジェクトですから、グループとソロで名義を分ける意味がどれだけあるのか。そういったマルチタレントは他にも何人か思い浮かびますけど、、なんでもできる人は自問自答するところなんでしょうね。

で、どういう風の吹き回しか1990年の「Armchair Theatre」に続くソロ作を出したと思ったらこれが企画もので全曲カヴァーです。いずれも二分程度の短い曲ばかりで、12曲で30分もありません。いいですね。短いのはいいです。
でも内容がちょっとアレで、スタンダード曲集なんですねー私はこの手は苦手なんですよ退屈で。私も知っている曲ではコステロもやっていた「She」「Smile」、エタ・ジェイムズの「At Last」、それから「慕情」の主題歌「Love Is a Many Splendored Thing」あたりですね。
リズム&ブルーズの「Mercy Mercy」「Let It Rock」もやってるんですがそれはあくまでもアクセントであり、子供時代に家族で聞いていたラジオを再現するという懐古趣味に彩られたアルバムです。

この二十年くらいは、ロックアーティストがスタンダード集を出すのがある意味でステイタスのような風潮になってますね。それ以前はロックとは対極にある、忌むべき体制音楽であるかのような位置づけだったわけですが。リンゴ・スターがビートルズ解散後にすぐ出したファーストソロがスタンダード集で、これはもう徹底的にコケにされました。なんというか早すぎたといいますか、まあ本人は何も考えずにやりたいことを気軽にやっただけなんでしょうけども(笑)。
ディランもシナトラ集を出すし、この年代の人はほんとはジャズスタンダードが大好きみたいですね。誰にも文句を付けられないような大物になったらやりたくなってくるのがスタンダード集なんでしょうねー困ったことに(笑)。





【今月聞いたレコード・CD】

■加山雄三のすべて~ザ・ランチャーズとともに 1966

さっそく聞いてみました加山雄三。まずファーストですね。「君といつまでも」などの歌謡曲とグループサウンズ歌もの、それにギターインストゥルメンタルが代わり番こに並ぶ構成になってます。その落差が激しくて、歌入りの歌謡曲のほうはムード歌謡そのもののポピュラーソングですが、これがエレキインストになるとガラリと趣向が変わってモロにガレージロックンロール。それもかなりハードなサウンドでグイグイくるような演奏で、そのスピードと爽快感はなかなかのものです。ヴェンチャーズでもここまでヘヴィなサウンドはあまりやってないはずです。

それからひとつ重要なことに気づいたんですが、実は恥ずかしながらぜんぜん知らなかったんですけども全曲加山の作曲なんですね。つまり「君といつまでも」も同様で、すべて弾厚作というペンネームで書いているのでわかりませんでした。
デビューのときからシンガーソングライターであり、大ヒット曲の作曲者でもあったということですね。しかもギター奏者としては先進的な分野を開拓したパイオニアのひとりだったわけです。今日から認識を新たにしなければなりません。

そのパイオニアとしてのギタープレイヤーの他方が言うまでもなく寺内タケシですが、このアルバムでもバッキングを務めています。アルバム副題からするとランチャーズとの完全共演のように見えますけども、伴奏者のクレジットは「加山雄三とザ・ランチャーズ」「寺内タケシとブルージーンズ」「東芝レコーディングオーケストラ」の三者となっています。わかりやすいですね(笑)。
ブルージーンズのバックとなる曲は歌ものばかり三曲あります。こちらもハードなサウンドを期待したいところだったんですがわりと無難なGSナンバーでしかありません。

やはり特筆すべきがランチャーズとの共演曲です。五曲あって一曲だけ歌入りです。四曲あるインストゥルメンタルはいずれも重戦車のようなヘヴィなリードギターがグリグリとねじ込んできます。これは加山が弾いているんでしょうか。もしそうだとしたらすごいとしか言いようがありません。ジャケットには「The Launchers Lead 加山雄三」というサインが印刷されていますが、「Lead」というのが単にグループを率いているという意味なのかリードギターが加山だという意味か。もう一曲の歌ものがまた抜群で、バディ・ホリーとクリケッツを思わせるしゃれたロックンロールなんですよ。
ランチャーズの全面バックアップとなるセカンドアルバムも入手済みですので、次に聞く楽しみが大きく膨らんでおります。

■生田敬太郎+マックス この暗い時期にも 1972

エレックが吉田拓郎・泉谷しげる・古井戸・佐藤公彦の次に売り出したシンガーです。フォークというよりはかなりロック色の強いアルバムになってますね。しかし先の四者に比べるとまったく知名度が無いのはどういうわけか、その理由はさまざまでしょうけど、このファーストを聞く限りではちょっと物足りないという感じを受けます。

生田を称してソウルシンガーという向きもあるようで、たしかに独特の声を持っており異彩を放っています。声の質はいいと思うんですが、ただあまり上手くないんですね。上手くなくても味のある歌いかたかというとその域に達しているとも言えません。
聞いていてもうひとつ耳に心地よくない理由に、歌詞のまずさが挙げられます。生田が好んで選んでいる表現のしかたは、わざと固い語句や拙い言い回しをはさんで少し変わったニュアンスを出すというものです。アルバムタイトルにもそれが表れていますね。

ラストで出てくるそのタイトル曲はザ・バンドの「The Weight」の替え歌なんですが、最後は「人生は甘いものにせよ苦いものにせよ 好ましいものとして役立てよう」というフレーズが「Hey Jude」のように延々と繰り返され大団円を迎えるんですね。なんとも語呂の悪いリリックで少々耳に障ります。言っていることはもっともだとは思いますがリフレインに入るともう三回目で飽きてしまいます(笑)。

さらに、曲の出来自体も魅力のあるメロディに欠けており、やはりただ単に渋いというだけではなかなか。
ただバックはいい演奏してます。マックスは吉田拓郎のバッキングを務めたこともあり、新人バンドらしからぬ達者なプレイを披露します。おそらくジャズも好んで演奏すると思わせるところがあって、ロックンロールとは少し違った感覚ですね。バンドとしてはこの後は大成してませんけども、記憶に残る仕事は残したという感じです。

■唄の市・第一集 1972

これもエレックのLPで、同社が専属アーティストを何組かずつ抱き合わせにして各地で開催したパッケージショウのライヴ録音です。レコードとしてはこの第一集と日比谷野音の二枚組があって、後者のほうが有名です。
私もその「野音唄の市」のほうだけ持っていたんですが、どうせなら両方聞き比べるかと最近第一集のほうも購入しました。相場も高くなくてオークションで500円くらいで入手できました。

その中古価格相場はやはり内容に見合ったところといいますか(笑)、まあそれほど聞きどころはありません。フォークだけでなく、カントリーバンドやシャンソン歌手みたいなのまで出ていて雑多な印象です。無名グループはいずれも素人に毛の生えた程度、もしくはど素人そのままです。

目ぼしいところというと古井戸と、なぜかエレックのイベントに出ている六文銭ですね。六文銭は「街と飛行船」を収録しています。これは現代詩に小室等が曲を付けたものでいわゆる放送禁止歌なんですが、このライヴ盤には無修正の歌詞のまま歌われています。エレックは大手レーベルではないので自主規制の枠から外れており発売できたんですね。
問題の箇所は「リュウマチも小児麻痺も曲がった添木にリボンで飾りをつけて走ろう」というところで、おおースゲェという感じです(笑)。この部分だけ取り出して読むと不謹慎な気もしますけど、これは祝祭歌ですべての民は街に出て笑い歌い踊って祝おうと歌っていますから、むしろ差別とは逆の人間賛歌的なファンタシーなんですよね。

古井戸は「花言葉」と「大雪のあとで」というあまり知られていない曲をメドレーで演奏しています。この二曲の間に仲井戸麗市の詩の朗読が挿入されます。「ぽえじー」(1973)に入っている「讃美歌」同様、この時期からポエトリーリーディングに取り組んでいたんですね。若いというにはあまりに初々しいその声はまるで別人のように聞こえます。
泉谷しげるだけ三曲入れてあって、この時期大人気だったことがわかります。でも演奏はムチャクチャです。ただこの人、曲間の語りでお人よしの小心者だというところをポロリと見せるところがケッサクなんですよね。

■Johnny Winter John Dawson Winter III 1974

ジョニー・ウィンターも持っていなかったアルバムを補充して最初から聞き直しているところです。このアルバムは八枚目にあたるものですね。これは三十年以上前にすでに持っていたもので、その理由は一曲目の「Rock and Roll People」を聞くためでした。この曲はジョン・レノン作ですが本人は生前にはレコード発売してないんですね。

でも曲自体はやはり今ひとつです(笑)。いい曲なら本人がレコードにするに決まっているわけで、お蔵入り作には違いありません。しかしウィンターがものすごいギターでノリノリで演奏すると、えらくかっこいいわけですよ。レノンの録音は死後に出た未発表曲集「Menlove Ave.」に入ってますが、やはり仕上げてない録音ですから未消化でぜんぜんダメです。
私は若い頃にロックのミニコミ誌もどきを何号か作ったことがあって、その誌名はこの曲の一節から採ったんですね。ちょっと懐かしいです。

そういうわけで久方ぶりで聞いたこのアルバムですが、内容はロックに徹していてはつらつとしたパフォーマンスです。人気もおそらくこのころが最高潮でバンドも勢いがあります。もっとも本人はあくまでもブルーズを演奏したかったみたいですが、レコードを売るためにはロックをやらざるを得ないという状況だったみたいですね。もちろんいやいややってたというわけではないでしょうが、やはり本当はファーストのような純ブルーズをやりたい、というわけでこの後1977年の「Nothin' but the Blues」でブルーズ回帰となっていきます。

■Moody Blues Days of Future Passed 1967

近年はプログレも毛嫌いせずにできるだけ聞いてみようじゃないかという姿勢に転じた私ですが、なかなか進んでいません(笑)。プログレッシヴに行こうとは思ってるんですけどね…。

ムーディ・ブルーズにはほとんど興味を持てず、レコードも一枚しか持ってませんでした。それがこの最も有名なアルバムでグループのセカンドにあたります。あまりにも有名なので、どらどらと若い頃に聞いてみたわけですけど、たぶん何回か聞いてこりゃだめだと棚にしまい込んだと思います。その気持ち、よくわかります我ながら(笑)。
しかし今改めてよく聞き込んでみると、意外といいアルバムであることにようやく気付きました。そのためには、イモなレコードであっても大きな心で一度受け入れてみようという大乗的な気持ちが大切です。この境地に至るまで三十年ほどを要しましたが(笑)。

全体をある人の一日になぞらえた組曲構成になっていて、夜明けの「The Day Begins」に始まり最後は夜、大ヒット曲の「Night in White Satin」(サテンの夜)で終わるまでが壮大なオーケストレーションで彩られます。
つい最近になって、このアルバムがそもそもどうやって制作されたのかという話を音楽雑誌で読んで、ああそれでファーストの完全リズム&ブルーズ路線から転換したんだなという事情が飲みこめました。これはイギリスのデッカが最新のオーディオテクノロジーであるステレオ録音のデモンストレーション用になにか一枚LPを作ろうということになり、オーケストラとロックバンドの共演というアイデアが持ち上がったらしいんですね。そこでたまたま声がかかったのがムーディ・ブルーズだったというわけです。

当初はドヴォルザークの「新世界」を採りあげることで話が進んでいくうち、バンド側から自分たちのオリジナル曲でやりたいという希望が出て、それを気に入った指揮者がじゃそれでいこうということになったんだとか。
しかし企画自体はいいんですが、それをある一日=人の一生に例えての組曲展開というのはまたいかにも大仰で、明らかに同じ年のビートルズの「A Day in the Life」にヒントを得たものとはいえ、ちょっと壮大すぎやしませんか?(笑)

しかし、よく聞いてみるとオーケストラはきちんと分をわきまえた演奏ぶりで、バンドはそれに対してがんばってます。メロトロンがやはりいいんですね。メンバー全員が歌えるようでそれぞれが曲を持ち寄っています。なんかリードシンガーのジャスティン・ヘイワードよりほかのメンバーのほうが歌が上手いように思えるんですが気のせいでしょうか。曲は意外とバラエティに富んでおり、ロックンロールありサイケデリック風ありインド調ありで。

なかなか好感の持てるアルバムであることがわかりましたので、次回作も聞いてみます。ちょっと楽しみです。








160904

【先月買ったレコード・CD】

■Frank Zappa Road Tapes, Venue #2 2013
■Frank Zappa Road Tapes, Venue #3 2016
■Frank Zappa The Crux of the Biscuit 2016
■Frank Zappa for President 2016

ザパの死後オフィシャルリリースの新作です。続々と出続けています。生前のアルバムが全部リマスターで再発売された際に、ファーストから順に「This Is Official Release #1」とナンバーがクレジットされるようになり、その数は百を超えました。生前のラストアルバムは「#64」ですから、その後未発表曲集やライヴなどいろいろな音源が三十枚以上出たわけですね。

それで本命とされていたロクシーのライヴのフィルム修復を無事終え、ビデオディスクとCDが出て#100で打ち止めになるかと思いきや、まだいくらでもあるよと言わんばかりに発売が止まりません。もとはオフィシャルサイトでの通信販売でしか買うことができなかったんですが、最近は販路を広げて通常ルートに卸し始めたようでアマゾンでも注文できます。前はアメリカからの送料を節約するために十枚くらい発売されてからまとめてオーダーしていたんですけど、そうしてインターバルを開けている間に完売してしまった限定盤が出てしまい、何枚か入手し損ねました(笑)。

ライヴの「Road Tapes」は三枚シリーズとなりました。第二集の「Venue #2」はオフィシャルナンバー96、「Venue #3」が102ですね。ところがなんの間違いか続く「The Crux of the Biscuit」のジャケットにも「#102」と書かれていて、102番が二枚あります(笑)。最新盤の「For President」が#103です。

■Dave Edmunds On Guitar Rags & Classics 2015

デイヴ・エドマンズはここ二十年くらいはメジャーレーベルとは契約できずに小さなところから細々と新作を出している状況でした。リオン・ラッセルみたいな境遇ですけども、ラッセルは自分の通販専門レーベルからかなりの数のCDを発売してますからね、それと比べてもエドマンズファンとしては実に淋しいところでした。
もともと大ヒットとはあまり縁の無い人だし、自分のやりたい音楽を好きなようにやっていくという感じでしたから、まあそれもしかたないかと思ってました。

2005年の「Alive & Pickin'」にいたってはなんとCD-Rで、ジャケットも明らかにPCのプリンター出力です(笑)。そんないかにも安っぽいしつらえの、しかもラジカセで録音したような音質のライヴですからもうほとんど海賊盤です。
ところが聞いてみるとこのライヴ、なかなかいいんですね。地元のクラブで行われたソロコンサートで、完全に一人で弾き語りといういよいよもって低予算の仕事なんですが味わい深い演奏でギターも相変わらず上手い。あーやっぱりエドマンズいいわーと思いました。

その後2013年に久しぶりのアルバム「...Again」を出して健在を示しました。これは実はまだ聞いてなくて、来月ごろ聞く予定のCD棚に移動さして待機状態です(笑)。で、早くもその次回作が出ていることを知り、安かったんでさっそく購入しました。この調子でまた復活となると嬉しいんですけども。今度のリンゴ・スターのオール・スター・バンドに参加して欲しかったです。

■Todd Rundgren Runt/The Alternate Runt 2014

1970年のファーストソロアルバムの別音源ものです。厳密にはこれラントというバンドで作ったアルバムなんですが、一般的にはファーストソロと目されています。温かい感触の独特なサウンドになっていて、内容的にはわりと並みの出来です。ただこのLPは発売当初、間違った内容というかテスト用のマスターテープのものがごくわずかな枚数プレスされそれが出回ってしまい、コレクターズアイテムとなってました。

そのLP、本物は目の玉が飛び出るような値段で取り引きされており、とても買うことなどできませんでしたので、私はしかたなくブートレグCDで持ってました。これがようやく正規盤として発売されたんですね。できればLPで出してほしかったですけど。

■Johnny Winter Live Bootleg Series Vol. 10 2013

2014年にまったく惜しいことに亡くなってしまったジョニー・ウィンター。直前に日本公演も行っていて、まあバリバリに元気とまではいえないとしても(腰が悪くて座って演奏)、さすがのギタープレイという感じでした。

「ライヴ・ブートレッグ・シリーズ」はもちろん公式アルバムで、名称のとおり発掘音源ものです。最近よくあるパターンですね。ウィンターが死んでから出始めたというわけではなく、2007年に本人所蔵のテープなどを使っており乗り気だったみたいです。それが今年になって第十三集も出ましたから、いったいどこまで続くんでしょうか。

アマゾンのマーケットプレイスで千円くらいに下がったら買うようにしていて、順番に入手しているわけではありません。Vol. 8と9も早く安くなってくれないとつながらないんですけどねー(笑)。





【先月買ったレコード・CD】

■仲井戸麗市 Poetry 2008
■麗蘭 磔磔2013盤 La La La 2014

何カ月か前に仲井戸麗市の四枚組CD「Works」(2000) を聞きました。単なるベスト編集ものではなく、代表曲をソロ・チャボバンド・麗蘭でCD一枚分ずつ新録音するというなかなか意欲的な企画です。そのCD4はポエトリーリーディング集に割り当てられてました。仲井戸麗市が以前からバンド演奏だけでなく詩の朗読もライヴ会場で行っていたことは知ってました。そのライヴ音源集というわけです。

前から知ってはいましたが、詩の朗読というもの自体にあまり興味がわかないし、わざわざCDで聞いてもなあ…と思って「Poetry」は無視してたんですよ。通販のみのCDだったし。
ところが「Works」のCD4を聞いてその考えが一変しました。ただマイクに向かって詩を読み上げるだけのものではなく、バンドによるインストゥルメンタル演奏に乗せてのモノローグという感じです。かなり私的な内容が多くて、自身がいかにしてロック中毒になっていったか、その十代のころの興味深いストーリーなどが語られます。ただのインタビューなどとはぜんぜん違うリアリティがあります。

オフィシャルサイトではファン向けにネットショップ限定のCDをいろいろ発売しているんですけども、最近はこれらがアマゾンでも買えるようになってきました。やはり送料が安いのはいいことで、価格も変動しますから手ごろなところになったら買うようにしてます。それでにわかに購入候補となった「Poetry」、しばらく見ていたら1650円で出した店があります。送料込みでちょうど2000円。いいですね。

届いてみたら、なんのことはないポエトリー・リーディングはワントラックのみで、あとは新曲やインストゥルメンタルなどで構成したミニアルバムでした。タイトルだけ見ての早とちりで判断するのはいけませんねまったく。

もう一枚、これももとは通販専用のライヴシリーズで麗蘭の年の瀬ライヴを毎年CD化していく企画もので、2005年から始まってます。これはマーケットプレイスではなかなか値段が下がらないんですけど、珍しくオークションに出て安く買うことができました。

■ソウル・フラワー・ユニオン ワタツミ・ヤマツミ 1994
■ソウル・フラワー・モノノケ・サミット アジール・チンドン 1995
■ソウル・フラワー・ユニオン ウィンズ・フェアグラウンド 1999
■ソウル・フラワー・ユニオン ラヴ・プラスマイナス・ゼロ 2002
■ソウル・フラワー・ユニオン シャローム・サラーム 2003

先月聞いた「エレクトロ・アジール・バップ」がなかなか良かったので、ひととおり聞いてみようと思ってました。ソウル・フラワー・ユニオンになるともう全部CDですから、中古でそれほど高くないだろうとマーケットプレイスを見てみたら思いのほか安い価格が付いていたのでイッキに買い込んでしまいました。それぞれ二百円台三百円台ですよ? 送料込みでも一枚平均620円程度になりました。
でもニューエスト・モデル時代はLPですからね、まだ持っていない「ソウル・サヴァイヴァー」は今は高いんですよ。しばらく探し続けます。

■中川五郎 また恋をしてしまったぼく

中川五郎は寡作の人で、1969年の六文銭とのカップリングLP以来、69年・76年・78年にそれぞれフルアルバムを出してからはレコードはぱたっと止まります(ライヴ活動はずっとしているようです)。その後2000年代になって二枚のCDを久しぶりに出しますが、長らく70年代の3.5枚のLPがアルバムディスコグラフィのすべてだったんですね。

私としては六文銭のほうを聞きたくて入手した「六文銭/中川五郎」はそれぞれ片面ずつを分け合う変則的なアルバムで、URCの会員制時代のレコードです。六文銭はもちろんいいですが、初めて聞いた中川五郎は特異な感覚でそれほど気に入ったということにはなりませんでした。メッセージは青臭いし歌も下手だしで。それで中川のレコードはこれともう一枚、76年の「25年目のおっぱい」が一般的に評価の高いアルバムということで手に入れてました。

しかし最近になってもう少し初期のフォークを聞き込んでみようということになり、ファーストの「終わりはじまる」も買って先月聞きましたから、そうなるとLPとしてはあと一枚しかない「また恋をしてしまったぼく」だけ切り捨てるというのもなにか片手落ちな感じが残ります(笑)。もうこうなると買うしかないってやつです。




160828

【今月聞いたレコード・CD】

Nina Simone Anthology

唯一無二のシンガーとして知られるニーナ・シモーン、しかしジャズヴォーカルということで、これまで聞いてみようというところまではありませんでした。
少し前にフォークウェイズの五枚組CDコレクション「The Best of Broadside 1962-1988」というのを聞いて、デビュー直前のディランのデモ録音が数曲収められておりそれが目当てだったんですけども、他にも有名無名のアーティストの演奏をたくさん聞くことができて60年代初めのフォークリヴァイヴァルの優れたドキュメントとしてもたいへん興味深い内容でした。

その中に一曲、シモーンの「Mississippi Goddam」が入っていて、これがなかなかいかしていたので、ちょっと聞いてみるかという気になりました。まあベストものひとつあればいいかなというところです。それでシモーンのディスコグラフィを調べてみると、実に多くのコンピレーションが出ていてどれがいいのか見当がつきません。そこでシングル曲のデータと詳細に照らし合わせて検討した結果、2003年にRCAから出たこの編集盤がいいだろうとあたりを付けました。

シモーンはデビューした1958年以来、ベツレヘム・コルピックス・フィリップス・RCAとレーベルを移っており、それぞれの会社の録音をまとめた編集盤はいろいろ出てますが、キャリアを総括するレーベル横断的な選曲のものが無いんですね。その点、この「Anthology」はファーストシングルの「I Love You Porgy」から各時代のシングルやライヴ、さらにRCA以降の単発アルバムからも選曲されており、そのセレクトの良し悪しはわかりませんがとにかく全キャリアをCD二枚で俯瞰できるに違いありません。

初めて聞いてみたわけですが、たしかに非常に個性的なシンガーで、歌声からは意志の強さが感じられます。私はジャズヴォーカルほとんど聞いたことないんで他との比較ができませんけども、リズム&ブルーズとはやはりぜんぜん違うフィーリングですね。60年代後半の曲では時代を反映してニューソウルぽい曲も出てきますし、ディランやビートルズの曲もカヴァーしていますが、シモーンの声はソウルには向いていないように思えます。

意外だったのは「悲しき願い(Don't Let Me Be Misunderstood)」やアリサ・フランクリンが歌ったことでも知られる「To Be Young, Gifted and Black」のオリジナルがシモーンだったことです。後者は私はボブ&マーシアのレゲエ版でなじんでました。
逆にシモーンも多くの有名曲をカヴァーしています。その中で「ヘアー」の挿入歌「Ain't Got No - I Got Life」が今回最も気に入りました。元はヒッピー賛歌だというこの曲ですが、シモーンがシンプルなメッセージを力強く歌うとたちどころに黒人に向けてアイデンティティーを高らかに訴えかける見事なパフォーマンスになるんですね。


Paul Simon Live in New York City 2012

実は2006年の「Surprise」の次のアルバムを聞くつもりしていて、間違ってひとつ飛ばしてこのニューヨークのライヴを取り出してしまいました(笑)。ほんとは2011年の「So Beautiful or So What」を聞かないといけなかったんですけどね。そのため「So Beautiful~」からの四曲は初めて聞くのがこのライヴ盤でということになってしまい、おそらく来年あたり聞くことになるであろう「So Beautiful~」の予習みたいになってしまいました。

この盤は実際にはライヴDVDが主体で、これに同じ内容のオーディオCDが付いているというものです。この手はときどきある売りかたで、私としてはまずCDをよく聞きこんでから仕上げにビデオを見るというふうにしています。最近聞いたものではシンプリー・レッドの「Farewell Live in Sydney」(2011)がなかなか良かったです。公演の中で特に記憶に残った部分が、後から映像で見て「あーこういうふうだったのか」などと楽しむことができますね。

さてこのライヴ、ニューヨークのなかなかいい雰囲気の古い小劇場で行われていて、地元ということで客席も乗っています。「Glaceland」以降の特徴である、いわゆるワールドミュージック的なアプローチがさらにこなれてきている感じで、これまでのアフリカや南米各地の音楽から吸収したものやアメリカ南部のクリオール音楽、テックスメックスなどもブレンドしてあるなど、ここまでくるとなんだか正体不明の無国籍鍋料理状態です。要するにいろんな音楽のいいとこをちょこっとずつ拝借してフレイバーにしてあるわけですね。当然ニューヨークのサルサも入ってるでしょうし、さらにインド音楽のスパイスまで少しだけふりかけてあります。なかなか面白いです。

バンドはサイモン含め九人で、いずれもマルチプレイヤーばかりでいろいろな楽器が出てきます。前述のようにさまざまなテイストのミックスなんですが基本的にはやはりギター音楽であり、これに各地の特徴的なリズムと器楽をからめて非常に心地よいサウンドに仕立ててあります。ギターの人がかなり上手いですが、サイモンも随所でアコースティックギターの腕前を披露してくれます。
曲目はソロでの大ヒット曲はちゃんと押さえてありますし、一曲「The Sound of Silence」もやらないわけにもいかないという感じで。でもやはりサイモンのソロで歌っても良さが出てませんねーこれはしかたがない。他はソロアルバムからでカヴァーはありません。傑作「Glaceland」から多く採りあげてあります。クールでちょっとスノッブな感じもする好演です。


友部正人 大阪へやって来た 1972

以前たしか「にんじん」(1973)だったと思いますが聞く機会があって、あまりにも初期ディランの丸コピーという演奏スタイルに辟易しました。また、わざと無表情に歌う歌いかた語りかた、歌詞の言葉の端々からは、きっとこの人偏狭で性格の悪いおたくなんだろうなと想像させるものがあり、このシンガーへの興味を失っていました。
しかしその後いろいろなフォークのアルバムを聞いていくうちに「URCとベルウッドの初期カタログに外れ無し」という公式が私の内に出来あがってきて、そうなるとウォントリストからは外していた高田渡のセカンドや中川五郎のファーストもこの際聞いてみるかということになっていくわけですね。それでオリジナル盤は高いですからSMSの再発盤でいいやということで。

で、今回ちゃんと聞きこんでみました友部正人。URCから出したデビューアルバムです。なかなか良くて今度は気に入りました(笑)。まあ、前聞いたときに鼻についた部分もあるにはあるんですけども、ディランフォロワーともなると世界中にごまんといるわけで、そんなに気にすることもないじゃないかと考え直しました。

ほとんどが弾き語りになっていてディランのファーストを思い出させる感じですが、一曲バックアップが付いてます。これが今度はいきなりザ・バンドとの「I Shall Be Released」になってしまうので笑ってしまうんですが、その真似のしようというよりは、いかにディランのスタイルがこの時期のフォークシンガーたちに絶大な影響を与えたかということに思いをはせるべきでしょうか。

でも一曲目のタイトル曲は迫力があって聞きごたえがあります。いわゆるトラックドライヴィングソングで、印象的なリフレインとハーモニカのブロウ、緊迫した語り口のトーキングブルーズで七分間を一気に聞かせます。
ギターとハーモニカは上手いし歌にも力強さがあり、弾き語りでも聞きごたえのあるシンガーであることを再認識しました。


中川五郎 終わりはじまる 1969

これもURCの初期作で、フルアルバムとしてはファーストということになります。徹底して反戦歌ばかりを歌っていて時代性を感じさせますね。歌の内容は大東亜戦争とベトナムを題材にしてあり、60年代終わりごろといってもまだ太平洋戦争の記憶は生々しいでしょうし、ベトナムのことともなるとリアルタイムですから、切迫感は今とはぜんぜん違ったでしょう。

それにしても中川五郎はシンガーとしての力量に乏しく、せっかくのメッセージソングが貧弱に聞こえてしまうきらいがあります。そもそも声の質がひ弱すぎるし、あまりに素朴な歌いかたもあって相当にイモな雰囲気が出てしまっているところが致命的です。生真面目な人なんでしょうねー。
しかし「古いヨーロッパでは」「俺はヤマトンチュ」などは現代にも通ずるところがあり、必ずしも古臭くなってしまった歌ばかりというわけでもありません。


古い船をいま動かせるのは古い水夫じゃないだろう 1970

エレックレコーズのLP第一弾となるオムニバスアルバムです。広島フォーク村という集団の演奏集で、売りものは吉田拓郎の初録音となる「イメージの詩」が一曲目に入っているところですね。
しかしものの本によるとエレックはURCやベルウッドとはちょっと毛色が違っていて、会社の発足自体が音楽好きが音楽のために興したレーベルというのではなく、芸能プロダクションが成り行きでレコードを出したらけっこう売れちゃったというような、わりとテキトーな話です(笑)。

この「古い船をいま~」も、とにかくなんか現物を発売せにゃあというのででっち上げられたようなものらしく、そういうエピソードをあらかじめ知ったうえで聞いてみたら本当にやっつけ仕事でした(笑)。吉田拓郎以外のはどれもこれも箸にも棒にもかからないような童謡やカレッジポップスもどきばかりでうんざりです。でも当時はこれがわりと好評だったそうで、全国にいたフォーク少年少女たちはこれを聞いて自信を持ったんでしょう。




【今月聞いたレコード・CD】

ソウル・フラワー・ユニオン エレクトロ・アジール・パップ 1996

実はニューエスト・モデル時代からあまり好みのタイプではなかったので、何枚かかいつまんで聞いてきただけです。メスカリン・ドライヴのファーストはかなり気に入りましたけど。
要因としてはやはり中川敬のあくの強い歌いかたですね。音楽好きなんだろうなあと思えるところはあるんですが、なにかむさ苦しい感じがするし、理想主義の運動家的な融通の利かなさがありそうなそんなような。

その後漏れ伝わるところでは被災地慰問の演奏活動をやっていたり、新作情報を目にすると日本の伝統芸能に接近しているようだとかいった印象だけがあったわけですけども、私も最近わが国の大衆音楽にちょっと興味があったりするので、彼らがどんなアプローチをしているのか確かめてみようと思いました。

この96年のアルバムはソウル・フラワー・ユニオンとしての三枚目で、評判の良さそうなアルバムでしたのでこれを選びました。聞いてみるとこれがなかなか面白いんですね。いわゆる演歌調の節まわしで一風変わった旋律を奏でてます。
戦後の歌謡曲はジャズをベースに民謡や浪曲、邦楽の要素が加わっていき、さらにラテンなども混じって次第に「演歌」という、本当は実体の無いイメージが出来あがっていくわけですが、しかし重要なのはそういった様々な要素を取り込んでいく柔軟さで、大衆芸能の活力はそれなんですね。

中川もそれを意識しているはずで、おそらくそうとう努力していろんなジャンルのミクスチュアを試みたんだと思います。顕著なのは沖縄民謡とアイリッシュフォークの要素を一緒くたにぶち込んだところで、その勇気には敬意を表したいところです。
実際アルバムは力強いサウンドにあふれていて、頭で考えて作っただけのものという感じはなく、グループで試行錯誤して練り上げていったことがうかがえます。この成果には手応えを感じたようで、その後もこの路線を推し進めていったようです。

しかしその狙いは別として、やはりパッと聞くとかっこいいものではないわけですね。だって演歌や民謡の歌手みたいに小節を回して歌うし、バックには「あそれそれ」とか「エイヤサー」とかお囃子入ってるし。ハードロックなんだけどなんだか変てこです。じっくり聞き込むと面白さがわかってくるとしても、イメージとしてはダサい線をわざと狙ったあざとさととらえられても不思議ではありません。実際、この新しいロックンロールのフォロワーは出てないんじゃないでしょうか。少なくともいちジャンルとして認知されるところまでには至っていないと思います。

例えばアメリカでは60年代後半にバーズやフライング・ブリトー・ブラザーズが「カントリー・ロック」を創出しますが、当初カントリーなどロックの対極にあるようなイモ音楽と見なされてましたからばかにする向きもあったんですね。ところがたちまちその魅力を認識した多くのバンドやシンガーが追従してひとつのジャンルを形成しました。
実際にはカントリーミュージックも、けっこうアグレッシヴに他の音楽を取り込んで変化成長してきた歴史があり、なかにはパンクといっていいくらい過激なタイプもあるほどです。ハワイアンの楽器であるスティールギターを採り入れたり、アメリカ音楽とはまったく無関係なスイスのヨーデルを持ってきて「カントリーヨーデル」などという素っ頓狂な歌いかたを作りだしたり、カントリーも聞くときっと面白いでしょうね。

今回聞いてみてえらく気に入りましたから、これまで聞いてなかったニューエストモデルとソウル・フラワー・ユニオンのアルバムもちょっと聞いてみましょうかね。


サヌリム 第三集 1978

韓国の大御所バンドですが、かなり独特です。やはりサイケデリックロックの範疇になるでしょうね。もうファズギターが全編で響き渡りますけども(1978年に!)、なんだかばかにしたような気の抜けた感じもあって、真面目にやってるんだかふざけ半分なのかよくわからないところがあります(笑)。全五曲入りで、B面すべてを使って演奏される20分近くの曲は力のこもった熱演でサイケデリック度も高いです。曲名読めませんが。

このバンドは兄弟三人でやっていて、リズム&ブルーズのテイストはわりと希薄なところはシン・ジュンヒョンとは違っています。当てずっぽうですが主な活動の場は米軍キャンプではなかったのかもしれません。
レコードでの演奏も基本的に三人だけで録音してあるため、けっこう音はスカスカでユルいです。一曲目もハードな曲調ですが全体には軽めのロックンロールの印象で、英米の主流と比較すると十年遅れているサウンドです。日本のグループサウンズと対比したほうが適切かもしれませんけど、GSともやはりちょっと違うんですね。そのへん、当時の韓国でどういった音楽の需要があったのかがわからないのでなんとも。私としては、面白い辺境ロックとして受け入れることができました。

このレコードはだいぶ前にイーベイで買ったもので、ファーストとサードの二枚を入手しました。第一集を聞いたきり次のを忘れていて、久しぶりです。この時代の韓国のLPはまだプレスの状態のいいものが少ないという話でしたのでおっかなびっくりだったんですけど、届いたLPはどちらもまずまずでした。センターホールはちゃんと中心にありますし盤も反ってません(笑)。


エリック・クラプトン Eric Clapton's Rainbow Concert 1973 Expanded Edition 1995

ドラッグ漬けで隠遁生活をしていたクラプトンを再起させようとピート・タウンジェンドが旗を振って企画されたリハビリ公演のライヴで、1973年ロンドンのレインボウ・シアターでの録音です。当時のLPは一枚ものの六曲入りというサイズだったんですが、95年にジャケットデザインを変えた増補版CDが出て未発表だった八曲が追加されています。
当然ながらクラプトンの調子は万全とは言えませんが、それを補って余りある聞きどころがあります。なんといってもそのメンバーの豪華さで、タウンジェンドのほかにロン・ウッド、スティーヴ・ウィンウッド、ジム・キャパルディらがバックを務めます。リック・グレッチとリバップもいますから、フーとフェイセズのギタープレイヤーとトラフィックが合体したものと言っていいでしょう。冒頭のMCでは「Eric Clapton and the Palpitations」というバンド名で紹介されます。

しかしクラプトンは半病人状態とはいうものの、まあ元がなにしろクラプトンですから、キレは無くともそれでもたいしたものです。左右に従えたギターがもし凄腕だったら食われていたでしょうけども、タウンジェンドとウッドなんでちょうどいい具合です(笑)。ウィンウッドが歌う「Presence of the Lord」はブラインド・フェイスの再現ですね。
ひと言でいうとクラプトンのプレイを目あてに聞くライヴ盤ではないですが、その後の復活劇を思えばやはり重要な地点であり、完全版となったCDはその貴重なドキュメントです。やはり持つべきものは友だちです。


Frank Zappa FZ/OZ 2002

ザパの死後に親族が次々と発売している未発表音源アルバムの、わりと初めのものです。後回しになっていてなかなか聞こうということにならなかったんですが、最近ようやく着手しました(笑)。
内容は1976年のツアーのシドニーでの録音で、ワンステージほぼ丸ごとらしいです。特筆すべきはメンバーの構成で、ザパを含めわずか五人という小規模編成です。マザーズのごく初期を除いて、五人だけでのライヴというのはこの時だけではないでしょうか。それで、この編成のままオーストラリアから日本に移動してくるわけですね。つまり伝説の唯一の日本公演がどんなものだったのか、これを聞いて想像できるというわけで、わが国のザパファンには特に感慨深いものです。

しかし、やはり演奏はいいとはいえ五人だけのアンサンブルではちょっと物足りない感じがします。すでにこの時代は練達のミュージシャンを多数雇って鉄壁のビッグバンド演奏を聞かせていたわけですからね。もちろん、生前に発売する予定の無かったものですからオーヴァーダビングもされていない、素のままのライヴ音源です。
小人数になったのはおそらく予算の関係だと思われます。ザパとしても、ここでひとつ最低限の人数で欧米以外の地域を回るとその収支はいかなるものかという実験を試みたのかもしれません。ただしメンバーはさすがに精鋭で、ドラムズにテリー・ボッジオ、サックス/ヴォーカルにナポレオン・マーフィ・ブロック、そしてなんとベースにオリジナル・マザーズのロイ・エストラーダ。

以前ちょっと知り合った人と偶然にザパの話になったんですが、なんとその人東京公演に行ったらしいんですねー羨ましいです。エストラーダてどんなでしたかと聞いたところ、その人「いやーロイ・エストラーダがクレイジーでさ~」と一言(笑)。見たかったです。この人にもらった八木康夫による浅草国際劇場のパンフレットが私の密かな自慢で。


Boys Can Be Mean 2012

いわゆるガールグループス/ガールズポップのチャーリーによるコンピレイションです。二枚組61曲入りというボリュームで、新品が1200円くらいで安かったんで買ってみました。有名無名いろいろ入っていて、黒人アーティストが過半数を占めているように思えます。「のように思える」というのも、一発屋や覆面シンガーも多くて黒人なのか白人なのか調べてもわからないのがいるんですよ。でもシャングリラズやシェリー・フェブレーもちゃんと入ってます。

ガールズものというと、なんといってもエースの「Early Girls」シリーズです。レノンがカヴァーした「Angel Baby」のオリジナルを聞こうと思ってこのシリーズのヴォリューム1を聞いたんですが、目あての曲のみならずほかの曲のあまりの素晴らしさに夢中になってしまい、続けざまに第五集まで聞き込みました。もうどれも最高で、枕元のmp3プレイヤーに全部入れて寝るとき毎晩シャッフルで聞き続けましたから、おそらく私にとってこれまでで最もヘヴィーローテイション度の高いCDです。

今度聞いた「Boys Can Be Mean」は黒人シンガーズが多めのため、全体の印象としてはわりとリズム&ブルーズのサウンドです。当時のヒットパレードは黒人白人いずれのアーティストも人気があったわけですから、コンピレイションになると混成になるのは当然です。でもそのサウンドのカラーはだいぶ違ってくるので、私としては統一感のある選曲のほうがありがたいんですけどね。
やはりこのジャンル、ひたすら無邪気な白人ポップスのほうに分があります。黒人シンガーでもそっちのサウンドにシフトしたものもありますから、そんなのばかり集めるとイノセントでドリーミーなめくるめくガールズポップワールドになるでしょうけども。

タイトルの「Boys Can Be Mean」はシュガー&スパイセズというグループの1964年の曲で、これがロックンロールで抜群なんですよ。ところがグループのことを調べても写真どころか情報がまったく出てこなくて、完全に一発屋みたいです。プロデューサーがセッションシンガーを起用してでっち上げたシングルというのもよくある話ですから、その手合いかもしれません。






160807


【先月買ったレコード・CD】

五つの赤い風船 おまけレコード 1971
五つの赤い風船 '71 五つの赤い風船リサイタル 1979

ちょっと珍しい盤がオークションに出ていたんで買ってみました。URCの7インチシングルで、A面は西岡たかしの自宅にメンバーが集まっての雑談を録音したものです(笑)。途中で新曲「ボクは広野に一人居る」のラフなリハーサルも聞くことができます。てっきりアメリカ録音のアルバム「ボクは広野に一人居る」に入っていた曲間の「おしゃべり」と同じものだと思っていたら、その一年くらい前のミーティングの模様でした。B面は「殺してしまおう」のライヴです。
このレコード、どうもその正体が謎なんですね。いくつかの資料を探ってもはっきりしたことはわからないんですが、どうやら二枚別々に発売されたアルバム第五集をURCに直接注文すると付いてきたボーナスティスクのようです。ひょっとするとパート1・2の二枚とも購入した特典かもしれません。
もう一枚、SMSが1979年に発売した未発表音源シリーズのひとつもオークションで見つけました。このLPはCD化されていないようです。

Sue's Rock'n'Blues: The UK Sue Label Story Volume 2 2004
The Soul of Sue: The UK Sue Label Story Volume 3 2004
The UK Sue Story! Vol. 4 2006

スー・レコーズはアメリカの黒人音楽レーベルで、アイク&ティナ・ターナーなど有名どころもいますがマイナーレーベルですね。そのイギリスでの販売部門はアイランド・レコーズの中に設けられ、ガイ・スティーヴンズという人物が運営を任されます。とはいえ米スーの子会社だとかイギリス支店だというわけでもなく、米スー以外のアーティストもワンショット契約のような形でわりと自由にいろいろ出すことができたようです。
実はこのガイ・スティーヴンズ、後にモット・ザ・フープルやクラッシュのプロデューサーとして知られるようになるその人なんですね。ヒット曲を聞き分ける耳を持ったプロデューサーであり、またおそらく完全に黒人音楽マニアで、顔つきを見てもヴィンセント・スキャヴェッリに似ていてクレイジーな感じです(笑)。そうして60年代イギリスの若いもんにウケるリズム&ブルーズを次々と発売していきます。
もともと「I Feel Fine」の元ネタだというボビー・パーカーの「Watch Your Step」を聞きたくてこれの入っているオムニバスCDを探しました。それで「The UK Sue Story: The World of Guy Stevens」を聞いてみたら、他の曲もイカしててえらく気に入りました。いかにも当時のモッズたちが好んだであろうヒップでダンサブルなナンバーばかりです。ローリング・ストーンズがカヴァーした「That's How Strong My Love Is」、フーがカヴァーした「Daddy Rolling Stone」も入ってます。レノンももちろん、みんなスティーブンズが紹介したレコードを聴いていたに違いありません。
その「UK Sue Story」、英Aceから第四集まで出てました。かねてからアマゾンのマーケットプレイスをチェックしてたんですが、相次いで千円くらいに値が下がったので一網打尽です。





【先月買ったレコード・CD】

Kinks Muswell Hillbillies 1971 Deluxe Edition

これは2013年のサンクチュアリ盤ですね。それまでの再発CDと違ってボーナストラックが十四曲も入った二枚組です。結局「Lola Versus Powerman」のデラックスエディションはプラケース仕様しか出てないんですかねー。

Jam Sound Affects 1980
Jam The Gift 1982
Jam Snap! 1983
Style Council Shout to the Top 1984
Style Council Our Favourite Shop 1985
Style Council Home & Abroad 1986
Style Council Confessions of a Pop Group 1988

ジャム関係のレコードをいろいろオークションで。五つの赤い風船のを買うときに、同じ出品者から他になにか買うものがないかリストを見ていたら、スタイル・カウンシルの12インチがありました。そういえばジャム~スタイル・カウンシルを買い揃えるつもりしていて中途で止まっていたことを思い出し、この機会にとまだ持っていなかったレコードをイッキに集めました。ベストものの「Snap!」は人気盤のようで相場は三千円くらいしましたけど(7インチ付き)、他のはわりとだぶついていてコンディション良好な日本盤をいずれも千円以下で買うことができました。
ジャムの二枚組ベストものは当初は買うつもりしてなかったんですが、ディスコグラフィを見るとアルバム未収録のシングルがけっこう多いことに気づき、無視できなくなりました。




【先月買ったレコード・CD】

Paul McCartney Tug of War 1982 Deluxe Edition

「Band On the Run」から始まったリマスタープロジェクトはどこまでいくんでしょうか。いわゆるスーパーデラックスエディションですけど、前回あたりから内容がだんだん手抜きになってきてます(笑)。日本盤は意味なくばか高いので輸入盤にしました。アマゾンマーケットプレイスで六千円ならよかろうと。もうひとつの「Pipes of Peace」はもうひと声待って五千円台になってから買うかな。

東京ニュー・ウェイヴ'79 1979

日本のパンクはどうもかっこ悪くて…あまりよく聞いてません。オムニバスでは「東京ロッカーズ」、サントラの「爆裂都市」を持ってるんですが、このアルバムはなんだかえらくマイナーなバンドばかりのような気がして視野から外れていました。とはいえひょっとしたらいいかもしれんなあとも思うようになり、高くなければ買ってみるかとオークションに出るのを待っていたら来ました。競りにならずに送料込み2300円で落札です。こうなると「Great Punk Hits」をどうするかだなあ(笑)。

戸川純 玉姫様 1984

はいみゆきさん800円でした(笑)。

加山雄三のすべて~ザ・ランチャーズとともに 1966
加山雄三 恋は紅いバラ~加山雄三アルバム 1966

加山雄三にはまったく関心が無く、若大将シリーズも一本も見たことがありません。したがってこの名前を聞いて思い浮かべるのは「海」「太陽」「エレキ」みたいなパブリックイメージでしかありません(笑)。しかしレコードコレクターズの「日本ロック&ポップス・アルバム名鑑」を見るとこの二枚、つまりグループサウンズ勃興前夜の66年1月のファーストとその翌月に出た(!)セカンドを採りあげてあるんですね(ちなみにスパイダーズのファーストが出るのはこの年の4月です)。解説によるとロックンロール解釈のレベルが高く、作曲センスは先鋭的でギターも聞きどころとのこと。そう聞けば、オークションで350円で出ていれば入札しないわけにはいかないでしょう?(結局670円と1000円で落札)



160731

【今月聞いたレコード・CD】

Flamin' Groovies Studio '68 1984

初期のスタジオライヴ音源で半オフィシャルブートレッグみたいなものでしょうか。音は悪いですが演奏にはガッツがあります。フレイミン・グルーヴィーズにはこの手の正体不明の編集盤がけっこういっぱいあるんですが、ぜんぜん売れないバンドだったため単発の契約も多かったみたいです。でもそれら一切合切を含めてのフレイミン・グルーヴィーズです。好きです。

Pretty Things Silk Torpedo 1974

プリティ・シングズは当初はあまり熱心に聞いていたわけではなく、有名な「S.F.ソロウ」やベストものくらいしか持ってませんでした。しかし近年復活の動きが見られ、新作や初来日などもあったりと、ブリティッシュロックの重鎮としての地位を得ているような雰囲気を感知して「やっぱちゃんと聞いとこうかな?」と心を入れ替えました。そうやってファーストから聞いてみると、ビートバンドとして聞き応えのあるサウンドを次々と確認することができ、すっかりお気に入りバンドのひとつとなってしまいました。
それで順番に聞いて行ってるわけですけど今回は1974年のスワン・ソング盤です。サウンドは完全に70年代ロックにシフトしてブリティッシュハードロック。でもあまり売れなかったみたいですね。悪くはないですよ。

Mitch Ryder and The Detroit Wheels Greatest Hits 1972

「Nuggets」にも入ってなかったバンドで音を聞いたことないんで、どんなもんかと。演奏は意外と熱いです。シンガーのミッチ・ライダーはけっこうソウルフルなんですけどあくの強い歌声で、どっちかというと暑苦しいタイプです(笑)。

かぐや姫 はじめまして 1972

五年前の私なら興味を示さなかったであろうグループですね。レコードコレクターズの増刊「日本ロック&ポップス・アルバム名鑑」では意外と何枚も採りあげてあったので、それならとこの再デビュー盤をまず。聞いてみるとなるほどなかなかいい感じで、一枚五百円くらいで買ったあとの三枚もちょっと楽しみです。

佐藤公彦 午後のふれあい 1972

エレックから出たファーストです。ケメの愛称で知られる佐藤公彦、名前は知っていてもやはり聞こうとまでは…(笑)。しかしエレックのシングルコレクションCD「喜怒哀楽」を聞いてみたところ、「通りゃんせ」が気に入ったのでアルバムを聞いてみることにしました。当時はアイドル的な人気もあったようで、それもわかる感じはしますが音楽はなかなか意欲的です。詞も瑞々しさがあっていいですね。ただいかんせん歌ヘタすぎ。

Jimi Hendrix Experience Winterland 2011

1968年のサンフランシスコ・ウィンターランド公演を三日間丸ごと収めた四枚組CD。最近のロックコンサートと違ってセットリストは毎日ガンガン変わってます。演奏はもちろん68年のエクスペリエンスですから悪いはずもありません。このウィンターランド公演はヘンドリクスの死後に二枚組LPで発売されたのがオリジナルですが、録音が抜群に良かったので有名だったんですね。

柳田ヒロ Hiro Yanagida 1971

なぜか「七才の老人天国」というタイトルでも知られるアルバムで、LPはばか高いんでCDで買いました。フードブレインやファーストソロ「ミルク・タイム」も有名で、まあー実力のあるミュージシャンには違いないんですけどね。アルバム聞いてエキサイティングかどうかといえば、エキサイティングとまでは言えないってとこですね(笑)。CDでOKでした。

フラワー・トラヴェリン・バンド Anywhere 1970

内田裕也作品としてとらえると、このひとつ前のフラワーズ「チャレンジ!」はなんだかダサさかげんがかえって微笑ましかったりしたわけですが。この1970年のアルバムからはなんといってもジョー山中が入りますから、次元が一つ違って聞こえます。とはいえ、まだまだ。

あきれたぼういず ぼういず伝説 1993

テイチクが1995年に出した「再発見・ニッポンの音/芸」という中村とうよう監修の十枚シリーズがあって、いずれも文字通り雑多な芸能のサンプルが多岐にわたって盛り込まれており非常に興味深いものでした。その中の「歌になった浪曲」に有名な「地球の上に朝が来る」(の替え歌)が入ってました。おかしいんですよこれ。また森の石松の浪花節をギターコミックソングに仕立てた「あきれた石松」もあってもう抱腹絶倒です。こりゃもっと聞いてみにゃあと1993年にビクターが出したこの編集盤を直後に入手。今では廃れてしまった音楽コメディものの面白さを「再発見」しました。とにかく徹頭徹尾ナンセンスなんですねーやはりラジオの時代ならではです。

Hikaru Smile 2016

ハンズマンに時々行くとBGMでちょっと気になる曲がかかってました。歌詞からハンズマンのCMソングなのはわかりましたから同社のウェブサイトで調べてみたら、宮崎の高校生シンガーソングライターだそうです。mp3がダウンロードできると思ったら、ちゃっかりCD販売してました(笑)。サンプルも三十秒くらいしか聞けないのでしかたなくレジ横にあったシングルを500円で購入。そのデビュー曲「光の場所」はなかなか聞かせるものがあり、すっかり気に入ってしまいました。
しばらくしてまた店に行ったら新曲がかかっていたのでさっそくこれも買って帰って聞いたわけですが、今度の「Smile」はよりドラマチックな展開の曲になってました。この子はとても才能がありますねーこのまま続けるとしたら将来が楽しみです。

The Art of McCartney 2014

ビートルズ~ウィングズ~ソロとその全キャリアからの名曲を豪華なメンバーが歌ったトリビュートアルバムです。おそらく全てのトラックがこの企画のための録音で、また特徴としてほぼ原曲のままのアレンジで演奏されています。バッキングはほとんどの曲で現在のマッカートニーバンドが務めているので、シンガーだけ本人とすり替わったコンサートを聴いているような感じです。
イモなのも若干含まれていますが、何曲かはもうドンピシャのハマり具合で「この人のこれを聞きたかったんだよ!」と言いたくなるのがあります。例えばスモーキー・ロビンソンの「So Bad」、いいでしょう? ポール・ロジャーズの「Let Me Roll It」、いいですね! ダーリーン・ラヴの「All My Loving」、バッチリです! ブライアン・ウィルソンの「Wanderlust」、よくぞこの曲を! また数少ない原曲と違うアレンジのものでは、ロニー・スペクターの「P.S. I Love You」。敬意を表しフィル・スペクター・サウンドに仕立ててあってこれが抜群です。
私としては、ウィリー・デヴィルの歌う「Call Me Back Again」やジョージ・マイケルの「Get Back」なんてのを聞きたかったですねー。

Bruce Springsteen The Wild, the Innocent and the E Street Schuffle 1973

スプリングスティーンは長年好きになれずに、何枚か聞いただけでそれっきりになっていました。初めに聞いた「Born to Run」も、なんだかファットできらびやかなサウンドとくぐもったような歌声がどうも気に入らなかったんですね。
ちょっと前にニール・ヤング主催の難病支援コンサートのライヴコンピレーション盤を聞いたんですが、これにスプリングスティーンの弾き語りの「Born in the USA」が入ってました。これが実にいい感じで、オリジナルヴァージョンのバンドサウンドよりずっと聞きごたえがあるんですね。それでちょっと待てよ…となって、もう一度初めから聞き直してみることにしました。
そうすると、実に久しぶりで聞いたファーストがなかなかいいことに今さらながらに気づくわけですね。その「Greetings from Asbury Park NJ」は英米では非常に高い評価を得ているアルバムで、これはやはり歌詞がわかるかどうかも大いに関係していることだろうと思いますが、それを差し引いたとしてもかなりハイレベルな音楽性のデビュー盤でした。
今回セカンドの「The Wild, the Inncent」は初めて聞きました。ライヴでのハイライトのひとつだった「Rosalita」が入ってますね。結局この時期のスプリングスティーンのサウンドは、二十代の私にとってはロックンロールなのかシンガーソングライターなのかどうもとらえどころが無いままよくわからないということになっていたようです。
今聞くと、ニューヨークの隣町という独特の環境もあるんでしょうが非常に雑多な音楽性のミクスチュアになっていて、アメリカ音楽の懐の深さを改めて感じます。このへんイギリスのロックとはぜんぜん違うんですよね。「Kitty's Back」という曲を聴いているとなにか聞き覚えのあるフレーズが出てくるのでちょっと調べたら、このスプリングスティーンの曲を元にしてシン・リジィのフィル・ライノットが「The Boys Are Back in Town」を書いたそうです。














160701


音楽の話題もなにか書こうってんで考えたんですが、聞いてみて良かったものの感想を書くのもなんだか大変な気がするので、ここはひとつインスタントに「今月買ったLP・CD」を列挙して終了、という手を思いつきました(笑)。私は買ったレコードはしばらく棚で熟成させてから聞くので、これらを実際に耳にすることになるのは数年後のことです。

Prince HitnRun Phase Two 2015
死亡の報にはビックリ仰天しました。まあー稀代のアーティスト、まぎれもない大天才ですが、かなり変な人でしたねしかし。自宅の金庫にはアルバム百枚分のマスターテープが保管されていたとのことですから、フランク・ザパみたいにこれからも続々と新作が出てくるんでしょう。

Bonzo Dog Doo-Dah Band Pour L'amour Des Chiens 2007
これ新作らしいですよ? ヴィヴィアン・スタンシャルは亡くなってますけど他はオリジナルメンバー揃ってますね。アマゾンのマーケットプレイスで安く出たので買いましたが、初回盤かどうか届くまで不安でしたけどもちゃんとDVD付いてました(笑)。

Rutles Live + Raw 2014
ラトルズのもあります。

Ringo Starr Postcards from Paradise 2015
10月に来日が決まり、そのため買った…というわけではありません。ロックファンからはばかにされ続けているリンゴ・スターですが、単に懐メロツアーで回っているだけではなくスタジオ録音新作もコンスタントに出し続けていて感心します。それぞれけっして悪い出来ではないところもちょっと嬉しいです。

Jimi Hendrix in the West 2011
もとは1972年のライヴコンピレーションで、死後に出たアルバムの中ではヘンドリクス好きからも高い評価を得ているもののひとつです。それがエクスペリエンス・ヘンドリクスからリマスター盤が出ていたことをついぞ知らず、今ごろになって購入の運びとなりました。しかしこれ、肝心の数トラックが別音源というか本来の音源というか、まあいろいろ事情があって差し替えられてます。その結果ヘンドリクスファンからは「オリジナル盤とは別もの」という烙印を押されてしまっているそうな。



ジャケット写真は五枚しか一度に表示されないんですね。ならふたつに分けます。

Todd Rundgren Box o'Todd 2016
Utopia Live at the Fox 1973 2015
最近はすっかり影が薄くなったという感のあるラングレンですね。リンゴ・スターのメンバーとしてもこの秋やってきます。またひと花咲かせてほしいものですが、出てくるのはアーカイヴ音源ばかり。いちおう全部ゲットしますけどね(笑)。

渡辺真知子 いのちのゆくえ 2015
三枚組のベストもので、今回の売り文句は「初めての本人選曲」らしいです。ただの編集ものだったら無視すればいいんですが新録音が二曲入っている以上しかたありません。この人もう長いことオリジナルアルバム出してなくてベストや企画もの・再録音ばかりなんですけどね、すでに市場性もさほど無いでしょうからしかたないですけど、自作曲のフルアルバム新作を聞いてみたいですね。

頭脳警察 仮面劇のヒーローを告訴しろ 1973
これはLPです。私は頭脳警察はあまり好きではなく、セカンドをだいぶ前に聞いたきりでした。パンタのヴォーカルがどうも気に入らなくて、気持ちばかり先走ってテクニックがぜんぜん伴ってないというところが一枚聞いてもういいやって感じになってたんですね。私はこの十年ほど日本のロックやフォークに改めて取り組んでいて、聞かず嫌いをやめてちゃんと聞いてみるとこれがなかなかいいレコードがたくさんありました。わかったのは「日本のはロックはダメだがフォークはいいぞ」ってことです。そういった流れで、頭脳警察のセカンドをついこの前三十年ぶりくらいで聞き直してみたら、意外やいいんですね。パンタのヘタさも許せる耳に成長した証しでしょうか(笑)。そうなると他のも聞いてみないではおれませんから、ここ数カ月オークションで探して「3」「誕生」「悪たれ小僧」と入手、残る一枚も今月買うことができました。オリジナルLPの相場も意外と高くなくて、一枚二千円くらいで買えます。




















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